過去も未来も超えて、今が最高!格闘ゲームの超必殺技をアイドルで実写化。妄想キャリブレーションMV「激ヤバ∞ボッカーン!!」クリエイターインタビュー

妄想キャリブレーションのMV「激ヤバ∞ボッカーン!!」

 

2013年に秋葉原ディアステージのイベントから生まれたアイドルユニット、妄想キャリブレーション、通称、妄キャリ。昨年6月に、メジャーデビュー後、すでに5枚のシングルをリリース。今年1月にはテレビアニメ「タイムボカン24」のエンディングテーマにメジャー4thシングル「激ヤバ∞ボッカーン!!」が採用され、アイドルの頂を目指し、険しい山々に果敢に挑んでいる。「戦うべきは過去の自分!」。そんな妄キャリの心情を描いたMV「激ヤバ∞ボッカーン!!」。篠田利隆&大橋史、両監督の妥協なしクリエイションのインタビューです。

 

MV「激ヤバ∞ボッカーン!!」に込められた、それぞれの想いと企て

dir:Toshitaka Shinoda (amana ijigen), Takashi Ohashi|pl:Takeru Nagasaki(I&S BBDO),|Pr:Takamasa Yamazaki (amana), Manami Oshiro (amana ijigen)|DoP:Hiroyuki Yabe(SPACE SPARROWS), lt:Issey Tada|Ch:Mayuka|3D Scan:SUPER SCAN STUDIO(K's DESIGN LAB,Inc) CG De:Tetsuji Ono(UZURA), Densuke28, Kanta Mochida, Yasuyuki Yoshida|Graphic De:Shun Sasaki(AYOND),Yoko Nakanishi(AYOND), Editor:Takayuki Oguma(DTJ), Makoto Imamura(amana)|Ani&Char De:Yukie Nakauchi

 

篠田(利隆):実は、ぶっちゃけ話をしちゃうと、みんなに内緒でこのMVでめっちゃやりたいことがあったんです。「アニメの超カッコイイバトルシーンを実写でやりたい!」ってアイデアをずーーっと温めていて、「実行する時がきたー!」と思っていた。でも、企画会議で、なんだかタイムトラベル的な、時間を使った演出にしよう、みたいな流れに傾いていって、あれ、近くて遠くなっていく…。内心ハラハラしてた。

こういう時、挽回の発言をするタイミングって重要。間違えると完全に選択肢からデリートされちゃいますからね。それで、機をうかがって「やっぱり今回はタイトルの響きもいいし、“ボッカーン”で爆発じゃないでしょうか」と、投げたところ、プランナーの長崎豪さんから「超必殺技」ってワードが返ってきたんです!「よしっ!流れを取り戻した」って思いましたね。

 

大橋(史):僕も今だから言うんですけど、実は、格闘ゲーの企画は反対でした。

 

――それは意外ですね。格闘ゲーム好きの大橋さんからのアイデアかと思っていました

 

大橋:“超必殺技”って格ゲーカルチャーの言葉であって、必然的に、対戦格闘ゲームをネタにすることになるのですが、その場合、間違いなく最新のPS4レベルのイメージに仕立てないといけないというハードルが出てきます。篠田さんとこれまでの妄キャリの演出で、平成以降、ゼロ年代のアニメやゲームを引用して、先輩グループのでんぱ組.incの映像表現(昭和〜平成)とは意識的に差別化したアキバ感を打ち出してきているので。僕には実写のノウハウがないので、実写で出来るのか不安だった。

 

篠田:そこは僕には勝算があって、ワイヤーアクションの予算はないけど、アングルを細かく割って、ジャンプをしている演技を繋いでいくことで、空中のバトルシーンが撮れるって考えていました。でも、確かに大橋くんからの「格ゲーの実写シーンですよ」っていう圧は凄いものがあった(笑)。

 

大橋:対戦ゲームなので、一部の格ゲーファンは基本好戦的なんですよ。だから、ちゃんと格ゲーの文脈を理解した演出をしないと叩かれるだろうし、自分が見る側にたった時「ちゃんとわかって作っているのか?」っていう気持ちが働くもんなんです。それらのプレッシャーに加えて、妄キャリという「次世代のアキバのアイドル」をビジュアルで表現するには、3DCGが必要だけど、僕は3DCGのディレクターをやったことがない。出来上がりには満足していますが、この3つのプレッシャーで僕は途中地獄のような思いをしました。

 

――今回のMVのネタ元になっている主な格闘ゲームは?

