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マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

マネックス証券のロボットアドバイザーなど、個人投資家を支援するツールを開発しているマネックス・ラボ。そのラボ長を務めるのが、現在、32歳の斎藤 翔太 氏だ。新卒で就職した証券会社を1年で辞めて、勃興するソーシャルゲーム業界へ転職。3社目となるマネックス証券ではチームを率いるラボ長として活躍する斎藤氏にお話をうかがった。

Webが一般に普及してすでに20年以上が経つが、未だにWeb業界のキャリアモデル、組織的な人材育成方式は確立していない。組織の枠を越えてロールモデルを発見し、人材育成の方式を学べたら、という思いから本連載の企画がスタートした。連載では、Web業界で働くさまざまな人にスポットをあて、そのキャリアや組織の人材育成について話を聞いていく。

森田雄 & 林真理子「Web系キャリア探訪」とは?

新卒で入社した証券会社を1年で退職

林: 今32歳とのこと。最初にWebに触れたのは、いつ頃ですか?

斎藤: 中学生のとき、市が無料で使えるパソコンスペースを提供していたので、そこでWebサイトなどを見て遊んだのが最初です。その後、家庭でもパソコンを買いネットにつながるようになったので、Yahoo!ジオシティーズ※1で日記を書くなどしていました。

高校生になるとガラケーが普及して、簡易ウェブサイト作成ツールの「魔法のiらんど※2」、「前略プロフィール※3」を使い、大学時代には、mixi、Twitter、Facebookなどを使うようになりました。

※1 ※3 現在はサービス終了
※2 ホームページやブログ機能は現在サービス終了

林: 高校、大学時代は、今の仕事につながるような専攻なり活動をしていたのですか?

斎藤: 大学は商学部ですのでITとは遠いところにいました。ゼミで金融のおもしろさを知り、就職活動はそのまま金融系を中心に回っていました。

森田: ネット系の金融も探しましたか?

斎藤: すでに存在はしていましたが、新卒で入るのは難しかったですし、IT業界で働くという姿も想像できませんでした。新卒で入社したのは証券会社で、対面で個人の顧客に金融商品を販売する営業をしていました。しかし入社してすぐに自分の性格と会社の文化が合わないと気づきました。会社の方針で、推す商品が決まっているので、自分がそれぞれのお客さんにとって良いと思う銘柄を薦められないことなどがストレスでした。もっと調べてから入社すればよかったのですが、辞めるなら早いほうがよいと思って1年ちょっとで退職しました。

森田: 新卒1年目で辞めるというのは、2010年くらいだと思い切った決断ですよね。次はどういうところにいったのですか?

斎藤: ガラケーの月額会員向けサイトやカーナビなどを開発している企業です。最初はナビサービスの企画営業として入社しました。Webサービスは、対面販売が中心の証券会社と真逆で、ユーザーが自分の意志でボタンを押す、押さないを決められるので、ユーザー中心で考えてサービスを作ることができ、こちらのアプローチのほうが向いているなと思いました。会社の働き方としても、証券会社ではメールをほとんど使わなかったのですが、そこでは逆に電話を使わずパソコンでコミュニケーションしており、振れ幅が大きい転職経験でした。

マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

マネックス証券 マネックス・ラボ 斎藤 翔太 氏

ソーシャルゲーム黎明期にプランナーを経験

森田: 転職した時期から見るとガラケーからスマホへの転換期ですよね?

斎藤: はい、2011年くらいからソーシャルゲームに力を入れるようになりました。経験者がいないので、若い人にアサインしようということになって、私が営業からソーシャルゲームのプランナーに異動になりました。最初は、既存のゲームのサポート、機能改善などを通して、開発工程を学びながら、最終的には自分で機能追加、イベントなどを企画できるようになりました。

林: 新しい分野への挑戦ですが、学べる先輩が周囲にいたのでしょうか?

斎藤: 社内に基本的なノウハウはあったので、開発の流れなどは先輩に教わりながらやっていきました。ワイヤーフレームの組み方、デザイナーへの指示のやり方などはノウハウがありました。ただソーシャルゲームで、どの機能をどう改修すべきかについては、試行錯誤しながらやっていました。

森田: ソーシャルゲーム黎明期に関われたのは貴重な体験でしたね。

斎藤: そうですね、売上が期ごとに何十%単位で上がるのはおもしろい体験でした。売ろうとしなくても、ユーザーが利用し、お金を支払ってくださるというのは、証券会社時代とは異なる不思議な感覚でした。

林: 教科書がない中で、社外からノウハウを得るような活動もしていましたか?

斎藤: ソーシャルゲームはもちろん、ゲームに限らず世の中に出ている他のサービスは、「なぜこういう仕組みになっているのか」、「なぜこの機能が追加されたのか」を、自分で仮説を立てて考えることをしていました。社外のセミナーに参加して、この機能追加でこういう効果があった、というような話を聴くのも良いインプットになりましたし、社内外問わず他のゲームやサービスの事例などを参考にしていました。

林: 社内の情報交換は、自然発生的なものですか? 活性させるために仕組み化していたりもしたのでしょうか?

