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気象予報士に聞く!クリエイティブな仕事 Vol.1 ~天気を早く的確に伝える「天気マーク」のデザインとは?~

気象予報士に聞く!クリエイティブな仕事 第1回:天気を早く的確に伝える「天気マーク」のデザインとは?

天気予報の森朗さん・森田正光さんと聞けば、すぐに顔が思い浮かぶ方が多いと思いますが、お二人が所属する株式会社ウェザーマップをご存知でしょうか。放送局向けの気象サービス提供や気象予報士の派遣などを行う企業です。設立以来、気象予報会社として、多方面にさまざまな気象情報を提供しています。2015年からイマジカデジタルスケープに加わった同社ですが、多くの気象プロフェッショナルが所属しています。「気象予報士に聞く!クリエイティブな仕事」では、そんな気象のプロたちがお天気とクリエイティブの関係についてお伝えしていきます!
普段何気なく見ている天気予報は、皆さんにわかりやすく伝えるために、多くの情報を処理するシステムや的確に伝えるデザイン性といった、たくさんの工夫とアイディアが詰まっています。新たな視点で天気予報を見ていきましょう。

■株式会社ウェザーマップ

HP https://www.weathermap.co.jp/

1992年設立。気象予報及びそれに付随する業務、放送局や講演会への気象予報士派遣、気象データ、気象ニュースの配信を行う。

  • 気象人:過去天気図、気象衛星画像や毎日の暦、過去の事件や天気の出来事をまとめたサイト
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本日の気象予報士

初回をお届けするのは、お天気キャスターだけでなく、各分野で広く活動を行っている気象予報士の長谷部愛(はせべあい)氏。

長谷部愛

Profile

長谷部愛(はせべあい)

大学卒業後、各地のテレビ局・ラジオ局でキャスターや記者、ディレクター業を経験。
2012年に気象予報士の資格を取得した後は、TBSラジオやYahoo!天気・災害動画などメディアを中心に気象情報を伝えている。2018年度からは東京造形大学の特任教授として、天気とアートを主題にした講義を行っている。

Twitter:@hasebeai8

皆さんは天気予報といえば、どんなイメージを思い浮かべますか?
こちらのようなお日様や雲、傘のマークや、気温、降水量などを地域ごとに表示したものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?

天気予報

出典:ウェザーマップ

現在、私たちが目にするような一目でわかる情報提供ができるようになるまでには、実はかなりの歴史があるんです。今日は、天気予報とデザインについて、その始まりと現在、そして未来までをご紹介していきます。

天気予報の歴史は紀元前350年頃から。アリストテレスが本を書きました。

天気は人々の生活に密着したものですから、紀元前から研究の対象でした。農業や漁業に影響するという点で重要だったんです。紀元前350年にアリストテレスが自然哲学について書いた本の中には気象学の記述もあります。

現在、私たちが見ているような天気予報の始まりは1800年後半のイギリスです。
1861年にイギリスのタイムズ紙が、海上の船舶からの気象電報をもとに作成した天気予報が残っています。
(参照元:https://www.metoffice.gov.uk/about-us/who/our-history/the-royal-charter-gale

このように古くから研究されてきた天気予報ですから、その精度は今ではかなり上がっています。気象庁が毎日夕方発表する、翌日に雨が降るかどうかという予報の適中率は、全国平均で83%。11月・12月は85%くらいで、にわか雨や夕立が多い7・8月は80%くらいです。短時間で急に発生する雷雲や竜巻(突風)などは予測しづらいため、梅雨や夏の時期はどうしても少し低めになります。
また、地理的に狭いエリアの予測も難しいため、たとえば「今日の午後、渋谷で雨が降るかどうか?」といった予測もしにくいんです。大きい雨雲が10分後にここに移動するというものは予測しやすいですが、30分後、1時間後となると気象現象の揺らぎが大きくなる可能性があります。同様の理由から、長期予報は気温が「例年より高め・平年並み・低め」といった予報となっています。

