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20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

IT革命がうたわれた2000年に中学時代を過ごし、それからの20年をエンジニアリング、マーケティングに関わりながら過ごしたという、株式会社テレビ東京コミュニケーションズ 明坂真太郎さん。
開発会社、SEO会社、求人メディアを経て、現在はいまだ絶大な影響力を誇るテレビ業界で働く。

本連載に登場する中では比較的若い世代だが、その圧倒的な経験値と物事を客観的に評価する姿勢には驚かされる。そんな明坂さんが、現職のテレビ局に入った背景には、自分の原体験が影響していた。
明坂(あけさか)さんのキャリア変遷、仕事感についてうかがった。

Webが一般に普及してすでに20年以上が経つが、未だにWeb業界のキャリアモデル、組織的な人材育成方式は確立していない。
組織の枠を越えてロールモデルを発見し、人材育成の方式を学べたら、という思いから本連載の企画がスタートした。連載では、Web業界で働くさまざまな人にスポットをあて、そのキャリアや組織の人材育成について話を聞いていく。

アバター課金という「錬金術」に気づいた高校時代

林: インターネットに触れたきっかけから、お話をうかがえますか。

明坂:小学5年生のときにWindows95が発売されて、母親がパソコンを買い、インターネットに接続したのを見たのが最初です。
主体的に使い始めたのは、中学生になってドリームキャストでインターネットに接続してからですね。テレホーダイの時間に接続して、大学生など自分よりも年上の人たちとチャットするのがおもしろくて夢中になりました。その頃、2ちゃんねるも始まって、インターネットのおもしろさと同時に怖さも知ることになりました。

中学2年からVisual Basicを始めて、プログラミングの初歩を学び、将来はプログラマーになりたいと思っていました。

森田: その時のプログラマーのイメージはどういうものでしたか。

明坂: システムを作る仕事ですね。小学生の頃から、戦略ゲームが得意だったのですが、アルゴリズム、ロジックなどを考えるのが好きだったんです。

本格的にプログラミングに取り組んだのは、コンピューターの専攻がある高等専門学校に入ってからです。そこでは、C言語、Javaなどを勉強しました。PHPなどのWeb系はやっていなかったので、そこを主戦場にしようと思ってはいませんでした。ですが、ハンゲームのコミュニティサイトを見て、Webの可能性を感じました。

きっかけは友達がアバターに月に5千円くらい課金していたことです。現実にあるモノではなく、イラストレーターが描いたデータに対してお金を払うのを見て、錬金術だと思いました。データでも付加価値をのせることで、人がお金を払うんだなと。

林:すごいっ。高校生時点ですでにメタ視点を備えていたんですね。

明坂:人の行動の理由を考えるのが好きなんです。アバターの服1枚がビジネスになってお金を生むことに興味がありました。

森田: 僕はハンゲームで何の疑問も持たずにアバターを買っていましたね(笑)。高専卒業後は就職したのですか。

明坂:卒業後は大学か、専門学校に進学するという選択肢がありましたが、社会人や大学生の知り合いから「実務経験を積むほうがいい」と言われたこともあって、専門学校に2年行き、早く就職する道を選びました。
卒業後は、社員数40人ほどの開発会社にプログラマーとして入社しました。小さい会社なので、新卒1年目でテスター、プログラム開発、テスト仕様書作成、内部設計、外部設計など一通り担当しました。いろいろな案件に関わりました。

2年目で主任になって最終的に十数人のプロジェクトのリーダーになり、リクルートの情報メディアのWebサイトや、クレジットカード会員向けの明細を表示するWebサービスのリプレイスを担当しました。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

株式会社テレビ東京コミュニケーションズ クロスメディアビジネス部 マネージャー 明坂真太郎氏

リクルートの案件でSEOと出会う

林: 新卒1~2年目、仕事は楽しかったですか?

明坂:楽しかったですね。特に、自分や友達も使う可能性があるコンシューマー向けのサービスはやりがいがありました。
会社にはさまざまな案件があったので、自分の可能性をつぶさないように幅広い経験・スキルを身に着けつつ、自分の興味のある案件に寄せていくことができました。

森田: そのペースでプロジェクトリーダーになり、大きな案件を任されたところをみると、会社に住むくらいの勢いで相当働いたのでは?

