地方創生のカギとなる情報発信を支える「クリエイター塾」 合志市×株式会社ロボットから広がるクリエイター育成とは

映像

地方創生のカギとなる情報発信を支える「クリエイター塾」 合志市×株式会社ロボットから広がるクリエイター育成とは

地方創生のカギとなる情報発信を支える「クリエイター塾」 合志市×株式会社ロボットから広がるクリエイター育成とは

ここ数年、東京への一極集中から地方回帰の流れが少しずつ増加していますが、クリエイティブのチカラを活用して地方活性に取り組んでいる自治体があるのをご存じでしょうか。いち早く始めたのが、熊本県合志市。「半農半アニメ」で地方創生を目指すというユニークな改革を推進する合志市 荒木市長の下、映像を通して地元の魅力を全国に発信していく仕組みを作る目的で市民クリエイター育成事業『合志市クリエイター塾』を2015年からスタートしました。21年度で7年目を迎え、今やオンラインで日本全国から参加が可能になり、多くの塾生を輩出しています。これから映像を学びたい、地方を盛り上げたい、自分たちで何かを作ってみたい、もう一度基礎から学びなおしてみたい、そんな方にピッタリな『合志市クリエイター塾』をご紹介します!

合志市クリエイター塾ロゴ

合志市クリエイター塾とは

このクリエイター塾における「クリエイター」の定義は、「自分で発信できる人」。自身が世の中に発信したいことや、広めたい、伝えたいと思う何かを、映像によって自分で発信していくための知恵と技術を学ぶ塾として、大手映像制作会社株式会社ロボットが自治体と共に運営をしています。

合志市クリエイター塾の様子1
合志市クリエイター塾の様子2

このクリエイター塾をきっかけに、合志市では受講生が起業した会社が2社誕生し、毎年フリーランスとして開業する卒業生が生まれるなど地元に新たな経済活動が生まれています。また、卒業生に市や地元企業から映像制作依頼が発生し、新たな仕事の創出にも繋がり、徐々に市民発信による地域活性化が広がっています。

2021年度は授業がオンライン化したことで27都道県から108名が参加。下は中学生から上は60代まで幅広い層の方が参加し、年齢に関係なく表現したいという想いで集まった塾生同士でグループに分かれ映像作品を創りあげました。

毎年少しずつプログラムを刷新し開催していますが、今回は2021年度の授業をご紹介します。

2021年度 クリエイター塾について

概要

基礎編授業 9/4(土)〜 11/27(土)
EXTRA授業 9/3(金)〜 11/27(土)※希望者のみ
参加費 基礎編10,000円(税込)
EXTRA授業(希望者のみ)10,000円(税込)
※ただし合志市民は8,000円(税込)
応募資格 中学生以上

授業プログラム

新型コロナ感染拡大の影響を考慮し、本年度からオンラインでの開催となりました。

LESSON 基礎1 9/4(土)
13:00-15:00
オリエンテーション
『クリエイターとは?』『映像で伝わるとは?』『映像制作の流れ』を考える
LESSON 基礎2 9/4(土)
15:00〜17:00
企画(取材) ワークショップ
『企画を考える為の準備、取材の仕方』を体験する
LESSON 基礎3 9/5(日)
13:00〜15:00
企画・演出
『企画とは?』『演出とは?』を考える
LESSON 基礎4 9/5(日)
15:00〜17:00
企画・演出 ワークショップ
『企画とは?』『演出とは?』を考える
LESSON 基礎5・6 9/23(木)
13:00〜17:00
企画・演出案発表
参加者が考えた企画・演出案をレビューする
LESSON 基礎7・8 10/2(土)
13:00〜17:00
企画演出案の決定
参加者が考えた企画・演出案を1つに絞る
LESSON 基礎(ビデオ講義) ビデオ講義 スマホで撮影編集
スマホだけで撮影・編集する方法、パソコンの無料編集ソフトについてもお話します
LESSON 基礎9・10 11/13(土)
13:00〜17:00
中間成果発表
制作中の映像をレビュー
LESSON 基礎11 11/27(土)
13:00〜15:00
クリエイターが知っておきたい著作権のこと
映像に映って良いものダメなもの 炎上やパクリについても解説
LESSON 基礎12 11/27(土)
15:00〜17:00
最終成果発表
完成した映像をレビュー

