音楽x身体表現x映像の凄まじいシンクロで世界を魅了するパフォーマンス集団SIRO-Aインタビュー!世界で成功するまでの軌跡をコアメンバーが語る!

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音楽x身体表現x映像の凄まじいシンクロで世界を魅了するパフォーマンス集団SIRO-Aインタビュー!世界で成功するまでの軌跡をコアメンバーが語る!

音楽x身体表現x映像の凄まじいシンクロで世界を魅了するパフォーマンス集団SIRO-Aインタビュー!世界で成功するまでの軌跡をコアメンバーが語る!
(左から)佐藤良介(映像作家)|cocoona(演出家)|則兼大地(映像作家)

SIRO-Aネーミングは、“何色にも属さない、何者とも特定できない”という意味。世界各地で450公演、10万人以上のオーディエンスを熱狂させた日本発のパフォーマンス集団。2002年仙台で結成し2011年には、スコットランドの世界最大の演劇祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」にて1ヶ月の公演を行い、“Spirit of the Fringe2011”を受賞する。2012年にはヨーロッパツアーを敢行し、2013年は155日間に及ぶロンドン公演を成功させる。以降、北米を始め世界中で公演を行う。2014年には117公演に及ぶロンドンロングラン公演を行い、London Cabaret Award のBest Circus/Speciality Act部門を受賞する。メンバーは他に、岩井宏之(サウンドプログラマー)、本間健太郎(DVJ)と表現者、YOHEI、荒井寿也、阿部俊紀、DAIKI、川島啓介、YU-KI、FUMIYAの合計12名が在籍する。SIRO-AのYouTubeオフィシャルチャンネルはこちら

日本はもとより海外を股にかけ、テクノサウンドに乗せた身体表現と映像の凄まじいシンクロ率のパフォーマンスで人々を魅了するSIRO-A。white-screen.jpでは8月22日に新作公演「RED OR BLUE」を控えたSIRO-Aに迫る!! SIRO-Aとは一体どんなパフォーマンス集団なのか?仙台で結成の後、海外を活動の場としたいきさつとは?演出家のcocoona氏と、映像を担当し自らステージでもパフォーマンスをする佐藤良介氏と則兼大地氏の3名を直撃する!

TEDでプレゼンテーションをしたSIRO-Aのパフォーマンス。

――8月22日には恵比寿 The Garden Hallで新作「RED OR BLUE」の公演が控えていますが、SIRO-Aとは一言でいうとどんなパフォーマンス集団なのでしょうか?

cocoona: テクノサウンド、映像、身体表現が合わさった舞台を作っている集団です。2015年で結成13年目になるんですが、SIRO-Aの歴史を振り返るとすごくスタイルが変容してきているんです。今のスタイル、オーディオビジュアルにシンクロしたダンスやパントマイムといったエンターテイメントに定着したのは2009年頃なんです。SIRO-Aの歴史は大きく4シーズンに分けられまして、まさに恵比寿の舞台から、新章であるシーズン4に突入するところなんです。

■SIRO-Aの歴史 SEASON 1:無邪気に攻めまくった仙台時代!

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演出を担当するCocoona氏。

――SIRO-Aの歴史は、高校時代に演劇部でcocoonaさんと佐藤さんが出会ったところに始まると聞いています。

佐藤:そう、僕たち同級生で演劇部だったんですよ。

cocoona:高校を卒業したのが1998年で、2002年〜2008年がSIRO-Aのシーズン1にあたります。その頃は当然、これで食ってく!とか、世界で有名になる!とか考えてもなかったin仙台。

佐藤:高校卒業してからも、劇団メンバーは、お笑いとか演劇とかそれぞれ好き勝手やっていて、特に仲の良かった男6人で、演劇という枠を超えて「もっと面白いことやろうぜ」って始まったんです。

cocoona:今振り返っても面白い時代でした。ただものすごくエッジな表現をしたかった。コントもやるし、ポエトリー・リーディングもやってたし。佐藤はヌード写真集出したりとか。

――攻めてますね。

cocoona:みんなそれぞれ仕事を持ちつつ、月謝と呼ばれる活動費を各自5、6万円ずつ収めていたんです。そのお金で、お正月のCM枠を買って、地元企業に混じって「本年もSIRO-Aをよろしくお願いいたします」ってテレビCMを流したり。