明坂: そのとおりですね。人の倍働いて、人の倍の経験をしたいと思っていたので、それでいいと思っていました。早く社会に出て経験を積むことで今後働く幅が広がり、可能性のあるポジションが増えると思って、あえてハードモードを選んだのです。

林: ハードモードの仕事経験の中で、どんな学びがありましたか。

明坂: リクルートのメディアを担当したとき、スポンサーの情報をWebサイトに載せるだけで、週に数万円の掲載料が得られるというところに、これも別の錬金術だなと思いました。
紙媒体等ならモノがあるのでコストがかかりますが、Webはデータを打ち込めばすぐに表示される、それに数万円の価値があるというところが、社会人1−2年目にとっては衝撃で、これからITがさらに伸びるだろうなと感じました。

森田: プラットフォームとして情報を集めて、みんながそこに探しに来るから価値が生まれるということですね。

明坂:そうですね。それからリクルートは2007年時点ですでにSEOが要件定義に入っていて、URLの正規化、タイトル、ディスクリプション、タグ設定などが決まっていたことも大きな学びでした。これがSEOの最初の接点となりました。

その後2008年のリーマン・ショック以降、会社に仕事がぱったりと入らなくなりまして、2009年に退職して、SEOのコンサルティング会社のウィルゲートにエンジニアとして入りました。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

林 真理子 氏(聞き手)

会社が急成長を遂げる中、エンジニアリングの限界も感じる

林: SEOを選んだのは、リクルートの案件での経験があったからですか?

明坂:そうですね。SEO業界は2011年にはSEOを集客の強みとしたメディア運営をして、上場する企業も出るなどSEOバブルの時代でもありました。
それから、不況になると二次請け、三次請けの会社は潰れるという教訓を得たので、SIer、ソフトハウスよりも、メディア運営などに興味をもちました。また最初の会社は大阪だったので、東京のほうが仕事があると思って移住しました。

ウィルゲートはメディアを運営してSEOで集客を伸ばしており、企業アセットの強みを出していました。集客のアルゴリズムを理解すれば、スタートアップでも大手企業に並べるということにチャンスを感じました。

私が入社した時は社員20人中3人がエンジニアという規模でしたが、3年半後に退職するときには、30人弱のエンジニアが部下になっていました。すごいスピードで成長する会社を経験し、メディアの立ち上げ、プロダクトづくりも担当しました。

こうした経験の中で、エンジニアリングというのは“手段”だなと気づきました。ビジネスには顧客ニーズを踏まえた戦略的な考えが必要です。エンジニアリングだけでは、サービスに与えられるインパクトが限られますが、マーケティングの影響力に気づき、後半はマーケティングの部署もみるようになりました。

トップクラスのマーケティングを学べる場としてリクルートへ

林: エンジニアリングは学生時代からの学習の積み重ねがありましたが、マーケティングなどの新しい領域の専門知識はどんなふうに習得していったのですか。

明坂:SEOならメディアや有名人のブログ、カンファレンスなどがありますが、マーケティングは顧客ニーズが変化、多様化することもあり、勉強手段があまりなく、教科書で学べる幅が狭いと思っています。
次の転職先はリクルートジョブズになりますが、実践で経験値を積めるところでマーケティングをやろうと思って選びました。SEOをやるにしてもトラフィックが多いほうがいいですし、リクルートなら広告を出すのにも予算の桁が違いますからレバレッジも大きいと考えたのです。

森田: リクルートは引き抜かれて入ったのですか?

明坂: いえ、普通に採用サイトから自分で応募しました。2012年にリクルートが分社化したタイミングだったので、今なら入れるなと。
内定をもらったのはリクルートジョブズとリクルート住まいカンパニーです。ジョブズのポジションはプロモーション全体を手がけられたので、自分が経験したいことにフィットしました。

中でも「タウンワーク」は求人業界で最もトラフィックがあるサイトなので、そこでしか見えない景色があるだろうと。
2番手以降だとどうしてもトップに追いつけ追い越せが目標になりますが、トップに立つと、3年後5年後もそこに居続けるためにどうするかが命題となります。SEOの世界では、今後Googleが何を考えていくのかを予想して、中長期的に次の施策を考えていくことになります。

森田: その時は何人くらいのチームで施策を実行していたのですか?

