日本発、Netflixで世界配信する3DCGアニメ『BLAME! ブラム』!クリエイティブとビジネスの両輪を操る仕掛け人、ポリゴン・ピクチュアズEP守屋秀樹氏インタビュー!

KO3UKE

守屋秀樹:ポリゴン・ピクチュアズ取締役、エグゼクティブプロデューサー

 

ハリウッドに顧客を持ち、『スター・ウォーズ』、『トランスフォーマー』、そしてディズニーや今年エミー賞を受賞したAmazon製作の『Lost in OZ』やニコロデンのテレビアニメ等など、世界市場向けのアニメーションを手掛ける日本のCGスタジオがあるのをご存知だろうか?

 

ポリゴン・ピクチュアズ(http://www.ppi.co.jp/)はスタッフ約300名を擁し欧米式の分業体制を実現する、日本ではめずらしいCGプロダクションだ。ディレクタードリブンな映像制作の文化の強い日本に対して、プロデューサードリブンの方式の採用と、先述の分業体制とにより、彼らのクライアントは国内にとどまらず、本場ハリウッドにまで及ぶ。日本作品では、今秋公開予定の劇場アニメーション『GODZILLA(ゴジラ)』が進行中だ。

ポリゴン・ピクチュアズがユニークなのは、こういったビッグタイトルの受託制作だけでなく、製作委員会の一員としてコンテンツの権利を有しながら、映像作品の開発&制作も手掛けている点。その作品群に名を連ねるのが評判を博した『シドニアの騎士』、そして今年5月に全世界公開された『BLAME!』だ。これらの作品をプロデュースするのは守屋秀樹さん。作品作りへの熱い情熱とビジネス戦略を舵取る守屋氏に、「3DCG映画は不毛」とされる日本において『BLAME!』での戦い方を聞いた。

 

カルト的人気原作コミックを、全世界のオーディエンスに響くアニメ映画に!

BLAME!キャプチャー

『BLAME!』(http://www.blame.jp) ©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 

――『BLAME!』の日本の劇場公開時(2017年5月10日初公開)には「体感できる映画」として、日本のアニメとして初採用したドルビー・アトモスを含む4種類の音響フォーマットをハシゴして聴き比べをする現象が話題になりましたね。原作マンガの知名度だけに頼るのではなく、CGアニメ化にむけ様々な演出が盛り込まれていました。この作品はNetflixでも世界配信されており、グローバルオーディエンスにも響く映画作品に仕上げることが命題だったと思いますが、制作に携わるチームで共有したキーワードはどのようなものだったんでしょう?

キーワードは「『BLAME!』入門編」でした。原作には、ほとんど会話は無く、アート集のような読者を突き放した構成で、それが故にカルト的な人気作品でしたが、そのまま「分かる人だけに分かるアート映画」にしてしまうと、原作ファンから視聴者を広げられない。Netflixでの世界配信も決まっていたので、ビジネス的側面だけでなく、制作者としても1人でも多くの人に観てもらうにはどうしたらいいか、を考えました。

たどり着いたのは「誰もが共感できるストーリー」でした。原作コミックの世界観をベースにしつつ、この映画をきっかけに、より多くの人に『BLAME!』を知ってもらおうという方針になりました。原作者である弐瓶先生にも「原作を読んでいなくても、分かりやすい内容にしよう」と賛同していただけて、総監修としてストーリー構築やデザイン設定をしてくださいました。

個人的には難解なSF映画よりも『マッドマックス』シリーズや『スター・ウォーズ』シリーズのような、国を超えて気軽に楽しめるけど、その世界を深く探求することもできるような作品が好きなんです。本編中に、原作ファンにしかわからないようなセリフやシーンを入れ、ニヤリとしてしまう場面を仕込んだり、一方では、サブキャラクターに主人公たちに向かって「何を言っているのか、全然わかんねぇ」というセリフを言わせていて、これは漫画もふくめ『BLAME!』初体験の視聴者に「登場キャラクターでさえも分かってないんだから、あなたも分からなくても大丈夫ですよ」というメッセージを込めました。