――仙台でそれを観ていた人は、突然白塗り集団が登場して、のどにおもちをつまらせそうですね。

cocoona:しかも全く有名じゃない。アバンギャルドで変なことをひたすらやっていた。そのうち、ラジオ番組やテレビのレギュラー番組を持ったり、地元で少しずつ認知度が高まってきた時に、今の事務所、アミューズ主催の劇団のコンペティションに東北代表として出場することになったんです。結果は準優勝。その後アミューズと契約し、SIRO-Aのシーズン2が始まるんです。

■SIRO-Aの歴史 SEASON 2:仙台から世界へ。上海万博で掴んだ世界への切符。

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映像制作を担当する佐藤良介氏。

――プロとしてやっていこうって決心した大きな理由は?

佐藤:それぞれ違うと思うんですけど、アミューズとの契約が個人的には大きかったです。それまでは正直先が見えなかった。ひたすら楽しかったけど、収入はなかったですし。SIRO-Aで楽しくやっているってことで麻痺していて。将来を全く考えていないドリーマー (笑) 。みんな20歳前後で考えるようなことを僕は28の時に、人生のヘビーなことに初めて向き合った。

cocoona:これがまた面白いんですよ。アミューズと契約して言われたことが、「痩せてください」。僕たちぶっくぶくでしたから(笑)。大好きなラーメンのおかげで、太った面白いドリーマーだったんです(笑)。さらに活動内容において「ポエムとかヌードとか雑多なものいったん置いといて、“ここ”を強化しましょう」っていう区画整理が入ったんですよ。僕たちが大好きだった、お客さんに“うまい棒”を撒くパフォーマンスも封印された。そこで初めて、プロとは何か?ファンやお客さんに届くものとは?ということを考え始めたんです。ようやくお客さんとの対話を意識し始めた。

それまでは自己満でもお客さんはついて来てくれてたし、そういうところが“カッコイイとか、オルタナティブなアーティストだ!”っていう意識だったんですね。そこから、エンターテイメントとしてみなさんに楽しんでもらえるようにと、徐々に考えも変わっていった時期でした。

――まさにプロとしての旅立ちのシーズン2ですね。区画整理で残された“ここ”とは?

cocoona:“映像を使ったアクトをメインにして、そこを研磨して勝負していく”ことです。そこから、映像とダンスとテクノサウンドの融合をコンセプトにしたパッケージを作り、2010年に上海万博で上演したところ、すごくウケたんです。

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「覗き見シアター」

SIRO-A初期のパフォーマンスの代表作。公園に木造小屋を建てたこのテント公演は、5つの窓(=1度に鑑賞出来るお客さんは5名のみ)から、室内のダンスパフォーマンスを覗き見する。当時珍しかった液晶プロジェクタを活動費月謝で購入し、プロジェクションマッピングの先駆け的表現をしていた。朝9時から夜7時まで2分間の演目を1日400ステージ行うという、体力的に、熱に弱いプロジェクタにとっても過酷な作品となったが、村上隆がプロデュースする「GEISAI#7」(2005年)で銅賞を受賞。夏祭りには毎年多くのオファーがきたそうだ。

cocoona:その頃メンバーは6人で、ステージ上で5人がパフォーマンスをしていました。スクリーンを背負って映像とシンクロしたダンスや、人力プロジェクションマッピングで、ノンバーバルな内容です。日本でもプロジェクションマッピングっていう言葉がちょうど出始めくらいだったので、中国で万博に来る人たちはみんな驚いていましたね。

それがキッカケで、翌年の2011年に世界最大の芸術祭である「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」で勝負するという目標が出来ました。パフォーマンスも1時間のロングパッケージに増強し、1ヶ月に渡る公演の場を獲得したんです。テクノ、未来といった、世の中の人が想像する“テクノロジー”をテーマにしたショーを作りました。ダフト・パンクや、映画「トロン」のエンタメバージョンをイメージしたスタイル。LEDのスーツを着て踊ったり、レーザーも多用しました。そうやって挑んだ初日のお客さんは、ナント4人(笑)!