この他EXTRAレッスンでは、SNSの使い方、ROBOTの企画会議・編集作業中継、ROBOTの体験談を含めた企画演出、地域やブランドの情報発信について学べる全6回の授業を開催しています。

合志市クリエイター塾参加者インタビュー

合志市クリエイター塾2020年度の卒業生2名に、参加を決意した理由や授業で学んだこと、現在の活動状況などを伺いました。

フリーランスへステップアップ!

志水亜妃さん
志水 亜妃さん

2012年、新卒で上京しWEB業界へ。ECサイトやポータルサイトなどWEBサイトの運用ディレクターを経験。2018年に地元の熊本に戻り、元々興味のあった動画編集を独学で学ぶ。1年ほど副業で動画編集をしていたが、合志市クリエイター塾への参加をきっかけに映像制作を本格的にやりたい気持ちが大きくなり、本業を退職。現在はフリーランスとして映像制作を主に、熊本の観光地を紹介するYouTubeチャンネル『くまLOCCA』の運用も行っている。

——合志市クリエイター塾に興味を持ったきっかけは?

音楽が好きで、ライブスクリーンで見る格好良い映像を自分で作れたら面白いなと思っていたんです。熊本に帰郷したのを機に以前から興味があった動画編集を始めました。熊本で会社勤めをしながら、オンライン動画編集講座を利用したり、YouTubeを見たりして独学で動画制作を学び、2019年にはYouTubeチャンネルを開設して熊本の観光地やグルメ情報を発信し始めたのですが、登録者数が思うように伸びませんでした。そんなとき、偶然SNSで見た合志市クリエイター塾の広告のキャッチコピーが「自分で、発信できる人になる」だったんです。これは参加しなきゃ!と思いました。一番魅力的だったのは、有名制作会社のROBOTが運営で、講師も同社のクリエイティブ・ディレクター清水 亮司氏とプロデューサー柳井 研氏だったこと。熊本にいながら第一線のプロに教えてもらえる機会は見逃せませんでした。

——参加してみて、いかがでしたか?

実際に商業的な活動をするプロの考え方は独学では知りえないことも多く、とても勉強になりました。2020年度は、ほとんどが対面で数回オンラインという授業形態でした。6~7人のチームで企画・構成を考え、撮影・編集をして1本の動画を作り上げるのですが、年齢や職業、参加の背景も違う人たちとのコミュニケーションに時間がかかり、1講義2時間の授業時間だけでは足りず、仕事後に集まったり、オンラインでミーティングしたりして、納得いくまで話し合いました。始めは作りたいものがバラバラで、いろいろな意見を同じ方向に絞るのが大変でしたね。その後、中間・最終と2回の発表機会があり、中間発表のフィードバック箇所を修正して最終発表を迎えます。私たちの作品は、ありがたいことに大変厳しい評価をいただきました(笑)。改善の余地はいろいろある作品でしたが、個人的には1本の映像作品を作り上げることができた!という達成感が強く、評価は厳しかったですが、とても満足でした。

合志市クリエイター塾の様子3
合志市クリエイター塾の様子4

——卒業後も動画制作の勉強は続けていますか?

