映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』に参加する日本人スタイリスト“KO3UKE”インタビュー!「転がってるチャンスはしっかり拾っていこう」

KO3UKE

KO3UKE(こうすけ): 15歳でニュージランド(NZ)に渡り高校から大学までNZで過ごす。Whitecliffe college of Arts & Designにて写真と映像を専攻し卒業後、キャスティング&コーディネーターとしてアルバイト中にスタイリスト十川ヒロコと出会い師事する。東京に拠点を移し十川師のもとスタイリストとして活躍。2013年スタイリスト&コスチュームデザイナーとして独立。近年は衣装周りだけでなく、クリエイティブディレクター、クリエイティブプロデユーサーとしても活動する。コスチュームバイヤー&スタイリストとして、映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』、MIUMIU『Seed』(監督:河瀨直美)(http://www.miumiu.com/en/women_tales/11/film?cc=IT)、Yoji Yamamoto『GroundY』2017SS(撮影:Leslie Kee)(https://www.youtube.com/watch?v=Zh5r4bnLaGo)など。プロデュースワークでは、テレビ東京の番組「Life in the Outdoors」が7月からオンエアーを控える。

 

米国、日本、中国でも大ヒット上映中の『ゴースト・イン・ザ・シェル』。士郎正宗氏によるSF漫画「攻殻機動隊」をルパート・サンダース監督がメガホンをとり、ハリウッド一稼ぐ女優スカーレット・ヨハンソンを主演に迎え実写化。ヨハンソンが演じる少佐の上司、荒巻大輔役をビートたけしが演じる。キャスティング、CG、衣装など多方面で話題の本作だが、ここでは、ビートたけしのスタイリストとして、また、東京のコスチュームバイヤーとして本作に参加した日本人クリエイターKO3UKE(コウスケ)氏のインタビューをお届けする。

 

第二の故郷、ニュージランドが繋いだ縁

KO3UKE

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
配給:東和ピクチャーズ|(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

――ニュージランドで高校からの学生時代を過ごされ、現在は東京を拠点に活動されています。ファッション業界を視野に入れた留学だったのですか?

全くそんなことなくて。僕の希望というよりも母親の推しで留学させてもらった感じでした。現地でキャスティング&コーディネーターとしてバイトをしていた時に、師匠の十川ヒロコさんにスカウトされてスタイリストの道を歩み始めたんです。

 

――近年のワークスをみると、スタイリスト&コスチュームデザイナーにとどまらず、映像のプロデューサー業もされていますね。海外のお仕事が普段から多いのですか?

本業はスタイリスト、または、コスチュームデザイナーとして東京ベースで活動しています。海外のクライアントが東京で衣装を集めたい時に、バイイングをしてフィッティングをして、場合によってはコスチュームデザイナーとして現地に渡って参加することもあります。国内では、CMのスタイリスト、映画や舞台、MVの衣装をスタイリングしたりデザインしています。最近は衣装関係の仕事だけでなく、海外からとりあえず来る相談に乗っているうちにプロデュース業も増えてきました。ニュージランドでのキャスティングの仕事をしていた経験も活かして、自分が出来ることはやるようにしています。

 

ゴースト・イン・ザ・シェル

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
配給:東和ピクチャーズ|(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

――そんな中、今回『ゴースト・イン・ザ・シェル』で、ビートたけしのスタイリストとして参加されたのはどういった経緯だったんですか?

以前参加した映画『終戦のエンペラー』に遡るんですが、あの映画は史上初の皇居での撮影ということでも話題になったので記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。西田敏行さんやトミー・リー・ジョーンズさんらが出演されている日米合作のハリウッド映画です。僕はその作品で、日本撮影側のコスチュームスーパーバイザーと参加していました。仕切っているプロダクションがNZの会社で、そこのスタッフから『ゴースト・イン・ザ・シェル』の案件を紹介されたんです。僕への依頼は東京で入手出来る衣装や素材のバイヤーとしてでした。荒巻役のビートたけしさんの衣装にはじまり、荒巻がつけている、スイスのブランドARTYA(アーティヤ)のロシアンルーレットという時計などを調達してきています。あの時計は面白くて、スケルトン状の盤面に、リボルバー式拳銃のような穴が開いていて、高速回転するんです。ロシアンルーレットという名のごとく実弾も一発装着されています。僕の仕事は集めた衣装をフィッティングしてNZでの撮影に送り出すというところまでなんですが、やっぱり撮影現場にも行きたいじゃないですか。

 

――まぁ、そうですね(笑)。そのためにどうされたんですか?

