S660 軽自動車の先入観を打破し、走る喜びをデザインで表現 Honda インタビュー 3回目

軽自動車の先入観を打破し、走る喜びをデザインで表現

“ヘリテージ”と“先進性”の両立

S660のカラーマテリアルデザインを担当した落合愛弓氏は、カラーデザインの仕事について、「車の世界観を生み出すことから始まる」と話す。

稲森 裕起

落合 愛弓 おちあい あゆみ
デザイン室 3スタジオ
2009年入社。EV-STER、S660 CONCEPT、S660のカラーマテリアルデザインを担当。NSX CONCEPT、Honda Crosstour MMC、Acura RLX FMCといったプレミアムカーやスポーツカーを中心に手がける。

カラーデザインコンセプト「SUPER CONTRAST COLOR」

カラーデザインコンセプト「SUPER CONTRAST COLOR」

エクステリアカラーデザイン開発記録

エクステリアカラーデザイン開発記録

落合:デザイナーがスケッチを描き、モデラーが造形するように、カラーデザイナーは色と素材で車の世界観を表現し、イメージをまとめあげる役割を担っていると思います。今回のプロジェクトでは、先進的なブランドイメージを牽引するホンダらしさと、同時に、リアルに楽しめるスポーツカーをつくりあげることを念頭において進めました。まず根底にあったのは、ホンダに長年愛情をもってくださるユーザーに納得してもらえるようなカラー展開をしたい、という気持ちです。そこに加えて、今回のチームは若手が中心になり、「自分たちの表現したい“ホンダ”をやろう」という意識があったので、次世代に向けてのアプローチを意識したチャレンジングなカラー展開を考えてきました。

カラーデザインのコンセプトは「SUPER CONTRAST COLOR」。色のコントラストを意味するだけでなく、ホンダのヘリテージとチャレンジ精神の両者をカラーで表現している。

落合:エクステリアの訴求色は「プレミアムスターホワイトパール」です。EV-STERのときから方向性を変えずに、実際にはショーモデルのイメージを守りながらリファインしました。そしてインテリアでは、スポーツカーらしい黒い内装をきちんと仕立てることを基本とし、左右アシンメトリーなカラーコーディネートによって、スーパーコックピットインテリアのコンセプトを踏襲しています。

エクステリアカラーの開発は、EV-STERまで遡る。その頃、落合氏自身はホンダの歴史にとらわれず、全く新しいアイキャッチになる色が必要だと思っていたが、スポーツカーらしい美しさが形になるにつれ、考え方が次第に変わってきたと言う。

落合:やはりソリッドの黄色と赤は、スポーツカーらしさの表現には欠かせないと考えています。特に黄色については、いわゆるスポーツカーやスーパーカーとして誰もが思い浮かべる車種について、実車を集めてずらりと並べて議論を重ねたりもしました。最終的に名称はビートと同じ「カーニバルイエロー」になりましたが、色はS660のためにリファインをかけています。車体は小型ですが凝縮されたデザインなので、色が軽くなりすぎないように、黄色の濃度が感じられるベストマッチなところに落とし込みました。

青は、キャラクターと新しさを表現できる色域。ファッション性も高く、若々しいイメージからインスピレーションを受けて、絵具を絞り出したときの鮮やかさを保ちつつ、光が当たった瞬間の輝きを封じ込めた。

落合:コンセプトモデルのエクステリアカラーだったホワイトは、量産開発でも重要な位置づけでした。オープンカーだからこそ感じられる、まぶしい光や爽快な風をエクステリアカラーに落とし込みたいと思い、白く美しい光をまとったような、翳りのない白を実現しています。

チーム内で想いをぶつけ合いながら完成度を高める

インテリアカラーデザイン開発記録

インテリアカラーデザイン開発記録

インテリアカラーのコンセプトは、「OPEN! YOUR MIND」。マインドを駆り立てる素材を厳しく選び抜いている。

落合:軽自動車としてではなく、スポーツカーとして、必要な素材と精度の高い仕立てにしたいと考えました。最初はコストの制約が厳しかったのですが、デザインや設計担当、みんなで議論を重ね知恵を出し合い、スポーツカーとして満足する材料のあしらいにしよう、と決めた方向性でした。

たとえば、ステアリングはインテリアの印象を決定づける重要なアイテム。ステッチには「ユーロステッチ」と呼ばれる、高級車だけに使われてきた手法を採用した。最終的な内装はグレード違いによってαとβの2種類になったが、質に上下を設けるのではなく、使う素材によってコーディネートを効果的に違えている。

カラーバリエーション

カラーバリエーション

本田技術研究所 四輪R&Dセンター 杉浦良氏 稲森裕起氏 落合愛弓氏)

落合:造形と素材を分けて考えるのは、そもそも矛盾があると思っています。デザインのカテゴリーでは分かれていますが、形の設定と色や素材を一緒に考えていかないと、ちぐはぐなものになってしまいます。アンマッチにならないように、全体で見る視点を心がけています。

エクステリアデザインを担当した杉浦氏は、色の説得力を再評価したと振り返る。「S660が公道を走っているのを見たとき、色によってこれほどにも表情が違う車になるのかと、改めて気付かされました。深く、多方向のベクトルを持つ新しい軽自動車が完成できたと思っています」(杉浦氏)。

落合:車の開発は、さまざまな立場の人の想いがぶつかり合い、ひとつになった末に、自分の表現を超えたものになるところがおもしろいと感じています。それぞれがこだわりを主張しながらも、お互いを理解し合って良いものを作り上げる雰囲気がありました。

開発チームが一体となり、互いの考えをぶつけあい、共有する姿勢が作り上げたS660。ホンダの新たなヘリテージになる、次世代スポーツカーの誕生だ。


取材協力:

本田技術研究所
http://www.honda.co.jp/RandD/

S660│Honda
http://www.honda.co.jp/S660/

Honda Design
http://www.honda.co.jp/design/


インタビュー:高橋美礼 撮影:森口鉄郎

トップへ戻る

マイページログイン

Web・ゲーム・映像業界専門の求人・転職・派遣ならイマジカデジタルスケープに登録する