まったく新しい読書体験を創出するユーザーインターフェイス シャープ株式会社 社員インタビュー 2回目

まったく新しい読書体験を創出するユーザーインターフェイス

まったく新しい読書体験を創出するユーザーインターフェイス


左)飯田勝博氏、、右)雑誌一覧画面、新聞閲覧画面、横位置での見開き表示

 

── 本体形状の検討が最終案に進んだ頃、並行してインターフェイスデザインの開発も佳境を迎えていた。とりわけ今回のプロジェクトでは、ユーザーにまったく新しい読書体験を与えるために、IDとUIの整合性が必須課題でもあった。

太田氏「最初にしたことは仕様ができたタイミングで画面デザインを起こし、それを共有することで連携を図り、整合性を高めることでした。そして、まず大切なのはコンセプトなので、開発チームの考えをコンセプトシートとしてまとめることから始めました。一方で、今回は最初に’インターフェイスデザイン、エクスペリエンスデザインとはどういうものなのか’図式化して、開発関係者のみなさんに分かってもらえるように示しました。
製品のデザインが単なる色や形だけを対象とするのではなく、グラフィックやシステムをも対象としたインターフェイスデザインへと広がり、90年代以降はユーザーの経験までをもデザインしようというエクスペリエンスデザインが主流になってきたことの確認と、今回やるべき開発の認識を共有できるようにしました」

── ターゲットユーザーとシーンイメージの確定も必要だった。先述のトラックボールや液晶画面の大きさといった議論に直接関わるポイントにもなるからだ。 実際に作成した資料では12種類の使用シーンを設定し、いわゆるシナリオの簡易版を提示した。また、UIトレンド調査も実施。市場のあらゆる商品を検証し、ピックアップしたトレンドを六つにまとめ、デザインコンセプトにあてはめて考えてみた。こうした絞り込みとさまざまな検討を重ねて、最終的に「知的感動インターフェイス」というコンセプトを固め、具体的な指針としてキーファクターを設定した。


左)通勤電車での使いやすさもUIからの回答が求められた主要なシーンだ、右)飯田氏

 

太田氏 「読書体験は知の追求であるので、知的な体験であり洗練された場でなければならない、と提議していきました。 キーファクターとして挙げた中では、たとえば、上方向にずらせば上に進む、顔に指をあてるとピントが合ってシャッターが押される、といった “自然な動作やふるまい”になる操作を主張しています。階層構造をあまり感じさせないようなシームレスなつながりといったことも。これらを自分たちなりに噛み砕いて導き出したのが、『知的感動インターフェイス』です」

── コンセプトを具現化するために、これらのキーファクターを重視した。電子書籍として美的様式を継承する、といった方向性も強まった。

太田氏 「紙に印刷された書籍には、余白や行間に空気感が生まれるのだと感じていたので、紙媒体の美しさを継承しつつ、それでいて、紙のベタな存在感はなくしていこうという、一見矛盾する考えもここではっきりさせていきました。あくまで表現の問題ですが、書籍の様式は大切にしつつ、木の本棚や革張りの書籍のイメージとは違うところを目指しました。 さらに重視したのが、『調律された操作感』です。デザイナーが関与してきっちりと整えられた操作性を提供しよう、と。他にも利用状況に即したコンテクストベースの機能提供を図るなど、デザイン性と機能性が非常に高いレベルで両立されているものを目指しました」

── 単なるブックビューアー機能から脱却し、ひねりを利かせた“シャープらしさ”を求めた。こういった狙いはUIだけにとどめず、IDの方向性とも重なるように進めていった。
また、カラープランは、実際に画面に落とし込むときの可能性を三つのプランから考察した。黒とグレーをバランスよく配置した落ち着きのある画面を想定し、テーマカラーには、ペールグリーン、アンバーオレンジ、エモーショナルレッドを候補に絞って画面展開をはじめた。技術的な仕様が確立された後は、いくつかのキー画面を抜き出してデザインを進め、試行錯誤を繰り返し、最終的に黒とグレーをベースに、選択色はブルーグリーンというデザインに落ち着いた。


左)10.8インチのデスク画面、中)5.5インチのデスク画面、右)デスク画面検討初期イメージ

 

太田氏「UIの視点では、デスク画面が最も力を入れた部分で、シャープが展開する新しいビジネスを体現する必要がありました。このデスクは単なる書籍リストではなくサービスの入口として設定されています。ユーザーはここで電子書籍を購入したり、各種サービスを受けることができ、そのサービスに形を与えてデザインしたものが、このデスクです。デザインメタファーとして身近なものを使おうということにこだわり、回転本棚のイメージを用いています。木製の本棚をそのままデザインするということではなく、属性の異なる四つの棚を回転させて切り替え、定期購読の棚ではバックナンバーを格納できるマガジンラックをモチーフとし動きを作っていきました。 こうしたプランを技術者に伝える際は、すべて動画で提出しています。本棚のなめらかな動きなどは口で説明するよりも、直感的に伝わると思っています。操作感の演出部分など、当初は私の個人的なこだわりだと言われていましたが(笑)、例えば回転式本棚がなめらかに動くことによる喜びや楽しさを、技術側とチューニングしながら実現できたと思っています」

飯田氏「UIは大阪、IDは東京、と拠点が離れているので、テレビ会議形式での打ち合わせが基本となりますが、デザインモデルが出来たときなど重要なタイミングでは一カ所に集まることもよくありました。 端末は進化に従って画面が大きくなってきています。一方で、外観はデザインできる領域が縮小しているのが現状です。だから逆にUIデザインが外観デザインと同じ以上に重要になっているとも考えられます。今後は、外観ができてからUIを入れるのではなくて、UIを作ってから外観を発想したらどういうふうになるか、というアプローチが重要になってくるのではないでしょうか。UIとIDの境界線をなくしたデザインが、次のアプローチとして大事だと実感しています」

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