日本の夏は台風のシーズンですが、台風予測も進化しています。進路予想については、外れることが少なくなりました。各国で観測データを共有して、それぞれ独自のモデルで予報を出しています。欧・米・日本が予報の先進国で、精度を競い合って進化し続けているんです。
ただし、台風はわからないことがまだまだ多く、勢力についてはどの国も確かな予報を出せていないのが現状です。

天気予報で使うマークはメディアとともに現在も進化中

イギリスの気象庁が出している天気予報

皆さんがよく目にする天気予報で使われているマークは、気象観測の記号がもとになっています。新聞やWEBで天気図をご覧になったことがあると思いますが、あの記号から進化したものです。世界共通で使われるものですから象形文字のような記号で、晴天が「〇」、雨マークが「●」、といった、一般の人には味気ないものです。
今のようなイラストになったのは1970年代頃、イギリスのBBCが雲のイラストマークを取り入れたのが始まりです。当時としては画期的な変化でした。現在のイギリスの気象庁が出している天気予報と比べても、あまり変わりがなく、初めから完成されているデザインと言えるのでないかと思います。

独自のマークを使っている国もあります

エストニアの天気マーク

世界にはさまざまな国がありますが、どの国でも天気予報で使われるマークはシンプルで似通っています。地理的位置は違っても天気というものは基本的には同じような現象だからでしょうか。
ただ、国によっては特徴的なものもあります。エストニアは地理的にはロシア・北欧に近く冬が長いため、雪がしばしば降る国です。そのためか雪のマークが7種類もあるんです。雨のマークは3種類しかないのですが(笑)雪の状態が生活に深く関わっているので多様化しているのではないかと思います。

また、オーストラリアの天気予報には山火事のマークがあります。乾燥地域で自然発生する山火事が多いためです。日本でも冬に乾燥注意報を出しますが、これももし火事が発生したら広がりやすく危険だからなんです。
その他、インドでは砂塵嵐を表すマークがあります。インド北西部には砂丘が多くを占めるタール砂漠があり、特に夏に頻発する砂塵嵐は、南下しながら北インドを中心に深刻な被害を与えます。

オーストラリアとインドの注意報マーク

天気予報のデザインやマークの最近のトレンド

このように、国によって特徴はあるものの、基本的にはシンプルで似通ったデザインの天気マークが、世界中で使われてきました。これまで大きな変化はあまりなかったといってもいいでしょう。天気予報でデザインされたマークが使われるようになったのはTV放送が始まってからで、まだ50年そこそこです。歴史が浅いのと、気象現象そのものに大きな変化がなないため、マークもあまり変化しませんでした。
ただ、ここ数年はWEBメディアでの変化が大きく、特に日本のものはすごく多様化してきています。海外では天気マークはシンプルにして、雨や風は写真やイラスト等のグラフィックで見せることが多いのですが、日本では同じ天気マークでも、顔がついていたり動物をテーマにしていたり、デザインに変化が出てきています。ぱっと見て伝わることを重視しながらも、WEBだと凝ったものでもわかるので、これからもデザイン面では広がりが出てきそうです。

また、WEBでは動きを付けたものも出てきています。データ通信量の関係で昔は表示に時間がかかったり止まったりしたアニメーションも、今では問題なく表示できるようになりました。
目黒区が独自に出している天気予報では、防災マークが動くんです。重要な情報が伝わりやすくなっているので、チェックしてみてください。