明坂:人材系の主要5メディアを15人ほどで、SEO、マス広告、アライアンス、リスティング広告、アフィリエイトなど、プロモーションに関わる仕事は全部担当していました。
業務量は多かったですが、効率の良い組織だったので、まわせていました。

林: それにしても、引き続きハードモードですね。会社を出ても、昼夜や平日と休日、仕事のオン・オフの切り替えをあまり気にせず過ごすほうですか。

明坂: ノートパソコンがあればどこからでも仕事ができる環境ではあり、プライベートと仕事の境目はそんなにありません。ただ、ずっと楽器をやっているので、週に1−2回スタジオで演奏します。

林:忙しくとも、趣味の時間も持っているのですね。

明坂:リクルートは、それが普通で生命力の強い人が多かったですね(笑)。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

森田 雄 氏(聞き手)

人は何のために働くのか? 原体験に立ち返りテレビ業界へ

森田: テレビ東京コミュニケーションズに転職したのはいつでしょうか? 転職のきっかけを教えていただけますか。

明坂:2017年ですね。ここも引き抜きではなく、採用サイトから応募しました。5年間リクルートで集客を担当して、トップクラスの経験を積めたという自負がありますが、一方で学ぶことへの限界も感じました。
求人業界は、これからも需要はあると思いますが、30歳を越えたタイミングで自分がこれからどうしていくかを立ち止まって考えたのです。これまでは、スキルと給料を上げることを目指していましたが、達成できた時点で、どう生きていくのかを見直したのです。

結論として、人材業界以外、具体的には教育系かメディア系でマーケティングの高みを目指したいということになりました。社内転籍できるので、他の部署からも声をかけてもらったのですが、社外にも可能性があると考えました。

林: 教育系、メディア系を志した理由は?

明坂:人がなぜ働くかを考えたとき、一つの理由として「他人を幸せにしたいから」だと感じました。それで、何が人を幸せにするのか……自分の人生を振り返ってみると「教育」「コンテンツ」だと思いました。

教育は、親が「自分への教育」に惜しみなく投資してくれたことが大きく関係しています。
また、ゲームアニメ映画、バラエティが好きで、辛いときもそれらに救われた経験がありました。そういう「コンテンツ」を作って他人に届けられれば、それが他人への貢献だと考え、最終的にテレビ局を選びました。

林: 転職活動っていうと、これまでの職歴を直接的に活かせる同業界・同職種を盲目的に選んでしまうこともあるかなと思いますが、そうではなく、仕事の意義を一から考え直して、自分の原体験に立ち返ってみた。
それは、明坂さんにとって自然な思考の流れだったのですか。

明坂: 自然でした。リクルートは、就職、結婚、住まいなど、自分にとって人生で大事な領域を仕事にするという価値観で働いている人が多いことも影響したと思います。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

番組のマネタイズ方法を考えるのもマーケティングの仕事

森田: 求人業界からテレビ業界に来て、プロモーション、マーケティングの考えで違いを感じますか?

明坂:自分のこれまでのマーケティング経験は、会社の貴重な戦力になっていると思います。
今はプロモーション、マーケティングを3名で担当しており、そのチームリーダーとして動いていますが、もとからおもしろいコンテンツを作り続けているテレビ局は、マーケティングの展開がいろいろできるので、入社以来いろいろなチャレンジをしています。

「テレビは終わった」といった表現をされることがありますが、地上波の強さはデジタルとは比べ物になりません。
人気YouTuberが100万再生といっても視聴率でいえば2%以下です。どちらが強いといった話ではなく、互いに補完することが望ましいです。ですから、番組のプロモーションにしてもデジタルを組み合わせる必要性は、現場でも理解されています。

森田: デジタルマーケティングの最終成果としては、やはり視聴率になるのですか。

明坂:視聴率はスポンサー獲得に影響しますが、それはメディアのマネタイズの一つに過ぎません。
月額課金の 配信サービスやTVerの広告枠などもありますし、物品開発・販売、イベントなどさまざまな課金方法があります。『ゴッドタン』のイベントでは、横浜アリーナの1万席が完売するなど、盛り上がりを見せています。

どうマネタイズするか戦略を考えて実行することが自分たちの仕事です。

森田: 明坂さんは、若いときに人一倍働いてスキルを身に着けたといいますが、今はそういう働き方ができなくなっています。自分も明坂さんのような働き方をしてきたからか、人の成長のスピードが自分の肌感覚と違ってきて、1年で十分と思ったら3年かかるようなこともあるのですが、チームの成長スピードに課題を感じることはありませんか。