小説やグッズなども多く発売され、映画のリリースによって『BLAME!』というコンテンツの世界は確実に広がりました。また、日本では小規模公開にも関わらず、興行収入は、我々の見込みを上回る結果となり、嬉しく思っております。Netflixの配信の影響が、劇場動員に吉と出るか凶と出るか賭けでしたが、ほっとしています。『BLAME!』のリブートは成功できたかなと感じています。

 

 

――気軽に見られるNetflix ∞ 劇場でしか味わえない最上級の体験と、明確な差別化が効きましたね。

Netflixは圧倒的に手軽に見られる優位性がありますよね。じゃあ、映画館に行く付加価値をどう強化するのかということになります。そこで「体感できる映画」をキーワードに、いくつか仕込みをしました。
特に音響はこだわりました。各館のシステムにあわせ、5.1ch、7.1Ch、低音を強化した7.1ch爆音ミックス、日本のアニメとして初採用となったドルビー・アトモスの4種類の音響を用意しました。音響システムについては、家庭で揃えることも、爆音で視聴することもハードルが高いですから。

また、ファンに劇場にも足を運んでもらえるように、弐瓶先生と一緒に1/35フィギュアを制作し、先着のプレゼントを実施しました。小さいフィギュアですが、苦労して作った甲斐あって、ファンからの評判も上々でした。本編だけでなく、こうした施策も劇場にいく動機づけにできたと思います。

 

ワンランク上のCGアニメを作る!元ジブリのスタッフからソフトウェアの開発まで

BLAME!キャプチャー

『BLAME!』(http://www.blame.jp) ©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 

――クリエイティブサイドのお話も聞かせてください。ポリゴン・ピクチュアズで手掛けられた、同じく弐瓶勉原作の『シドニアの騎士』のアニメ化が話題となりましたが、瀬下寛之監督や元ジブリの田中直哉氏・片塰満則氏など、『BLAME!』も同チームが携わっています。スタッフィングについて教えてください。

瀬下監督は元スクウェアで『ファイナルファンタジー』などのゲームの設定やデザイン制作に深く携わっていました。瀬下さんは、原作を大切にしつつも、ギリシャ神話などを参考にした王道のストーリーを考えるのが得意です。彼が当社に入った時に連れてきてくれたのが、本作のPDでもある田中さん(元スタジオジブリ、『もののけ姫』の美術監督)、本作DOP片塰さん(元スタジオジブリ、『千と千尋の神隠し』のデジタル作画監督)の2人なんです。この3人の知識量は半端ないし、世界観設定やデザインのモチーフに対するこだわりももの凄い。彼らが集まって試行錯誤することで、知識に裏付けされた世界設定がきめ細やかになっていく。この細かな設定が映像に説得力を持たせるんです。「説得力のある細やかな設定の上で展開される、共感できる王道のストーリー」がグローバルにアピールできるアニメーションに繋がると信じています。

 

――そういった才能を集結させるためには、やはりヘッドハントが基本なのですか?

そういった限られたルートだけでなく、当社は広くから、人材を募集しています。現在もプロデューサー、CGディレクター等を積極的に採用しています。ご興味ある方はぜひご連絡いただければと思います。

若い人が就職先としてエンタメ業界を本気で目指すなら、ゴールに向かって色んなルートを調べて実行すべきだと思います。もし学生であれば、新卒採用は狭き門なので、バイトから業界に潜り込んでみるという手もあります。バイトからそのまま就職して重要な役職に上り詰めた人々も身近にいます。知恵を絞って動く。業界に入ることができたのであれば、一つひとつ知見を自分のものにしていくことを心がけるべきだと思います。当たり前のことかもしれませんが、当たり前を確実にやっていくことが大切だと感じています。

 

BLAME!キャプチャー

『BLAME!』(http://www.blame.jp) ©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 

――maneki < http://maneki.sh>が『BLAME!』のコアテクノロジーとして紹介されていますが、どのようなソフトウェアなのですか?

manekiはポリゴン・ピクチュアズの子会社であるJ CUBE社が、片塰さんと協議しながら開発したものです。きっかけは、アニメ作品の宣伝用ポスターデザインでした。一般的にポスター用のデザインは映像本編の絵に手描きで陰影などのタッチを足して、「お化粧」することが多いんです。

