中島信也×伊藤直樹×朴正義×齋藤精一×猪子寿之がクリエイティブの“教育”を語る座談会

(左から)中島信也氏、伊藤直樹氏、朴正義氏、齋藤精一氏、猪子寿之

 

アメリカの小学校でiPadを使った簡単なプログラミング授業が始まるなど、デジタルデバイスやプログラミングの環境が我々の手元に降りてきた現在。そんな中、日本でも企業でありながら積極的に人材育成に取り組む姿を見かける。例えば、PARTYバスキュールライゾマティクスチームラボ。しかも、これらの企業には多くの共通項がある。デジタルやインターネットに軸を置くクリエイティブ企業、グローバルな展開、広告やアートといった垣根を軽々と越えた活動内容、などなど。

そこで、今、最も新しいクリエイティブに挑戦し続ける伊藤直樹氏(PARTY)、朴正義氏(バスキュール)、齋藤精一氏(ライゾマティクス)、猪子寿之氏(チームラボ)と、各社代表をお招きし、なぜ学校やワークショップを積極的に開くのか、彼らが今求める人材とは、そして若者は何を求めているのかについて、クリエイティブ界の校長先生的存在の中島信也氏(東北新社)をモデレーターに座談会を開催。その模様をお届けしよう!

それぞれの教育的取り組みとその理由

中島信也(以下、中島):みなさん、クリエイティブ・ラボだったりプロダクションという企業でありながら、人材育成といった“教育”に積極的に取り組んでいらっしゃる。まず、バスキュールさんとPARTYさんは「BAPA」という学校を始められた。

 

朴正義(以下、朴):もうすぐ卒業式を迎えます。

 

中島:チームラボは「チームラボ オンラインスキルアップ」なるものをやってらっしゃって、ライゾマティクスは「skills」っていうワークショップをやっている。みんながこういうことを一斉にやり始めたっていう現象は、ヤングな人々、たぶん美大、工科大、専門学校からやってきた子たちに対して、「このままじゃあかんちゃうか?」っていう不満というか、既存の育ち方に対して、ある種のトライアルやと思うんですよ。

そこで、業界の最先端を行かれている会社の面々が「“欲しがる人達の姿”って何なのか」「どうしたらそうなっていけるのか」っていうところを聞いていきたいな。僕はね、コマーシャル制作、広告という大きな産業の中に組み込まれてきた、伝統的な業態にいるんですが、でも今の時代、それではあかんことがいっぱい出てきてるわけですよね。まずは、「BAPA」はなんで始めたんですか? デジタルとかインターネットとかでバリバリ活躍している企業が。

 


BAPAバスキュールとPARTYがはじめた次世代型クリエイターのための学校「Both Art and Programming Academy」、略して「BAPA(バパ)」。ひとりの人間がデザインとプログラミングを両方出来るとしたら、表現の可能性はもっと広がるはず。そんな天才を育てたい、という想いを抱いている。2014年7月26日(土)、27日(日)には、「BAPA」の第1期生による卒業制作展を渋谷ヒカリエ8階コートにて開催(入場無料)。

 

朴:きっかけは、伊藤さんと飲んだ時に話が出てっていうのがあるんですけど。テキストで教えて育つものじゃなくて、きっかけや出会いの方がモノづくりに大きく影響したりするものだと思うんです。PARTYさんと一緒にやることで自分たちもより盛り上がるし、その勢いがそのまま若い人たちにも伝えらればと。結局は育つ環境を作る試みですね。何かが起こりやすくする場所という感じです、BAPAは。

 

中島:実験の場を作る感じですね。

 

猪子寿之(以下、猪子):生徒は何人くらいなんですか?

 

朴:30人くらいですね。100名程の応募者から書類選考して、授業料は全10回で“バパ”なので8万8,000円いただいています。やっぱり社会人が多いですね。7、8割くらい。

 

猪子:安いですね。1回は何時間くらいなんですか?