佐藤:僕ら全然、無名なのでね・・・。それから日に日に伸びていき、始めてから1週間経った頃には満席に。ある夜、マスコミが多く来る日があって、その翌日からはレビューを読んだお客さんがワッと押し寄せるようになったんです。

cocoona:満席を“フルハウス”って言うこととか、そのとき初めて知ったよね(笑)。最終的には“Spirit of the Fringe 2011賞”もいただいて。サクセスストーリーじゃないですけど、そこまでいけたのは自信になったし、貴重な体験になりました。受賞をきっかけに、翌年からヨーロッパツアーやアメリカツアー、ロンドンのロングラン公演がバタバタと決まり始めて、6人じゃ回らなくなって来たんですね。これは2チーム作らないと回らない!ということでシーズン3が始まりました。

■SIRO-Aの歴史 SEASON 3:新メンバー参加!高次元でミックスアップし進化する!

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則兼大地氏は2013年に加入した新メンバーで映像を担当する。

則兼: 2013年の9月に、オーディションで6人を新規採用した時に、僕も加入しました。

cocoona:メンバーを増やし、2つの舞台を国内と国外で平行して回せるようになりました。メンバーが増えたもう1つの利点は、SIRO-Aは、新ネタ&新作が命なので、更新スピードをもっと上げて新作をバンバン作るというクリエーションの効率化、平行化が出来たことでした。オーディションで採用した人材も、それが可能になるポジションニングを考えたものにしました。

則兼:ダンサーだけじゃなくて、歌える人とか映像が出来る僕のような人も入ったんですね。

――オーディションでそれぞれが持つ才能とは別で重視するポイントってありますか?

cocoona:実は能力よりも人間性、キャラクター性を1番に考えます。

佐藤:キャラクターといってもステージ上での強い個性ではなくて、制作過程も上手くやっていけそうな人ということです。

cocoona:モノ作りもそうですし、ツアーに出ると3ヶ月間は海外で共同生活となるので、協調性は必要。一方で、僕らにない発想を求めているので、個性もあるかどうかがキーでした。

――則兼さんがオーディションを受けたきっかけは?

則兼:オーディション雑誌で募集を見たんですが、僕はもともと舞台でダンスをやっていて、ちょうど映像制作も始めていた時期だったんです。“ダンスが出来る人、映像が作れる人”っていう募集要項、“これ僕のことだ”って、もうもう、受かることを前提に熱意溢れる履歴書をしたためて。

佐藤:履歴書の写真も則兼のは普通と違ってた。証明写真が、ダンスのガチな写真が貼られていた(笑)。

――では、SIRO-Aでは踊りながら映像制作をなさっているんですか?

則兼:映像制作がメインですけどダンスもやらせてもらえるので、結果的に自分の力をちゃんと使えてるなって思います。自分の肌にも合ってるし、やりたいことも出来ている。

cocoona:オリジナルのメンバーは見てきたものも一緒だし、チームワークとして足並みは揃うんですけど、新スタッフはそれぞれ畑が違う。ニコ動職人、新体操日本一、元映画会社勤務とか個性豊かな人たちです。僕たちのモノ作りや発想法、“SIRO-Aイズム”と新しい血がブレンドされて、より高い技術で表現出来るようになりましたね。

則兼:SIRO-Aに入ってすごくいいなって思ったことは、オリジナルメンバーと僕らが、先輩後輩って関係じゃないところ。言いたいことが誰でも言えるっていう雰囲気なんです。

cocoona:そこは僕たちの1番強いカラーです。多国籍的な強さ。一部の人の感性で方向付けるんじゃなくて、各々違う畑と経験値が、高いレベルで混ざり合って作るものが最強だっていう考え方なんです。チーム内で多種多様なコラボレーションをしてミックスアップしていく。そこにトップダウンは一切なく、ワンピースの“麦わら海賊団”みたいに横並び。同じ目標を持って12人全員が二人三脚の12人バージョン(笑)をやっていくのが理想。新体操をやってきたメンバーがAfter Effectsの知識を得る。CGという発想を取り入れて振付をする。完全オンリーワンなものが出来ますよね。Adobe Illustratorや音楽の知識を組み込んだパントマイムは、SIRO-Aオリジナル。そういう作品作りが特徴なんです。

■SIRO-Aの作り方

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「RED OR BLUE」練習風景。

――シーズン4に入る前に、アイデアを決めていく時、どういう過程を経ているのか教えてください。

cocoona:まず、アイデアありきです。アイデア出しはA4用紙に簡単な絵コンテを全員がそれぞれ書きまくって、ひたすら出し合うんです。1枚1アイデア。その中からよさそうなモノを選んで曲を先行して作ります。