本作のデザイナーはカート&バートという二人組なんですが、彼らに直接交渉して、最終的にローカルのフィッターとして参加できることになりました。フィッターというのは日本で言うスタイリストとほぼ同じ仕事です。現地のフィッターなのでたけしさんがいない時は、別の出演者のフィッターとして働きます。ギャランティのことだけでみると、バイヤーだけをしている方が全然いいんですが、このチャンスを逃す手はないなと。

 

――そういう姿勢はどこで培ったものですか?

僕が十川ヒロコのアシスタントをしている時、ブロードウェイミュージカルの「ボーイズ・フロム・オズ」の演出家フィリップ・マッキンリーに、成功する秘訣をきく機会がありました。「チャンスは目の前にある時に自分で掴める準備が出来ているかどうかだよ。そしてそれを掴むかどうかは君次第なんだよ」という答えが返ってきました。「OMG!!」でしたね(笑)。それ以降チャンスがあれば突っ込んでいこうって決めているんです。だから、「現場をスムーズにまわすためにも英語と日本語を堪能に話せる僕がいたほうがいいと。たけしさんにはもちろん付いている方はいらっしゃるのですが、その方は演出部の通訳として監督とのやり取りをまとめていらっしゃいました。スタイリストって現場では演者さんに近いところで、撮影の香盤に沿って次に何を着るのか段取りを把握する必要があるのでバイリンガルの僕がいると円滑にまわるよと。食い込むところはどんどん食い込んでいく(笑)」。

 

ビートたけし

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
配給:東和ピクチャーズ|(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

ニュージランドの撮影所ってどんなところ?

――現場のお話も聞かせてください。KO3UKEさんが働く衣装部はどのような規模で構成なのですか?

この規模の現場に関わるのは僕にとって初めての経験で、刺激しかなかったです。まず、バイヤーの仕事で言うと、一着衣装が決まるとそのダミーが数着いるんですね。バックアップ用だったり、撮影に合わせて血だらけのバージョンときれいな状態のものと。邦画だと作品の規模にもよりますが1〜3枚で回すところを、倍の数は準備しました。

 

NZの撮影所の中に、コスチュームデパートメント(衣装部)と言う、でっかい一つの倉庫があります。その中には生地を作るチームもあれば、衣装を縫製するスタッフが国内外から集っています。欧米は分業制が基本なので様々なプロフェッショナルがいます。例えばグローブ(手袋)を作る担当の人達がいたり、ダメージ&エイジングだけを担当するカラリングのチームがあったり。衣装部のウェアハウスの隣には美術部のウェアハウスがあって、光る畳を作っていたり、その隣には美術部が組み立てたセットが2、3つあって撮影が並行して行われる。さらに、建込み中のスタジオが隣にあって…改めて、“あぁ映画ってみんなで作っているんだなぁ”と感じた現場でした。

ゴースト・イン・ザ・シェル

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
配給:東和ピクチャーズ|(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

――本作は『ハンガー・ゲーム』(2012)のデザイナー、カート&バートが担当されています。スタッフィングの構造はどうなっているんですか?

トップにコスチュームデザイナーの、カート(カート・スワンソン)&バート(バート・ミュラー)がいて、彼らの下にコスチュームスーパーバイザーのJenny Rushton(ジェニー・ラシュトン)が、衣装部のキャスティングや、スケジュール等の管理業務を行っています。そして、現場のフィッターがいて、数えたことがないですが50名以上のスタッフが常に出入りしています。僕はそこで、3カ月間仕事をしましたが、長い人は半年程いました。職種によって出たり入ったりしながら一つの映画が出来上がります。デザイナーになるとプリプロからずっと携わっていくことになります。

 

特殊な衣装はWETA Workshopが担当します。ファウンダーの一人でもあるリチャード・テイラーのチームが、光学迷彩の衣装、アーマーといった特殊なシリコン素材の衣装を扱っています。テイラーさんは何度もアカデミー賞を受賞しする素晴らしい才能です。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』“少佐のアクション”特別映像

 

――この規模感だとサンダース監督と直接話す機会はあるんですか?

流石に、挨拶をするのが精一杯くらいの距離感でした(笑)。

 

――現場でのサンダース監督ってどんな監督でしたか?