「このポスターレベルのクオリティの絵が本編でも動いたらすごいだろう」という監督陣の仮説から開発に繫がっていきました。特徴は、これまでキャラクターに対して一カ所からしか当てられなかった光が、同時にいくつもあてられる点です。それによって陰影の表現が格段に向上しました。『シドニアの騎士』、『亜人』といった当社作品より『BLAME!』の映像の情報量が圧倒的に多いのはこのツールの貢献が大きいです。CG=「コンピュータを使ったグラフィックス」ですから、コンピュータの進化にあわせて表現も進化しないと視聴者だけでなく我々も面白くないですから。

他にも、自社開発したPinocoという、プリプロダクション管理を効率的におこなうデータベースシステムを制作現場に本格導入しました。こうしたツールで効率化出来るところはして、その時間を付加価値の高い作業にまわすためのものですね。

 

BLAME!キャプチャー

『BLAME!』(http://www.blame.jp) ©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 

――全世界に向けてつくる時、「日本らしい3DCG映画」ということは意識しましたか?

日本は、週刊、月刊で発売されるコミック雑誌は、男性向け、女性向け、少年向け、少女向けなど細分化されて毎月1,500万部以上が発行されています。TV向けの2Dアニメは3カ月毎に新作が50作品くらいリリースされています。こんなアニメ・コミックが老若男女問わずに支持され、創作されている国はない。

我々は日本にオフィスを構え、こうした文化に常に触れられているわけですから、ピクサーのようなCG作品を目指すよりも、日本の文化である、コミックや2Dアニメの表現や創作性を活かしたCGを研究したほうがグローバル市場で個性が光ると思っています。スタジオとして他のスタジオにできないCGの制作力・表現開発力は必須だと考えます。

 

――そうしたセルルックCGアニメーションの競争力、つまり制作費ではどうですか?

制作面の競争力も高いです。『BLAME!』の制作費で言うと、ハリウッド・メイドのCGアニメ映画の3~5%くらいのコストで完成しています。あとは、市場の成長が、NetflixやAmazonなどを通じて、「日本の大人向けアニメ」が世界的にどこまで広がるかが、こうしたジャンルが発展するかのポイントですね。

 

――今後ポリゴン・ピクチュアズが目指すプロダクションの姿とは?

『シドニアの騎士』『亜人』などNetflixで全世界に配信され好評なので、シリーズ作品を今後も作ってほしいという依頼が多いですね。ですが、『BLAME!』をリリースしてわかったのですが、制作スタジオとしては映画のほうがアップサイドもとれ、1分あたりの制作コストもTVアニメとそれほど大きくは変わりませんでした。しかもシリーズに比べ、尺が短いので早く完成できる。今回、映画ビジネスのノウハウが積めたので、徐々に映画の制作割合を増やしていきたいと思っています。

 

どちらにしてもポリゴン・ピクチュアズの個性が発揮出来る映像をリリースしていきたいですね。この秋には、劇場アニメ『GODZILLA』3部作の公開が控えています。鋭意制作中ですのでご期待ください!

 


 

劇場で見逃した人、Netflixの見れない人はBlu-rayで! 世界が震撼したハイスペックなフルデジタル映像が収録された『BLAME!』Blu-ray、11月1日発売!

 

『BLAME!』Blu-ray <http://www.blame.jp/goods/bluray.php>
【初回限定版】 発売日:2017年11月1日(水)|価格:9,800円(税込10,584円)

音響は5.1chサラウンドに加え、日本アニメのブルーレイディスクとしては初となる音響監督自らが再度調音した超高音質“東亜重音”仕様の“ドルビーアトモス"を採用!さらに、初回限定版では、ここでしか手に入らない超豪華特典も満載!

 

・監督&プロデューサー陣による本編オーディオコメンタリー

・貴重なメイキング映像、設定資料類を収録した特典DISC付

・原作・総監修の弐瓶勉による描き下ろしコミックス・劇場版『BLAME!』後日譚

・1/35スケールフィギュア全5種【彩色仕様完全版】(霧亥、シボ、サナカン、セーフガード2種)

・縮刷パンフレット

 

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