斎藤: 施策とKPIを共有する場などもありましたし、当時使っていた社内SNSで情報交換することもありました。

林: 当時は、どんなチーム構成で動いていたのですか?

斎藤: 企画2−3人、デザイナー1人、エンジニア5−6人くらいのチーム構成ですね。最初はWebアプリとして開発していたので、すぐにサイト構成を変えることができて、素早くPDCAを回せました。しかし、5年くらいするとネイティブアプリが主流になり、小さいチームで動くよりも、今週はこのチーム、来週はこのチームというように、組織的なラインで動くようになって、気軽にテストして中身を改善するようなことが難しくなりました。

森田: それで次の転職を決意されたのですか?

斎藤: そうですね、WebサービスでBtoCのサービスを提供しているという観点で、おもしろいサービスを展開している会社を探しました。このときは、転職エージェントやWantedlyを使って転職活動を行って、最終的にマネックス証券に決めました。

マネックス証券のチャレンジングな事業に惹かれて転職

マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

森田雄(聞き手)

森田: マネックス証券を選んだのは、証券会社の経験を活かせるからでしょうか?

斎藤: 証券会社の経験を活かせるという考えはなく、Web系のサービスを展開している会社を探していたらマネックス証券が候補にあり、Web系のプランナー、ディレクターを募集していたので興味を持ちました。

マネックス・ラボは、先進的な目線でいろいろなことにチャレンジしていて、Webサービスを通じて個人投資家の投資を促すというのがおもしろいところです。対面の証券会社のアプローチとは異なり、定量的なアドバイスをWebから得て、最終的に投資家自身が投資判断をできるといった具合です。

林: マネックス・ラボでは、ロボットアドバイザー以外にも「MONEX VISION」、「俺の投資力診断」などいろいろなツールが公開されていて、初心者もとっかかりやすい、興味ある人が一歩踏みこんでみる後押しをしてくれている感じがします。

斎藤: 個人投資の初心者が証券口座を開設したり、数ある金融商品から自分で投資する商品を選択したりするのはハードルが高いです。マネックス・ラボでは、この課題を解決することをミッションとしてツールを開発しています。

ただ、ロボットアドバイザーやツールに完全に任せるというよりも、「自分はこういう投資がしたい」という思いが投資家の皆さんの根底にあるだろうと考えていて、その想いをサポートするツールでありたいと思っています。MONEX VISIONも、どのような投資をしたいのかをよく考えて、自分にとって最適な配分比率を見つけるために使ってもらうのがいいと思います。

入社したときは、ロボットアドバイザーやツールのアドバイス通りに購入して頂ければいいというサービスだとイメージしていたのですが、それだけではうまくいかないこともあります。MONEX VISIONでは資産構成をもとに分散投資をアドバイスしますが、日本株だけを持ちたいお客様に、分散投資を勧めてもなかなか響きません。いろいろなお客様がいることを前提に、「どういう人に使ってもらうか」を考えています。特に投資初心者の方は、最初の購入を踏み出すこと自体が難しいので、これらのツールを使いながら学べるようにしています。

森田: 対面の販売と違って、ネット証券の場合は、お客さん自身がツールを使いながら投資の知識や経験を積み上げていくわけですから、そういった日々のUXを支援する必要がありますよね。

ラボだからできる最新技術を使ったチャレンジ

マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

林真理子(聞き手)

林: マネックス・ラボの現在の体制は?

斎藤: 私がラボ長で、企画、ディレクターが4人、デザイナーが2人、エンジニアが20人弱のチームです。サービスが4つくらいあるので、それぞれ担当者がいて、機能改修、UI改善などを起案し、私が横断的にとりまとめています。

林: ラボ長としてメンバーを育成するような立場にあると思いますが、メンバーとの関わりにおいて気をつけていることはありますか?

斎藤: 他社のサービスで「こんな新機能があったから入れたい」という提案に対しては、「なぜそれが必要なのか」を根掘り葉掘り聞いています。「他がやっているから」という理由なら、「なぜ他社はやっているのか、どれくらい効果が出るのか」を意識的に突っ込んで、説明してもらうようにしています。

森田: ラボならではの仕事のおもしろさは、どこにありますか?

斎藤: 新しい技術を使って投資を促進する施策を考えるのは楽しいですね。Alexaを使って音声で資産の残高などを確認できるサービスを2019年にリリースしましたが、これもスマートスピーカーという新しい技術を使って何ができるか、ということからスタートしました。

基幹システムでは実装できないような機能を、モックアップを作ってカジュアルにリリースして、評価して改善できるのがラボのおもしろいところです。時代が求めるようになったときに、ラボで作っていたツールをさっとシステムに組み込めるように準備しているのです。

ラボのサービスは、今までWebからでないと利用できませんでしたが、マネックス証券アプリに、ラボサービスのアドバイスや分析を提供する機能を組み込みました。個人投資家の裾野を広げていくきっかけづくりに注力して続けられるのが、おもしろさの根源ですね。

林: 専門的で複雑、技術進化も速いフィールドで先進的なサービス開発に取り組まれていると思うのですが、最新技術情報などは、どうやって得ているのですか?

