アフターコロナ時代を先読みする、クリエイティブ業界の新しい価値観とは?

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アフターコロナ時代を先読みする、クリエイティブ業界の新しい価値観とは?

アフターコロナ時代を先読みする、クリエイティブ業界の新しい価値観とは?

楽しく、クリエイティブに働くための50の法則をまとめた『仕事の研究』の著者・美濃部哲也さん。約30年間にわたり、大手広告代理店や大手ベンチャー企業などさまざまな業界と業種で活躍し、現在は事業主側の経営視点で、経営と事業のアドバイザリー業務、マーケティングおよびブランディングのアドバイザリー業務、ブランディング活動のディレクションおよびプロデュースをされています。そんな美濃部さんから、クリエイティブ業界の事情やマーケティングについてお話を伺い、2回に分けてお伝えします。第1回では「コロナ禍以降のクリエイティブ業界」について教えていただきました。

新型コロナウイルスの流行で価値観が大きく変わった3年間

——コロナ禍以降のクリエイティブ業界は、どのような変化が起こりましたか?

世界で同時期にコロナが流行し、とても悲しく残念なことに、世界規模でたくさんの人、多くの人が知る著名な方々も亡くなってしまいました。そして、自分の身近な人が亡くなってしまった方もいらっしゃると思います。全世界的に誰もが「死と自分が背中合わせにいる」という共通の感覚を得ました。それは自分にも、家族にも起こりうることだとみんなが気づいたのではないでしょうか。そして、自分の人生、残りの人生、次世代の子どものこと、未来のことを、世界規模ですごく真剣に考え始めたのだと思います。

ドラッカーの言葉を使うと「すでに起こった未来」(※)に対して、今すぐ真剣に考えようと、消費、生活、人生の時計の針が非常に早まったのですね。コロナの流行が無ければ、おそらく5年後ぐらいにみんなが真剣に考えていたことを、一気に考えるようになった。ダイバーシティ、ウェルビーイング、サスティナビリティ、SDGsなどがすごく重要になり、世の中の、そして、多くの人の価値観が大きく変わりましたね。

※「すでに起こったこと」を観察すれば、それがもたらす未来が見えてくること。P・Fドラッカー著書より。

——具体的な働き方についてはいかがでしょうか?

オンラインで多くの人とお会いしたり、オンラインで仕事ができたり、第一に距離の制約がなくなったのが非常に大きいと思います。その分、いろいろな可能性が広がりやすくなりました。
それから、自分の仕事に専門性さえあれば、会社の部署という概念がなくなり、部署を越え、それこそ会社の枠も越えて、専門性の高い人達が結合して一つのプロジェクトを行っていくこともやりやすくなってきていますね。会社の枠に縛られず、自由な発想でものづくりができる働き方が広がっていると思います。

具体的な働き方についてはいかがでしょうか?

今のクリエイティブ業界で働くためには

——新しい動きが出ているクリエイティブ業界で今求められる人材とは?

「専門性」を持った人。 「この人だから」というのがすごく重要で、そのために必要なのが、自分自身のリスキリング(※)です。まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の専門知識を身につけ、同時並行で自分の専門領域に対するリスキリング。今までの枠組み、仕組みの中で動く以上に専門性を高めていく。自分が集中特化して、自分らしさが大いに発揮される領域をつくることが非常に重要だと思います。

※「リスキリング」とは、技術革新や働き方の変化に対応するために、新たなスキルや知識の習得を目的に学ぶこと。

——リスキリングのために大切なことは?

自身の「得意や好きを磨く」ことだと思います。例えば、不得意なことを一生懸命やると普通にできるようになりますが、それは「普通になる」だけです。また、不得意なことを普通のレベルまで持っていくようにする場合、精神的な苦労と時間がとてもかかるんですよ。逆に得意なことをさらに伸ばすのは、「普通以上」になるじゃないですか。かつ精神的な苦労も少なく、むしろ、どんどん楽しくなっていきます。

また自分の「得意や好き」が何だろう?と思っている方は、仕事に生かせる「好き」について、名詞じゃなく、動詞で考えてみてください。大抵の人に「好きなこと、得意なこと何ですか?」と質問すると、みなさん名詞で答えますよね。「映画が好きです。野球が好きです」のように。そうではなく、自分がしてきた「好きだったことや、熱中できたこと」を振り返る際に、「どのようにやったか」の「どのように」(=動詞)にフォーカスするのが良いと思います。

リスキリングのために大切なことは?

例えば、私は大学でフランス語を2年間学んだ上で、フランスに留学しましたが、まったく現地では歯が立ちませんでした。フランスは個人主義の国なので、言葉が話せないと本当にきついんですよね。その時は、相手の表情、身振り手振り、ちょっと理解できる言葉から想像する、「観察して想像する」毎日でした。すると、半年ぐらい続けたら少し喋ることができ、2年経った時には話せるようになっていたのです。私の性格が元々そうだったのですが、好奇心が旺盛で、「観察して想像する」ことが非常に好きだった。だから私は、ある時から「消費者行動を観察すること」が重要な仕事に自分の時間や情熱を注ぐことにしたんです。

クリエイティブな業界を選んだ方は、嫌々その仕事を選んだという人は少なく、“好きだから選んだ”、という人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。その中でも「自分の真骨頂は何?」というところを見つけて磨けると、唯一無二の存在になれると思います。みなさんの中に絶対的な何かがあるので、自分の中の行動パターンから紐解いて、その動詞を見つけてみてください。今までの人生の中でも、本当は大変なことなのだけれど、精神的な苦を感じずに、ネガティブなことを感じずに一生懸命やれたこと。遊び、勉強をしている時、学校生活、今や過去の仕事でもなんでもいいんです。脳波が幸せな状態で熱中できたことに共通する動詞を探すことをおすすめします。

後編では、マーケティングやブランディングのキーとなるポイントについて語っていただきます。

次回をお楽しみに!

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To Creator編集部
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