佐藤:音楽でムードを決めてしまうんですね。

cocoona:“デモ作り”って呼んでるフェーズです。それに、iPhoneで撮影したテスト映像を編集のタイムラインに乗っけて、インスタントにいっぱい作るんです。時には30バージョンにも登ります。そのデモに段々と起承転結がついていった段階で、“清書”と呼ばれる本番用の映像制作に入るんですね。この段階から舞台に上げられる状況になります。それで終わりじゃないのが面白いところ。実際に公演をしてみて、そのフィードバックを反映していくんです。同じパフォーマンスでも、国によってお客さんの反応は違うから、その国のトレンドとか取り入れて軌道修正したり、色を変えたり、各現場での調整とブラッシュアップが最終段階となります。

佐藤:そういう意味では100%完成した演目っていうのはないんですね。

――練習はどれくらいしているんですか?

cocoona:1公演に対して2、3ヶ月掛けます。SIRO-Aは、制作と稽古が平行で進んでいきます。振付やって踊って、練習して映像と合わせて、微調整して磨き上げていきます。

――リアルタイムのインタラクティブってあるんですか?

佐藤:サンプリングのパフォーマンスはあります。お客さんに質問をして、その声を即興で音楽にするとか、お客さんの写真を撮ってそれが映像になって踊っているように見せるとか。

cocoona:センサーを使ったリアルタイムはやっていません。人力で、稽古で合わせているんです。

■SIRO-Aの歴史 SEASON 4:テクノロジーからの脱却とこれから

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「RED OR BLUE」

――いよいよ新作公演「RED OR BLUE」が目前ですね。

cocoona:これまで完全にテクノロジーがテーマとなった表現をしてきました。未来をカッコよく描いた表現をやってきて、今、気持ちが変わってきています。それで2014年の終わりから、来年どうするの?SIRO-Aとはなんぞや?というのを、3、4ヶ月掛けて話し合ってきました。理由として、プロジェクションマッピングが手法として世の中にすごく広まって、僕たちと似たことをやる人たちもたくさん増えて、アジアの方では僕たちのパフォーマンスを完コピしている方もいたんです。そんな状況で、このままだと行き着くところはテクノロジーの追いかけっこで、プロジェクションマッピングの次、何?ドローンを使う?画質を4Kにしてみる?ってなっていく。それってSIRO-Aのアイデンティティなの?って疑問が出てきたんですね。

じゃ、SIRO-Aは、何をやりたい?って考えた時、土臭いんですけど、感動だったり、一生懸命練習した鍛錬の成果を見せたいとか、人間の想像力や知恵を見せたいんですよね。人間そのものを魅せたいんですね。テクノロジー、スゴいよね!っていう感動よりも、お客さんのハートの真ん中にドスンと届く感動を届けたい。 もちろん、今後もテクノロジーは使っていきますが、それに加えて見終わった後に、やっぱ“人間すげえや”って思える表現をやりたいねってことになったんです。8月22日の「RED OR BLUE」は、もっと生っぽいものになります。そしてシーズン4がはじまるわけです。

――具体的には「RED OR BLUE」で、どんなこれまでのSIRO-Aと違った側面がみられるのでしょう?

cocoona:コンセプトは“アナログとデジタル”、“人間と機械”というコントラストを描いています。インターネットで、“テクノロジー”でイメージ検索をすると、青一色になります。テクノロジーのイメージカラーなんです。

佐藤:一方、“ヒューマン”で検索すると、人間の血管とかが出て来る。公演名は「RED OR BLUE」しかないと思ったんです。これから2020年くらい先の、未来の人類の課題のひとつに“人間orデジタル”ってあると思うんですね。それがコンセプトになった、人間とデジタルがすごく交錯したステージになっています。思いっきりデジタルなパフォーマンスがあれば、一切コンピュータの力を使わない人力パフォーマンスもある。

cocoona: D.I.Y.で針金を使ったクラフト感のあるテクノロジーが新たに加わっています。ショー全体を赤と青でくるんで、最後は問いかけが残るようなパッケージングになっています。 観てくれたお客さんの中で、何か芽生えがあればいいなって。“噛みごたえ”のある表現を目指したショーをお見せ出来ると思います!

写真:永友啓美

To Creator編集部
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