 

朴:最低3時間で、PARTYのスタジオとウチのラウンジで行ったり来たりしてやっています。

 

伊藤直樹(以下、伊藤):とにかく作品制作を第一にグループワークをしてもらっています。アイデアを考えるところから、実装してフィニッシュするまでの制作過程に合わせてカリキュラムを作っています。授業が終わった後は「BAPA Bar」っていうのをやっていて、「もうちょっとこうした方がいいよ」とか作品について個別指導を飲みながらやるんです。

 

中島:お二人とも会社をやられているわけで、そういう意味では「ええ奴おったら、捕まえようかな!」みたいなのはあるんですか?

 

伊藤&朴:もちろんあります(笑)!

 

中島:「もしご縁があったら一緒にやれるかもしれない」っていうのが大学や専門学校にはないからね。そこがやっぱり、受講者からすると狙いたいところだし、主催側もそうで、利害が一致すると思うんですよね。齋藤さんのところの「skills」はどんなワークショップなんですか?

 


skills:ライゾマティクスが数年前から開催している、プログラム方法やデバイスの制作の仕方についてレクチャーするワークショップ。現在、次回実施の準備を進めており、プログラム、デバイスだけではなく、メディアアート史やテクノロジー系広告展開などを学ぶ要素も検討中。詳細は決定次第WebやライゾマティクスのSNSで告知予定。オンライン / オフライン両方の講義を予定している。

 

齋藤精一(以下、齋藤):ライゾマティクスは“作る人”集団なので、今までの「skills」ではプログラム、デバイス、様々なツールで何を作るかといったスキルを真鍋(大度)、石橋(素)を中心に教えていました。他に、海外からアーティストらが来ると、「Flying Tokyo」っていう世界で活躍するインタラクティブ系の人達のレクチャーを酒飲みながらやるシリーズをやっています。今年は、ヒカリエとラフォーレ原宿ミュージアムで、文化庁の人材育成事業の助成金で開催しました。僕は“覚醒事業”って呼んでるんです。

一言にプログラマって言っても色々あって、実際は大企業でルーティンワークでシステム作ってるシステムエンジニア(SE)が世の中の多くを占めている。そういう人達に、例えばロボットを動かすためのプログラムを教えると、彼らはスキルを活かして全く違うことが出来るようになる。もちろん、ある程度、新技術や知識を習得したりとハードルは超えなきゃいけないんですけど。で、「skills」に参加して、最終的に彼らが独立してくれてもいいし、良い人材がいたらウチに来てほしいというのもあります。伊藤さんも僕も大学で教えてるんですけど、基本的に、大学教育が全然ダメなんですよ。

 


齋藤精一1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍後、2006年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート、コマーシャルの領域で立体、インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009~2014年国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員、2014年カンヌライオンズBranded Content and Entertainment部門審査員。

 

中島:どこの大学?

 

齋藤:東京理科大です。よくよく考えてみると、大学でやってることって就職が大前提じゃないですか。でも、今ってアーティストになるとか、フリーランスの道もあると思うんです。学生が「これだったら僕でも独立出来るかも」ってなった方が面白いし、そういうのを本当は大学がやらなきゃいけないんです。なので、僕ら企業が人材を育成して、最終的に一緒に働いたり、覚醒した人が自分で始めたりと、カタチはあれども全体のレベルアップにはなるかなと。

中島:面白いですね、それは。技は持ってるのに、何かちょっとブレイクスルー出来ない。人はある種の覚醒を求めて来ると。それは、人を育てるっていうだけじゃなく、新しい仕事のやり方にも繋がっていきますね。さて、猪子さん、みなさんの取り組みを聞いてきましたが。

 


猪子寿之ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。現在、東京都現代美術館(東京)にて人工衛星の実物大 模型に高さ19mの滝をプロジェクションマッピングする新作を発表(~8月31日)。今後、Pace Gallery(アメリカ・ニューヨーク)にて「teamLab: Ultra Subjective Space」を開催(7月17日~8月15日)。「香川ウォーターフロントフェスティバル」(香川)にて、海水を噴き上げてつくり出す巨大なウォータースクリーンにプロジェクションマッピングを実施(7月19日~8月8日)など。

 