 

大橋:ストリートファイターⅤ、ザ・キング・オブ・ファイターズ xiv、マーブル VS カプコン、サムライスピリッツ、龍虎の拳、ヴァンパイアなどです。

 

篠田利隆監督と大橋史監督

(後方)篠田利隆監督、(前方)大橋史監督

 

――ところで、ミュージックビデオ(MV)では珍しく、クリエイティブディレクター(CD)も参加されているのですね。

 

篠田:インディーの頃は、僕が企画をやっていたのですが、メジャーになって音楽性が変わり、僕の得意なアキバカルチャー一辺倒な企画から卒業した方がいいなって思ったんです。世界観に広がりを持たせられる、ドライに企画作る人が必要だと。I&S BBDOの長崎さんとは初音ミクの仕事でご一緒させてもらった縁で仲良くなりました。広告業界でレアなリアルオタクな人で、長崎さんが「バンドじゃないもん!」(妄キャリのライバル的存在!)のファンになったきっかけが、僕が演出したMVだったりと、共感度も高い。長崎さんが企画、実写の演出を僕、アニメーションの演出を大橋君と、三人寄れば文殊の知恵、じゃないですけど、そういう役割で「激ヤバ∞ボッカーン!!」は作っています。

 

KO

 

――格闘ゲームを軸にしたストーリーですが“超必殺技”からこのアイデア生まれてきたんですか?

 

篠田:そこはもっと妄キャリに寄せていて、去年、メジャー移籍後、順風満帆ってわけにはいっていないんですね。でも、よかったことや上手くいかなかったことも含め、ぜ〜んぶ破壊するくらいの勢いで今年は行くぞ!っていう想いが彼女達にはあって、そこからストーリーを考えていく中、格闘ゲームのアイデアが出てきたんです。

 

――妄想キャリブレーションにとって「新年の誓い」的なビデオなんですね。

 

キーとなった3Dスキャン撮影と3DCGエフェクト

撮影風景

 

――そのゼロ年代の格闘ゲームの空気感と、妄キャリの存在感を作るために取り入れたのが、3DCGでのエフェクト、そして3Dスキャン撮影だったということですが。

 

篠田:ええ、ヴェイパーウェイブといった音楽ジャンルの影響も映像で仕込みたかったので3Dスキャンをつかった表現はぴったりだと。

 

大橋:去年、篠田さんに誘ってもらって、妄キャリのライブで3Dスキャンデータを使った演出をしました。ハイエンドなスキャンデータに、ネット上で拾ってきたボーンにアニメーションを付けるプラグインを組み合わせて、メンバーを踊らせたらバカウケ。妄キャリファン、リテラシー高いぞ!って、その時の感触としてありました。

 

篠田:妄キャリのファンは、光るスカート(絶対領域をLEDが照らすスカートの衣装)やプロジェクションマッピングの演出などで、テクノロジーには親和性高い。ライブ演出で、ファンの人がウケていたポイントが、「プログラミングで動かしていた」というところ。アキバの人たちだからプログラマーの人も多いんですよね。

 

過去の自分と対峙

※白い衣装をきた過去の自分と、現在の自分が対峙する。

 

大橋:それで今回のビデオ用に、84台のカメラを使って全身を3Dスキャン撮影して、 “過去の自分”を作り、現在の自分と対戦します。このビデオのテーマ「過去の自分を乗り越える」っていうのを表現しているんです。