卒業してから2~3カ月後には会社を辞め、フリーランスとして動画制作の仕事を始めました。映像編集をメインとしながら、クリエイター塾の繋がりで映像制作の依頼を受けて活動しています。YouTube用の映像編集が多く、カットやテロップ入れ、音楽・効果音付けというものです。おかげさまで定期的に依頼をいただき、時には撮影から携わることもあります。クリエイター塾で一緒だった方とは今でも連絡を取りあっていて、撮影に出かけたり、イベントに参加したりしています。また、私が運営しているYouTubeチャンネルの一員になっていただき、一緒に活動している方もいます。
そして実は私、2021年度のクリエイター塾にも参加していたんです。今回の講義プログラムにある、ROBOTの企画会議にオンライン参加できる講座や、プロの実際の編集風景を見られる講座がとても魅力的で。企画出しからプレゼンまで行うプロの会議では、いろんなアイディアが挙がっていて勉強になりました。前回と違い、2021年は全てがオンライン開催となりましたが、この講義はオンライン授業ならではの内容だと思います。

——合志市クリエイター塾を機に未経験からプロになられたわけですが、今後のキャリアプランは?

現在はYouTubeがメインとなっていますが、ゆくゆくはCMやプロモーション映像などの企画から制作、発信までやっていきたいです。そのために勉強も続けながら、仕事を通じてスキルアップをしてきたいと思います。また、自身のYouTubeチャンネルを通じて、地域貢献をしていきたいです。クリエイター塾に参加する前から地元のPRをしたいという思いはありました。東京の友人たちは、熊本に行ってみたいという人は少ないのですが、実際に来てもらって案内すると、みんな「熊本っていいところだね」と言ってくれます。これは熊本の良さを発信できていないのだなと感じるようになり、もっともっと熊本の魅力を伝えていきたいと思っています。

業界経験者にもおすすめ!新しい発見がたくさん

手島 麻陽さん
手島 麻陽さん

2011年、新卒で映像制作会社に入社。主にCM制作のプロダクトマネージャーを担うが、企画・進行管理・ディレクターまで何でもこなし、ナレーションを担当したことも。その後、フリーランスを経て、一旦映像から離れて広い視野でいろいろなことを見てみたいと、政治家の秘書に転職。合志市クリエイター塾への参加をきっかけに、映像制作の世界に再び戻りたいと思うようになった。現在の仕事が一区切りしたこともあり、2022年1月から映像制作会社へ転職する。

——合志市クリエイター塾に興味を持ったきっかけは?

実は1回目のクリエイター塾に申し込んでいたんです。映像制作の会社にいたときで、熊本県合志市にあのROBOTが来るというだけで、熊本の映像業界に激震が走りました。これは応募しなければと。同業として憧れもありましたし、盗めるものは盗んで勉強させてもらいたいという気持ちでした。でも、たまたま映画の仕事が入って参加できなくなってしまい、それがずっと心残りでした。昨年、新型コロナウィルスの影響で秘書業務が落ち着いてきて、時間のやりくりができそうだったので改めて申し込みました。6回目でようやく念願が叶いました。

——プロとしての経験もある手島さんにとって、どんな点が魅力的でしたか?

映像制作のおさらいとして過去に得た知識を整理できましたし、新しい発見もありました。これまで学ぶ機会がなかったSNSや著作権についての授業は新鮮な気持ちで勉強できました。私のチームのテーマが「農業用ドローンを普及させるためのPR映像を作ってSNSを利用して広告し、ECサイトで体験申し込みに繋げる」というものだったので、SNSに関する授業は映像を作った後の発信について知ることができて、大変勉強になりました。

iPhoneだけで撮影したチーム制作動画
ハイスピードセンサー・4K対応ですごい機材にも劣りません!

作品の完成度よりも、チーム全員の満足度を大切に仕上げた動画は、それぞれが編集したものを持ち寄って意見を出し合って決めていったのですが、4か月かけて1本作るので時間は潤沢にありましたし、時間があるがゆえに止め時がなくて、チームで沼にはまったこともありました。誰も決定権がないので難しかったのですが、逆に、全員が平等の立場で作品を作るのは、実際の仕事ではなかなかできない貴重な経験で、贅沢な時間でした。

——卒業後も動画制作は続けていますか?

