キャリアをデザインしすぎるな

本コラムは名前のとおり『キャリアデザインのススメ』をするのが主旨ですが、今回は「キャリアをデザインしすぎるな」というお話です。なんだか反逆 児みたいですが、物事はその対極を知ってこそ本質が見えてくるもの、というもっともらしい理屈でもつけて話を前に進めましょう。

“アクション”あってのキャリア

これまでのコラムで再三取り上げてきたとおり、キャリアをデザインするのはとても大切なこと。ただ、考えたら考えた分だけ良いキャリアを築けるのかといったら、そうでもないのは察しがつくと思います。

例えば四六時中「俺のキャリアはこれでいいのだろうか」と考え続けている友だちがいたら、「素晴らしい!」っていうより「おい、おまえ大丈夫か?」と声をかけたくなりますよね。

構想を練りに練って緻密なプランを立てても、それだけで疲れてしまったり、過剰な計画に萎縮してアクションが伴わなければ本末転倒。“デザインあってもキャリアなし”では意味がありません。

見えるものしかデザインできない

また、私たちは「今の自分が想定しうる範囲内でしかキャリアを描くことができない」という制約をもっています。「○○ができるようになりたい」と思えるのは、○○の存在やその価値を知っていて、自分は○○ができないことを知っているから。こういった認識と自覚をもたないかぎり、私たちはそれを自分のキャリアプランに組み込むことができません。

望むと望まざるとに関わらず、私たちはいろいろな経験をして、視野を広げ、より高いところやこれまでと違う世界を知っていきますよね。何十年というその過程では、自分の志向も変わるし、時代の要請も変化する。その間中、ある時点で立てた自分のキャリアプランにがんじがらめにされていると、多かれ少なかれ後々無理が生じてくるのは当然です。

やってみないとつかめないもの

実際、やっているうちに見えてくるものってたくさんありますよね。何か作っている最中もいろいろな発見があって、あれこれ削ったり加えたり方向転換 したり。そうして最終的に仕上がった作品が、当初想定していた通りのものではないけど、より良いものに仕上がったという経験は、何度となくあると思いま す。それは制作に着手する前にどんなに時間をかけて構想を練っても、思い描けなかった完成図ではないでしょうか。

ものづくりに限らず、ブログを書いているときでも、友だちとしゃべっているときでも、その途中途中で視界が開けてきて、書き始めや話し始めには想定していなかったところに話が及んでいた、ということは日常的にあると思います。

キャリアも同じ。想定外の仕事を任されて、苦手だと思っていたのに思いのほかできたとか、興味ないと思っていたのにやってみたら面白かったとか、逆にやっぱり前の仕事こそやりたい仕事だと気づいたって経験はありませんか。

正・負の感情を問わず、こういった感情はアクションを起こしてこそ得られたもので、自分のこの先のキャリアを方向づける貴重な発見ですよね。「実際やってみて、こう思った」ものほど頼れる判断軸もありません。

完ぺきなキャリアデザインなど不遜

自分にはまだ見えていない世界があるとか、長い人生では想定外のことが起こることを前提にすると、完璧なキャリアデザインなど不遜だという結論に至ります。こうした背景から、キャリア理論の世界では「キャリアをデザインしすぎるな」という考え方が、今や定説になっているといっても差し支えないと思います。

金井壽宏氏の著書『働くひとのためのキャリアデザイン』(PHP新書)では、

  • 節目さえデザインしていれば、それ以外のときは、ドリフトしていい
  • いいものに出会い、偶然を生かすには、むしろすべてをデザインしきらないほうがいい
  • 節目では、おおまかでもいいから、この方向で行くというのをしっかり選んでいてこそ、その後は、ドリフトしても偶然が微笑む

として、キャリアデザインと対をなす「キャリアドリフト」の重要性を分かりやすく論じています(ドリフトとは“流されること、漂うもの”といった意味)。

働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)
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節目だけはキャリアをデザインする

金井氏もあくまで「節目だけはキャリアをデザインする」が第一命題と強調します。何の方向性ももたず、ただ流れに身を任せて漂っているだけでは、まずどこにもスタートが切れません。しかし、大枠の方向性をもって歩き出したら、その道々で想定外のことからも吸収できるものを柔軟にキャッチアップして、自分のキャリアを見直していくほうがきっと有意義です。

最後に、同著作の中で紹介されていた名言をご紹介。心理学者であり哲学者でもあったウィリアム・ジェームズの言葉。個人的にこういう“おっちゃん発言”って結構好きなんですよね。

「人生が生き抜くに値するかどうかは、生きてみないとわからない」
ウィリアム・ジェームズ(William James、1842〜1910)

(デジタルスケープ キャリアカウンセラー 林真理子)

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