“共有できる映像体験”にこだわる、株式会社ピクスのエンジニア/テクニカルディレクターにインタビュー ~02:P.I.C.S. TECHチームが創り出す新時代の映像コンテンツとは? 前編~

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“共有できる映像体験”にこだわる、株式会社ピクスのエンジニア/テクニカルディレクターにインタビュー ~02:P.I.C.S. TECHチームが創り出す新時代の映像コンテンツとは? 前編~

“共有できる映像体験”にこだわる、株式会社ピクスのエンジニア/テクニカルディレクターにインタビュー ~02:P.I.C.S TECHチームが創り出す新時代の映像コンテンツとは? 前編~

「独創性と革新性」をモットーに、数々の映画やCM、ミュージックビデオ、映画などを手がけ、近年は3Dプロジェクションマッピングや屋外広告映像、ライブやイベント映像などへも映像表現の場を広げる株式会社ピクス。今回To Creatorでは株式会社ピクスを大特集!同社のクリエイティブを生み出す原動力、今後のビジョンなどたっぷりお話を伺います。

第2弾はピクスの中でもプロジェクションマッピングを始めとした体験・空間設計に特化したチーム、P.I.C.S. TECHでエンジニア/テクニカルディレクターを務める、上野陸氏にインタビュー。28歳と同チーム内で若手ながらプロジェクトでは中心となる事もあるという。従来の形式に捉われないP.I.C.S. TECHならではの映像体験へのアプローチを、ご自身のキャリアを振り返ってもらいつつ語っていただきました。

美大でプログラミング+映像の可能性に魅せられてピクスへ

僕がいまP.I.C.S. TECHで行なっている仕事、インタラクション性を持たせた映像作りに魅かれたのは、大学時代の経験が大きいですね。もともとはグラフィックそのものの方に興味があって美大に入ったのですが、そこでXbox 360のKinectっていう音声入力と全身のジェスチャーを認識するデバイスと出会いまして。Kinectを使うと人間の骨格、シルエットをセンサーで取りこんで、映像の中にあるものに触らせたり、シルエットにエフェクトをつけることが簡単にできたんですよ。映像となにかを組み合わせて作るインタラクション性の強い映像表現みたいなことにどんどんのめりこんでいった結果、プログラミングの知識もついて。モニターの中じゃなくてもっと大きなフィールドでインタラクティブ性を持ったなにかを表現したいな、と思うようになりました。そこから調べていってピクスという会社を知って、面接を受けたという感じですね。

卒業制作:rhythmos
MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2015 河原敏文賞 受賞

映像体験に特化したチーム、P.I.C.S. TECHとは

今僕が所属しているP.I.C.S. TECHは、P.I.C.S.の中でもちょっと変わった立ち位置のチームだと思います。P.I.C.S.では映像制作を幅広く手掛けていますが、その中でP.I.C.S. TECHはプロジェクションマッピングや、インスタレーションといった、ディスプレイの中だけで終わらない、映像体験をいろいろ作っています。具体的には、VRアトラクションの企画から制作や、ミュージアムや水族館やプラネタリウム等の施設空間で、映像を使った空間演出を行っています。

映像をそのまま表現するというより、映像にインタラクション性を合わせて、“体験”を作ることが、自分の中では一番面白いところですね。自分たちの作った映像をツールとして使って、たとえばプロジェクションマッピングなら一緒に見た人が同じ経験をして、そのことについて話しあってコミュニケーションが発展するみたいな。そういう体験を提供するのが一番のやりがいというか、一番やってて楽しいところです。水族館みたいな教育的な施設だったら、まず僕らが作った映像を入口になにかを感じてもらって、そこから深い知識を掘ってもらえるようになると嬉しいですよね。