明坂:正解がわからない中で、自分だけの考えで動いて、先人がやった失敗と同じ失敗をするのは効率が悪いですよね。
自分の流派、イズムが確立している人と一緒に働くと早く成長できるので効率よく見聞きして、自分の中で原理原則をみつければいいのかなと思います。会社は、いろいろな人の経験をシェアしてそれぞれの原理原則を浸透させられるので、効率よく成長できる場所だと思います。

林: テレビ業界は忙しいと聞きますが、ワークライフバランスを重視する傾向はあるのでしょうか。

明坂:最近はワークライフバランスを求めている人が多いです。ただ、責任を全うする、やるべきことは絶対にやるという人が多いです。
エンタメ業界は、コンテンツ作りが好きだから、楽しみながら働いている人が多いですね。画家が三日三晩没頭して作品を仕上げるようなものでしょうか。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

エンジニア×マーケター×クリエイターという3つの軸

林: 今後こういうキャリアを歩んでいきたいといったイメージは、何かおもちですか。

明坂:エンジニアでマーケターという人材は希少です。
この掛け合わせが私のアイデンティティであり、市場価値を高めていると思いますが、これからはおもしろいコンテンツを作ることに注力したいです。広告運用はAIができるようになりますが、シナリオライター、コンテンツクリエイターは人間でなければできません。

集客を増やすなど、数字を改善する喜びは限界があるので、今後は自分にしかできないものをアウトプットしていくことを目指していきたいです。きれいにいえば、テクノロジー、マーケティング、クリエイティブの3軸を活かして働きたいです。

また、新しいサービス、事業の立ち上げにも興味があります。今、MBAの大学院に通っていて3月に修了予定ですが、経営もわかるようになりたいと思っています。今は、掛け算を増やしていく段階ですね。

テレビ離れが言われていますが、Twitterでもテレビの話題は多いですし、これからもテレビはメディア業界の中の「銀座の一等地」みたいなものだと思います。ただ、変わっていくことは求められるので、その中で新しいチャレンジをしていきたいです。

二人の帰り道

林:取材の冒頭、「自分は、黎明期からリアルタイムにネットに触れてきた世代の一番若手」に位置するのではないかと話を切りだした明坂さん。まさしく!でした。ネットを介して中学時代から大学生のお知り合いがいたそうで、高専時代に進学先を選ぶときも、オフ会などで知り合ったフラットな関係の社会人や大学生から意見を聞いて参考にしていますよね。
年齢・世代を超えて自分のコミュニケーションする世界を自在に広げられるネットの魅力を存分に活かして、若いうちから自分の活動範囲や人間関係を築き、社会に出てきた最初の世代なのだと感じました。今身をおくテレビ業界、転職当初はデジタルをどう取り入れていくかに向かい風もあったんだろうなぁと想像するのですが、魅力的なコンテンツを生み出す人たちへの敬意をもって、番組づくりの現場に出向き、いろいろな人の動きをみて声をかけて、企画アイデアを出して…という明坂さんの丁寧な仕事の積み重ねで、周囲の人たちの信頼を勝ち取って今があるんだろうことが、話の節々からうかがえました。こんなふうに現場に立って確かな変革を築いていく人が、今の時代には一番必要なんだろうなぁって思いました。頼もしいかぎりです。

森田:すごいんですよね、明坂さんの熱量が。トップからこそ見える景色を求めて、分野を変えて転職していくのが本当に力強くて、うらやましささえ感じてしまいました。アイデンティティの要素をかけ算していくという話は、この連載でもよく出てくる概念なわけですが、その係数がとても強い。
とある分野の経験を単純にかけているだけじゃないんですよね。そもそもそのかける要素が、トップから見える景色の中で培われた経験であると。そしてそこに、ハードモードで自分を鍛えていくというスピード感がさらにかけ合わさっていく感じですね。小並感ですが、すごいなあと思いながら、うんうんと話を伺う取材になりました。僕も社会人スタートから今に至るまで、相当ハードモードに過ごしてきた自負はあるんですが、職種というか分野といいますか、そこは大きく変えてなくて、ずっとWeb制作の受託界隈にいるんです。
明坂さんのように、かけ算するたびに領域ごと巨大化していく感じはないものの、仕事との向き合い方としては同種族だなと思ったこともあり、僕としては経験がどういうふうにかけ合わさって強みになっているのか、自分を捉え直してみようかなと思った帰り道なのでありました。

20代は「自分のために」人の倍働くハードモード。30代は「人を幸せにする」仕事に転職

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