チーム外の人とも連絡を取って、映像制作をしています。フリーランスでやっていきたいという人がいて、その人の作品集を作りました。ROBOTと合志市の境さんが、卒業後も制作をサポートしてくださって、とてもありがたいです。私自身は、学んだことを仕事にしたいと思っていて、来年からは合志市の映像制作プロダクションに転職が決まっています。新しい職場で、クリエイター塾のみんなにも仕事を依頼できたらいいと思います。地域クリエイターとして思いを届けられる人になり、熊本の力になりたいです。

——最後に、映像制作を仕事にしている人が参加する意義についてお話しください。

映像業界で仕事をしている方は「今さら参加するのは恥ずかしい」と思うかもしれませんが、経験がある人にも参加するメリットはいろいろあります。知識を系統立てて整理できますし、最近の映像業界の動向もわかります。何よりROBOTの清水さんに意見を言ってもらえるのは貴重な機会です。塾の内容は毎年変わると思いますが、普段の仕事とは違ってじっくり制作に取り組めるし、さまざまな人と関わることができることも他では体験できません。躊躇しないで参加してほしいです。

広がるクリエイター育成の輪と地方創生

これまで熊本県合志市のみで開催してきたクリエイター塾は、年々こうした塾生輩出や地方創生が進んでいます。この合志市の取り組みに賛同し、2021年度は青森県六戸町、石川県内灘町の2つの自治体と連携して授業を開催しましたが、この2つの町も合志市と同様に地方ならではの課題を抱えています。

青森県六戸町は、情報の質・量ともに発信力が不足しており、特に訴求力のある動画による情報発信は圧倒的に少ないという課題を持っているものの、潤沢な予算もスキルを持った人材も足りていない。クリエイター塾に参加することで、地元町民に地域の魅力を伝えるプレイヤーになってもらい、情報発信ができるクリエイターとして育て、町や企業等の広報役になってもらうことで、こうした課題をクリアすることを期待しています。

また、石川県内灘町は、大部分が住宅団地で、大半の方が金沢市をはじめとする近隣市町に通勤するサラリーマンであり、地場産業や地域での雇用機会の創出が課題となっています。以前から、町で生活するサラリーマンの方の副業や、主婦の方の隙間時間等を活用した、「やりたかったこと」を事業化するスモールビジネス創業の支援に取り組んでいますが、今回のクリエイター塾を通して、自分の好きな「もの」「こと」「ひと」「まち」などを映像で発信してみたかったという方を掘り起こし、仲間づくりや事業化に繋がることを期待しています。

青森県六戸町
六戸町
石川県内灘町
内灘町

こうした地域課題に呼応し、クリエイター塾を運営するロボットは、積極的にやりたいことを発信してくださる方をフォローしていこうと考え、撮影・編集の仕事を依頼して、卒業した方の活躍の場も提供しているため、クリエイターの育成はますます活発になっていくと思われます。また、同社のプロデューサー柳井氏はこう言います。
「この活動は、質の高い教育をというSDGsにもマッチしていて、これをきっかけに地域を変えていければ、と考えています。地元の人が地元のPRができるのがこのプロジェクトの良いところで、CMやPR映像などを制作できる人が全国に広がって行けばいいと思います。企画や撮影編集ができる人の周りには、出演したい人、音楽を提供したい人も集まってきます。映像がコミュニケーションツールなって盛り上がっていく地方が増えて欲しいです。」

地方からの情報発信が必要だと感じている自治体や生徒の参加が年々増え、次第に地方が活性化されることを期待するとともに、メディアの発信といえば東京から。は過ぎ去り、地方発のクリエイターが第一線で活躍する時代ももうすぐかもしれません。

2023年度の情報は7月頃サイトで募集開始予定。全国どこにいてもロボットの質の高い授業が受けられるチャンスです! ご興味がある方はぜひサイトにてご覧ください。

To Creator編集部
To Creator編集部

Tips/ノウハウ、キャリアに関する情報/最前線で働く方へのインタビュー記事など、クリエイターの毎日に役立つコンテンツをお届けしていきます!