 

――もう一つの3DCGエフェクトですが、演出の狙いを教えてください。

 

大橋:エフェクトアニメーションはこの作品の重要な要素を担っているんです。

 

3DCGを使ったエフェクト

こだわりの3DCGを使ったエフェクト。画面下のエフェクトは写真が引き伸ばされて貼られている

 

篠田:そう。2D作画のエフェクトを入れると「でんぱ組っぽい」って言われるんです。アニソンなど昔からやっている表現なんですが、でんぱ組の印象がどうしても強いので。だから、妄キャリらしいエフェクトを開発しようってテーマもありました。

 

大橋:そうなったら3DCGしかないなと。2Dに見える3DCG、例えば「亜人」でもそういう表現の開発は進んでいて、今のアニメを見ている人は、見た目2Dだけど3DCGでやっているということが分かるんですよ。彼らのリテラシーを信じて3DCGでエフェクトアニメーションをやれば、でんぱ組の流れを引き継ぎながらも、新しい挑戦に気づいてくれるんじゃないかと思ったんです。セルルックでなくて、写真を無理やり引き伸ばしたような…わ、わかります?

 

篠田:テクスチャに使っている素材に注目してみてください。

 

3DCGで制作された効果線

3DCGで制作された効果線。テクスチャには実際の写真を使っている。

 

――油絵っぽい抽象的なデザインだなって思っていました…

 

大橋:写真なんです。NASAの航空写真を引き伸ばして使っています。今回の妄キャリのビデオで、ポストインターネットの文脈も汲んだ、そういう表現や存在感にもう一度戻していきたいという思いもあって。

格ゲーにおいても、エフェクトにそのゲームのアイデンティティが宿っている、と言っていいほど重要なんです。ストリートファイターⅣのときは、筆が走ったようなCGのストロークのアートディレクションで、Ⅴではキャラクターの質感を油絵っぽくしたディレクションとはっきりと個性を立たせる傾向にあります。妄キャリをモチーフにした格ゲーを本気でつくるとしたら何がいいのかって考えた時、ネットカルチャーの空気感を組み合わせた、バグのようなエフェクト表現がいいんじゃないかって思い切って入れていきました。これらのエフェクトアニメーションの部分は、でんすけ28号という多摩美術大学を卒業したばかりのクリエイターが担当してくれています。彼はバグから着想したアニメーション作品制作をしている若きクリエイター。ボス戦も3DCGで2Dルックのシェーディングで彼が作ってくれていますが、こういうのって一歩間違えるとダサくなるところ、ギリギリのセンスが抜群なんですよ。

 

妄キャリVSボス対戦画面

 

ワイヤーアクション無し!実写で再現する“超必殺技”

篠田利隆監督

篠田利隆:映像ディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。電通テック企画演出部を経て、現在アマナ異次元所属。アニメ、アイドル、ボカロ、オタクカルチャーに関わる映像ディレクションを行う

 

――“超必殺技”を実写で、という挑戦ですが、出来上がりの感想は?

 

篠田:トップカットの星野にぁちゃんの空中必殺技は特に気に入っています!「空中で溜めて技を放つ」という表現を、コマ撮りでもなく実写でここまでやれたのは、これまでになかったんじゃないかって思います。

空中超必殺技

星野にぁの空中超必殺技の撮影現場より

 

大橋:僕は胡桃沢まひるちゃんの必殺技のシーンが気に入っています。

 

まひるちゃんのケリ技

篠田:まひるちゃんのケリ技は、「龍虎の拳」のキャラクター、キングをモチーフにしています。大橋くんから大量に送られてきた超必殺技のムービ集を見ながらコンテをかいていたんですけど、軸足を変えながらのケリ技がカッコイイなって思っていて。足がキレイな子ですし。

 

大橋:トルネードキックですね。

 