上越市立水族博物館「うみがたり」

映像演出と技術をつなぐ、P.I.C.S TECHのエンジニア

P.I.C.S.TECHでの自分はエンジニア/テクニカルディレクターという肩書きなんですけど、映像制作会社にエンジニアがいるというのも、P.I.C.S.TECHの特殊性というか、強みかなと思います。うちはけっこう企画の段階からクライアントと一緒に「どういう映像を作りましょうか?」とアイデアを出しあいながら作り上げていく仕事が多くて、自分(社内)で仕様を考えつつ映像も作れるところが好きですね。ぼく自身ガチガチのエンジニアというわけではないので、プログラムを全部コードで書く……みたいなことはしないんですけど、企画を進めているときに「ここは映像素材に頼った方が効率もクオリティも上がる」とか、「こういう映像を作るならここにインタラクション性のあるものを入れられますよ」みたいな意見が出せるんですよ。ディレクターと映像を作るスタッフとの橋渡しや、できあがる作品に対して分岐点や幅を持たせながら作っていける、そこが上手くいくとめちゃくちゃ自分も楽しいですし、いいものができるなと思いますね。

上野陸氏

なにかを作ってと頼まれてそれを完璧に作っている人ももちろんすごいと思うんですけど、P.I.C.S. TECHに入ってから、こういう作り方にしたらもっとよくなるんじゃないか?みたいな考え方ができると、もっと強いなと思うようになりました。 引き出しが多いというか、例えば自然のことにすごく詳しいとか、プログラムとは直接関係ない別の分野に詳しいとか、他のジャンルでも強みと呼べるものがあると、いろんな場所で活きてくる職場かなと思います。それほど人数が多いチームでもなく、ひとつの案件を進める際に各々がだいたいの全体像を把握したうえで進めていけるので、アイデアも出しやすいですし。ただ、やれることが多いうえに、少し前まではエンジニアがぼくしかいなかったので大変でしたけど(笑)。いまはチームの人数が少しずつ増えていて、小野くんっていうエンジニアがいるのでふたりでプログラムを組んだりみんなで協力して作業を進めたり、一緒に仕事をする(外部の)プログラマーの人たちとも交流しつつ、技術を磨いたりできています。

やりたいことを詰め込んだバンダイナムコアミューズメントとのアクティビティ作り

いままで手がけてきた作品の中で一番アイディアを実現できたと思う仕事は、バンダイナムコアミューズメントさんと作った、VR ZONE SHINJUKU内のアクティビティ、『ナイアガラドロップ』、『トラップクライミング』です。エンターテイメントに思いっきり振り切って作った初めての仕事だったので印象にも残っています。アクティビティとして成立させるために、デジタルの部分とリアルの部分から演出を考えて、体験している人の場所にあわせてエアーやミストを出しつつ、映像でも岩を落としてみたりとか。センシングやマッピング効果などを使って、いろいろとやりたいことを全部詰め込めたかと思います。

その後、バンダイナムコアミューズメントさんとは、池袋のアミューズメント施設「MAZARIA」でも一緒に仕事をさせていただくことになるんですけど、そこでの経験も大きかったかなと思います。体験している人も周りで見ている人も楽しいインタラクション作り、ただゲーム(アクティビティ)を演出するのではなく、世界観を構築して体験する人のプレイ前の心境を作ってあげるみたいなことを考えるのは大変ではあったけど楽しかったです。

デジタルと映像の融合を深掘りし、多くの人が共有できる映像体験を提供したい

リアルとデジタルを融合させる映像表現にはいろいろいいものがあり、たとえばARなんかも面白いですけど、個人的にはみんな一緒に同時体験ができるコンテンツ作りを深掘りしていきたいと思っています。VRもひとりでヘッドマウントディスプレイをかぶっての体験だと、やっぱり寂しいじゃないですか(笑)。誰かと一緒に体験できて、共感してくれる人がいる映像体験を作れるといいですよね。

今やっている仕事は教育系、博物館の説明にインタラクション性を与えるコンテンツを作っています。博物館に来た人に対して、展示物の情報を提供する、という基本的な説明から入って、興味を持ってくれた人に対しては、展示物個々のより詳しい情報を提供する……みたいなイメージですね。教育施設というか、自分の作った映像を介して体験した人が新しい発見を持って帰ってもらえるという仕事にもやりがいを感じるので、こちらも続けてやっていきたいと思っています。

 

上野陸氏

後編では、上野氏が「やりたいことが一番やれた」と語った、VR ZONE SHINJUKU、MAZARIAを手がけたバンダイナムコアミューズメントの小山順一朗氏、髙橋雄二氏との対談をお届けします。是非ご覧ください。

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To Creator編集部
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