彼はCMのキャリアをバックグラウンドにもつ方です。僕が感じた範囲ですが、プロダクトに対するこだわりをすごく感じました。イメージをしっかりと持っているんだなぁと感じましたね。

 

『ゴースト・イン・ザ・シェル』 監督こだわりの衣装 特別映像
現場でKO3UKEさんが感動した”芸者ロボット”。演じている福島リラの顔型が取られロボットに反映されている。

 

――ビートたけしさんも記者会見で、「グッド」と言われてよかったのかなと思ったら「ワンモア」「ナイス」「ベリー・グッド」「エクセレント」「ジーニアス」、「でもワンモア」と何テイクも撮ったとお話されていました。

そう、たけしさんはテイク数が少ないタイプの監督なので「俺ならこれ午前中で終わってるな」って言ってました(笑)。監督の脳内ビジョンが目の前で視覚化されるまで妥協しない姿勢を感じました。そのこだわりはやっぱり画の仕上がりにも反映されているし、そこはリスペクトですね。

 

国内外でボーダレスに活動するために必要なスキルとは?

KO3UKE

――国内外でフットワーク軽くお仕事されていますが、海外の仕事をする際に必須なスキルって何だと思いますか?

コミュニケーション能力だと思います。これは日本の現場でも同じ。『ゴースト・イン・ザ・シェル』の現場をやって痛感しました。それぞれの意見を交換し合うこと、次はこういうシーンを撮影するから、こういう準備をしよう。状況が変わったから、こう対応しようとか、すごく細かいところまでコミュニケーションをとるんです。それは、ニュージランドクルーが優秀な所以なのだと思いました。他の国でもコミュニケーションをすごく大切にするクルーはやっぱり優秀なんです。

 

――コミュニケーション能力を高めるために普段から意識的にやっていることはありますか?

僕は普段から生活を楽しむようにしています。友達と一緒に飲みに行ったり、美術館に行ったり映画を見て、あれどうだった?って意見交換をしながら遊ぶ。英語を勉強する時もそうでしたけど、遊びから覚えたもののほうが残っているんですよね。それって子供も同じなんです。

 

――大人になると忘れがちな基本的なものを教えてもらった、と。

そう、人生楽しんでいいんだなって確認できたことが大きかった。日本だとみんな倒れそうになりながら撮影をするっていう経験しかしたことがない。楽しんでいたら怒られそうと言うか(笑)。NZでは、朝、海岸沿いを歩きながら日が昇るのを見ながらスタジオに行って、帰り道は今度は日が沈むのを見ながら帰る。最高でした。徹夜もないし週休二日制。そんな人生送ったことなかった(笑)。だから、僕がプロデューサーで入る現場は、仕事を100%楽しめるよう意識します。120%の力を出して初めて仕事をしたって思うんですよ。100%の仕事をするのって当たり前ですよね。僕が、プロフェッショナリズムを語るなんてまだ早いですが、10%でも20%でも上乗せして仕上げて、一つの仕事が出来たっていう風に感じるんですね。やるときはとことんやります。ゆる~く(笑)とことんやります。

 

END

 

取材・文・編集:山本加奈|写真:Rakutaro

 

ゴースト・イン・ザ・シェルロゴ

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
配給:東和ピクチャーズ|(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

近未来、脳以外は全身義体の世界最強の少佐(スカーレット・ヨハンソン)は唯一無二の存在。悲惨な事故から命を助けられ、世界を脅かすサイバーテロリストを阻止するために完璧な戦士として生まれ変わった。テロ犯罪は脳をハッキングし操作するという驚異的レベルに到達し、少佐率いるエリート捜査組織・公安9課がサイバーテロ組織と対峙する。捜査を進めるうちに、少佐は自分の記憶が操作されていたことに気づく。自分の命は救われたのではなく、奪われたのだと。本当の自分は誰なのか?犯人を突き止め、他に犠牲者を出さないためにも少佐は手段を選ばない。全世界で大絶賛されたSF作品の金字塔「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」をハリウッドで実写映画化。

 

監督:ルパート・サンダース

製作:アヴィ・アラッド、アリ・アラッド、スティーヴン・ポール

脚本:ジェイミー・モス、ウィリアム・ウィーラー 、アーレン・クルーガー

原作: 士郎正宗「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」

出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュほか

 

公式サイト:http://ghostshell.jp/

公式facebook:https://www.facebook.com/GhostInTheShellMovieOfficial

公式twitter:https://twitter.com/ghostshell_JP

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