ハザードマップポータルサイト

参照元:https://disaportal.gsi.go.jp/

国土交通省が公開するハザードマップポータルサイトではピクトグラム表示でわかりやすくなっています。

注意報や警報は、日本では文字と色の組み合わせで伝達

気象庁による外国16か国向けの天気予報

最近は台風や集中豪雨などが増えて、天気予報でも注意報や警報を見る機会が増えてきました。気象庁が出す注意報や警報は、「大雨注意報」「暴風警報」といった文字と、注意報は黄色、警報は赤の色の組み合わせで表示しています。色が伝えるイメージというのがあり、「赤が危険:黄色が警告:緑が安全」というのは世界中で同じです。これはISO(国際標準化機構)の国際規格で定められた、危険・警告・安全標識についての規定の色でもあるため、気象庁が出す注意報や警報もこの規格を基に色を決めているのかもしれませんね。
日本は識字率が高いため文字情報が伝わりやすいですが、気象庁も外国の16か国向けの天気予報では、注意報・警報もイラストマークで表示しています。
アメリカではマークが使われていますが、これは移民が多く言語が多様なのでマーク化する必要があったのでしょう。

天気予報のユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインという概念が生まれたのはアメリカですが、日本ではその情報が少しずつ入ってきて、天気予報にも少しずつ取り入れられてきたというのが実態です。
例えば、津波の警報の色が色覚異常の方にとっては判別しにくい色になっていたことがわかり、数年前に色が変更されました。

大雨警戒レベルの配色変更

大雨警戒レベルの色分けも、色覚異常の方にとっては4と5の違いが判別しにくいとわかり、これから色が変わる予定です。
他にも、日本ではお馴染みの雨予報を示す傘マークですが、実は日本と韓国くらいしか雨を傘マークで表しません。世界的に雨の日でも傘を差さない文化の方が多いからなんです。また、雪マークを雪だるまで表示する国もほとんど見かけません。多くはエストニアのように雪の結晶を模したものとなっています。
意外と知られていない日本独自の天気マークも国際化に向けて改善が必要なのかもしれません。日本にユニバーサルデザインの概念が入ってきたのが遅めなので、不具合が発覚しだい変更するといった形で徐々に改善していくでしょう。

大学で天気予報とデザインをテーマに教えています

私は、気象予報士として天気を伝える以外に、東京造形大学で、美術・デザインを学ぶ学生を教えています。年間14回の授業で、天気予報とデザイン・環境をテーマした講義で天気予報マークや注意報マークを作る課題を出しています。授業には美大生が楽しめることを重視して、実際に手を動かす時間を設けました。
1コマ100分のうち、前半が講義で後半がデザインの時間です。デザインに取り組んでいるときの学生の熱量には圧倒されます。例年は手書きで仕上げるのですが、今年はリモート授業になったので、PCで仕上げてもらいました。

学生の作品は全て、WEBサイトのデザイナーや、TV局のCGデザイナーに審査してもらっています。学生250人中40~50人にはフィードバックもあり、それが励みになるようです。
一方で審査する側のデザイナーにも学生の斬新な発想は刺激になるらしく、学生の作品がヒントになって新しいCGになったものもあります。
また、優秀賞を受賞した作品は私自身の天気予報ブログで紹介したり、Yahooの動画解説で使ったりと、できるだけ外部に出す機会をつくるようにしています。

東京造形大学の学生作品

Yahooの動画解説

※画像クリックでYahooニュース記事が開きます

その他動画はこちら≫

情報伝達の天気予報から、楽しむ天気予報へ

ネットや動画配信など、天気予報の伝え方も多様化してきていますから、これからの天気予報は、メディアに合わせてもっと変わっていくと思います。天気のマークで遊んだりするような、これまでとは違う『見て楽しい天気予報』みたいなものも出てきそうです。学生の作品を見ていると、従来の天気を知るためのものから、画面の展開を楽しむものへの変化が感じられます。

また、現在は警報や注意報は文字と色の組み合わせでの伝達ですが、これを視覚化してマークで見せるということはやっていくべきだと思います。海外から移住する方や、国際的なイベントで訪日する方も増えますから、漢字文化を持たない人にも一目でわかるようにすることは必要です。
普段の仕事では「天気を伝える」という役割が強くて、企画への参加や提案の機会はなかなかないのですが、ぜひ声を上げる機会を見つけて、これは早急に進めていきたいと考えています!

ウェザーマップ社についてもっと知りたい!

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