お客様とともに創る「ヒューマンインターフェースデザイン」 富士ゼロックス株式会社 インタビュー 1回目

複合機などのオフィスプロダクトを中心に先進的デザインを追求しつづける富士ゼロックス。時代とともに進化し、近年は中国市場にも目を向けた商品開発に取り組んでいる。
ヒューマンインターフェイスデザイン開発部の木暮毅夫氏、高木友史氏、松尾俊彦氏に、デザインフィロソフィーから最新機種まで幅広く話をうかがった。

すべてのユーザーにとって、わかりやすく

木暮毅夫 こぐれ たかお
1984年入社。富士ゼロックス初のデジタル複合機のプロダクトデザインを担当。その後、原価管理部門にて、モノ作り技術、調達、生産開発の視点から総製造原価改善に8年間取り組み、活動をリーディングし総原価改善の礎を築く。2009年10月からデザイン部門に復帰し現職。

富士ゼロックスが掲げているデザイン方針は、オフィス複合機の役割や利用シーンがどれほど変化しても揺るぎない思想によって裏付けられている。「我々のデザインの原点は常に、すべてのユーザーがより自然でわかりやすく、快適に目的を達成するための作業環境を提供すること」と語るのは、ヒューマンインターフェイスデザイン開発部の木暮毅夫氏だ。

遡れば1973年、米国ゼロックスのバロアルト研究所から「Alto(アルト)」という歴史的コンピュータが誕生した。今では当たり前に感じるゴミ箱フォルダなどアイコンを使ったグラフィカルインターフェイスを実現し、それまで「計算機」だったコンピュータを誰でも使える身近なツールに変えた革新的なコンピュータだ。ここで確立されたオブジェクト指向による使いやすいインターフェイスデザインの原点は、今も揺るぎない。

木暮:これまでに「標準化」や「一般的なデザイン」を考えた時期もありますが、現在は「多様化」に対応する必要性を感じています。例えば日本と中国で何が違うのか、というようにグローバルな世界を視野に入れ、デザインの対象を広げていき、デザイナーである自分たちがまず現状の理解を深めなければなりません。そして、お客様が要望すること、さらにその先にあるまだ気づいていない新たなニーズを探し出すことからデザインが関わるべきだと考えています。

そのためデザイナーは、自らが実践的ユーザビリティ評価を繰り返し、より良い表現を導き出している。検証項目や基準など評価方法にまでデザイナーが踏み込む姿勢は珍しい。

木暮:観察や実験方法についても我々から率先して関わるようにしています。複合機が使用されるオフィスとは違う市場にも目を向け、人の作法や操作感の変化にも敏感でありたいと思っています。最近ではスマートフォンの普及により、スワイプなどが当たり前の操作感覚となってきました。ユーザーの変化をいち早く察するアンテナが、デザイナーに求められているでしょう。

左写真:オフィス向けフルカラーデジタル複合機
右写真:9インチの大型操作パネルにアイコンのメニューで直感的に操作ができる

デザイナー同士がクロスオーバーしながら追求する新価値

富士ゼロックスでは、取り扱う全製品のハード、ソフト、そして外観デザイン、ユーザビリティまで包括するデザイン部署を、ヒューマンインターフェイスデザイン開発部と呼ぶ。デザイン機能としては、ユーザーインターフェイス、インダストリアルデザイン、グラフィックデザインの3つに分けられるが、いずれもユーザビリティデザインの上に成り立っている。事業ごとにデザイン部署が分かれるのではなく、対象は全商品。商品開発全体に携わる中で、検証実験の仕方から組み立て、観察、実験を繰り返しながら、全体に関わる役割を担っている。

「DocuWorks トレイオプション」のトレイアイコンを見れば、誰が仕事を溜めているのかが一目瞭然。このトレイを介して電子データの受け渡しができる

「ユーザーとのコミュニケーション、各専門メンバーのアイデアに触発されながら、チームで一緒にひとつの製品を作り上げていきます」

木暮:メーカーが「新機種を作ったので使ってください」ではなく、「こういうものを考えていますがどうでしょうか」と問いかけることで、ユーザーであるお客様とのコミュニケーションが生まれ、新しい視点から考え方を絞り込むきっかけにもなります。お客様と一緒に作るということが大切です。

この考え方はソフトウェアの開発にも生かされ、電子データを紙のように扱うことができる「DocuWorks(ドキュワークス)」、電子データを紙のように受け渡すことができる「DocuWorks トレイオプション」というソフトウェア商品につながった。

木暮:お客様はこのDocuWorksの中にある「トレイ」アイコンで電子データの受け渡しや仕事の状況の確認をおこないます。お客様のオフィスを訪問し、お客様のお仕事を観察する中で、「単に紙を電子化するだけでは、仕事の流れがわからなくなってしまう」という気づきから、紙のように一目でユーザー同士の仕事量や進行状況が見える「トレイガジェット」を発案しました。実現に向けて細部は設計とともに詰めていきますが、デザイナーからの提案はデザインだけに留まらず、機能やソリューションにも及びます。

商品の外観だけでなく、操作パネルのグラフィカルインターフェイスだけでもない。新しい機能や価値を生み出すために、人を中心に捉えるのが、ヒューマンインターフェイスデザイン開発部という名称に込められた使命だ。

木暮:各々、別の機種を担当するというよりも、各専門メンバーが一緒になってひとつの製品を担当し、お互いのアイデアに触発されながら進めていく。ユーザーインターフェイスを担当するデザイナーと、外観を担当、ユーザビリティを担当するデザイナーが同じチームの中にいることになります。お互い、専門性を飛び越えて話ができるのが特徴ですね。

専門性を維持しながら、クロスオーバーできる環境でディスカッションを深め、チームで力を発揮するのが富士ゼロックスのデザイン部署だ。

(次回の更新日は2月19日です)

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