斎藤: 今は、Webでさまざまな情報が得られます。Slideshare、Facebook、Twitterで流れてくる情報からも、UI、UX、プロジェクトマネジメントの知識が得られます。そうした情報を噛み砕いて、「マネックス・ラボではどう適用できるのか」、「応用できるか」を考えています。参考になる情報はSlackでチームに共有したり、デザイナー向けなら本人に伝えたり、知識の共有は意識しています。

業界のキーマンやメディアが主な情報ソースですが、社内の投資部門の情報感度が高いので、フィンテック関連の情報は社内での情報交換が有効です。

森田: フィンテックまわりのサービスは、ある程度自分でお金を投資して試さないと体験できないこともありますよね。

斎藤:そうですね、自分でお金を出すからこそわかる気持ち、というのはあると思います。社内では、ユーザーアンケートで定性的に調査したり、定量的にはアクションのログを見て使われ方を検証したりしています。

新型コロナ時代の新しいマネージャーの役割を模索中

林: 斎藤さんは若くしてプレイヤーの第一線からマネージャーの立場にうつったと思いますが、プレイヤーとして働きたいという思いはありませんか?

斎藤: 最初は人が少なくて、両方ともやっていました。今は採用ができているので、マネジメントが中心になりましたが、今でもメンバーのフォローとして自分でワイヤーフレームを作ってデザイナーに指示することもあります。マネジメントとプレイヤーのバランスを取るように心がけています。

しかし、新型コロナウイルスの影響でリモートワークになり、マネジメントでは手探りが続いて、「そもそもマネジメントとは何か」という問いに突き当たっています。メンバーの働き方を、時間で評価するのはあまり意味がないと思うので、何をすれば生産性が上がるのか、今マネージャーとして求められるプレイはそこを考えることにあると思います。

今までは、新規プロジェクトのスタート段階で、口頭、ホワイトボードを使って目的などを伝えていましたが、オンラインミーティングに変わって、メンバーのプロジェクトに対する理解度が見えにくいところが課題です。また、対面であればメンバーの仕事のプロセスが直接見えるので、たとえばワイヤーフレームが意図していたものと違ったら、すぐに修正依頼ができていました。しかし、リモートワークでは、そういった仕事の進め方ができません。そうなると、もっと細かく指示出しをする必要があるのかもしれません。

今は、まだこれまでのマネジメントの貯金で回っていた部分がありますが、新しい人が増えたとき、新規プロジェクトが始まるときには少し心配ですね。

林: これからのキャリアのイメージは、何かありますか?

斎藤: リモートワークに繋がりますが、今まで細かくマネジメントしてきたタイプではないので、このタイミングをきっかけに、ルールや仕様を明文化、具体化していく必要があります。同時にチームビルディングをどうするかを考えています。これまでは「会ってコミュニケーションしないと仕事はできない」と思っていましたが、会わずにできるようになればおもしろいですし、世の中に先駆けて取り組んでいきたいです。

森田: それができれば、ものづくりの新しいワークフローとしてモデルになりそうですね。

斎藤: 新しいワークフローを作るいい機会ですね。方法論が溜まってきているので、効率的にできる方法を編み出していきたいです。

マネックス・ラボを率いる若手マネージャー。テレワーク時代の新しいマネージャーの役割を模索中

本取材はオンラインで行われた

二人の帰り道

林: それぞれのお客さんに合ったものを個別最適で提供したいという斎藤さんの思いを形にする上で、インターネットというフィールドは非常に相性がよかったのだろうなぁと、キャリアの変遷を伺いながら思いました。また斎藤さんは、さまざまなところにアンテナを張って情報を取り入れるに留まらず、それを「どう咀嚼して、どう自分の領域で応用できるか考えて試行する」ところまでが日常のサイクルとしてまわっているので、日々の仕事こそがすごく創造的に展開していっているのだろうと思います。若くしてラボ長をお務めになっていますが、これからの新しいマネジメントスタイル、ワークフローや働き方についても、他業種もプロトタイプとして参照できるような、より合理的で本質的なあり方を創り出していってくれそうで期待が高まります。何より、プレイヤーの仕事もマネージャーの仕事も分け隔てなく、おもしろいと思って取り組む姿が、たいへん頼もしく感じられました。

森田: 斎藤さんとは以前仕事で付き合いがあったのですが、勝手に思っていた年齢よりもお若くてびっくりしました。試行して取り組んだ結果をきちんと積み上げていく堅実なスタイルという印象でしたが、実際にこうして伺ったキャリアの変遷を鑑みると、まさしく当てはまる感じで思わずにんまりしてしまいました。真摯にマネジメントの役割と向き合いながらも柔軟にプレイヤーでもあるという働き方には共感がもてます。今のご時世的に、一気に新しいマネジメントの仕方を模索しなければいけなくなりましたが、これを契機に次のステージへご自身とチームを引き上げていかれることでしょう。今後の斎藤さんからも目が離せないなと思いました。

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