篠田:こういう技を実写で取るのは難しいものなんですが、彼女はなんとキックボクシング歴4年だった。撮影当日までそれを知らなかったんですが、現場で、マネージャーが「よかったね、キックボクシングやってて」って言ってるのを聞いて「えーそうだったの!先に言ってよ〜」って。

今回3DCGにしてよかったのは、超必殺技を8倍のハイスピードで取っているのですが、そうすると滞空時間はそんなに長くはない。そこを3Dのエフェクトだと空間を上手く作れた。ネジネジした3Dのエフェクトがグイグイってくるんです。カメラ側で滞空時間長くしようとすると30倍のハイスピードとかになってくるんだけど、アイドルを撮るのには照明の量とかいい塩梅にならないんですよね。

“わからないことには口出ししない”というのがオタクの鉄則

ヒットボックスをつかった演出

格闘ゲームファンの間で評価の高かったヒットボックスをつかった演出

 

――実際に、格闘ゲームネタに踏み切って、大橋さん的に満足しているシーンは?

 

大橋:たくさんあるのですが、「攻撃判定とやられ判定」のヒットボックスがダンスにあわせて動くところ。

 

篠田:もしかすると、今作において一番評価の高いシーン。

 

大橋:格闘ゲームでは”やられ判定“よりも、”攻撃判定”の枠が外に出ているの方が強いんです。このダンスシーンはめっちゃ飛び出ていてるんです。

 

――すごく強い状態ってことですね

 

篠田:「この攻撃判定って!!」なんて、長崎さんと大橋君が盛り上がっていて、僕は「それってそんなに盛り上がるのかなぁ」って正直思っていた。だけど公開したら、みんなここの話なんですよ。センスが凄いって。僕もアニメオタクなんでわかるんですが、“わからないことには口出ししない”というのがオタクの鉄則。情報強者にはあらがえません。

 

大橋:龍虎の拳のバイクに乗るシーンや、波動拳を出すくらいだと格ゲーファンは納得しないと思ったんです。ググっても出てこないくらいのものをやらないとなぁって。

 

絵コンテの読めるアイドル

大橋史監督

大橋史:映像作家。言葉、文字、図形譜をテーマにCGの有限性・限界線を意識したアニメーション作品を制作する。BRDG主催イベント「キマイラ」などのオーディオ・ビジュアルイベントへの出演、またNEWファンタのwebプロモーション「NEWファンタ - ジコショーカイラップ」な広告映像の演出も手がける

 

――最後に妄キャリのメンバーはこの企画に対してどんな感想だったのか教えてください

 

篠田:僕、かなりカットを割ってコンテを描くタイプなんですが、彼女たちとはこれで10本目になるので、僕のコンテを読み解く力が半端ないんです。撮影前に1度だけある本人たちとの打ち合わせで、(雨宮)伊織ちゃんが「今回ワイヤーアクションをやるんでしょうか?」って聞いてくれるわけですよ。企画読み取ってくれて、コレどうやってやるの的なリアクションが嬉しい。でも、ワイヤーアクションやる予算ないので、「回転台と箱馬と本人たちのジャンプ力とでやれることをやる」って説明を、その後することになるんですが…。1つのシーンを別アングルで何度も撮影するので、彼女たちの負担も相当なものが予想されました。でも、「良くなるのであればやります」って情熱を注いでくれた。撮影には24時間もかかりました。

 

――妄想キャリブレーションファン、格闘ゲームファンにも向けて作られたこのMV、最後に感想を一言お願いします

 

篠田:オタク文化も一般化してきましたが、これからも面白いオタク文化の発掘や発見がしたくてこのMVを作りました。それが、僕だけじゃなく、観た人にとってもひとつのきっかけになるといいなって思います。

 

大橋:格ゲー久々にやってみようか、なんて思ってくれると嬉しいです。作っている過程では、監督業の難しさを痛感しました。

 

篠田:あ!僕も辛かったの思い出してきた。途中で蕁麻疹でたな〜。僕は辛かったことすぐ忘れちゃうんだよなぁ。

 

 

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