猪子:ウチはね、ハードコア思想なので、一人で何でもやる、所謂アーティストみたいな人よりも、基礎素養を付けてきて欲しいっていう思想が 強いんです。クリエイティブなことって楽しいので、大人になって仕事をしながらでも身に付くと思っていて。基礎素養は楽しくないので、そっちは・・・。

 

中島:僕はそれが既に分かりませんもん。

 

猪子:プログラミングだったら、本当に基本的な、ハードコアな部分のスキルを上げてきて欲しいっていう思いがあって、デザインだったらデッサン力がとにかくあるってことです。そういうのって訓練なので。

 

中島:それは凄く分かりますね。僕らの映像業界が結構そうなんですよね、文章作らせたら右に出る者はいないとか。そういう人を採って、仕事の中で叩き上げていく。

 

猪子:ハードコアな技術力を持ってる凄い人っているのに全然人気がないし。

 

中島:そうなんですか?

 

猪子:基本的に、今は凄い理系離れ。

 

朴:世の中的にはそうですよね。

 

中島:僕は文系離れしてるのかと思ってた。美術大学とか、男の子が行かなくなってるから。

 

猪子:超理系離れっすよ。美大生はめちゃくちゃ人数いるんですよ。人口に対しての美大生の人数では日本は世界一で、絵の上手さも世界で断トツナンバーワンですよ。日本人ってそういう訓練をされてるんですよね、ドリル的な。逆に、理系のハードコアなところって凄い人気無いんですよ。工学部の中でも、工学系もよりメディアアートっぽい学科が人気なんですよ。

 

中島:しんどいんでしょ?

 

猪子:しんどいんですよ。僕もしんどかったですよ、学生の時。地味だし、行列計算とか面白くないじゃないですか(笑)。だから、そのプログラミングの一番コアなところが、もっと華やかになったらいいなと思って、今「CODE VS」っていうコンテストをやっています。去年の12月に3回目を迎えて。

 


CODE VS
数百人の日本中の学生プログラマが、技術を競い合うプログラミングコンテスト。

 

齋藤:あーーー! 知ってる知ってる!

 

猪子:あれ、リクルートさんと一緒に開催してて。簡単に言うと、ソフトウェア書いてもらって、ソフトウェア同士が戦うんですよ。

 

中島:「ロボコン」みたいな?

 

猪子:そう! まさに「ロボコン」のソフトウェア版。アルゴリズム作って、どっちのアルゴリズムが優秀かみたいなハードコアなコンテスト。ハードコア過ぎて今までよく分からなかったところを、例えば将棋みたいにビジュアライズして、戦ってる様子が分かるようにしてるんです。攻め入ってるとか、駒を取られたみたいな。決勝戦をニコファーレでやってニコニコで生中継してるんですけど、3万人くらいに見られてるんですよ。コメントなんて4万件くらいつく。カッコいいじゃないですか。

 

中島:それでスターになれるチャンスが。

 

猪子:一番ハードコアなプログラミングはめちゃくちゃ地味で、表と一切関係ないからさ。そこが華やかになったらいいなって。僕らが小さい頃に「ロボコン」見て、エンジニアに憧れたりしてたので。

 

中島:そんな人達が潜在的には結構いるわけね。

 

猪子:あ、でもやっぱり、そこに参加出来るくらいに技術力がある人はめちゃくちゃ少ないんですよ。でも、たぶん「ロボコン」も初めはそうで、ロボット作れる人とかって少なかったんだけど、「ロボコン」が盛り上がって、学校が取り組んだりして、底上げが進んで「ロボコン」の人口が増えた。ハードコアなところの人口が増えたり、そこがカッコいいってなったらいいなと思ってやってます。優勝者は最後スポンサー企業代表と戦うの(笑)。

 

中島:プロと戦うってことだよね。

 

猪子:そうなんですけど、若いし、気合い入ってるから、1秒で企業のプロに勝っちゃうわけ。

 

中島:そういう人をチームラボに入れていくわけ? 優秀な学生達を。

 

猪子:それが、そういう人達は外資に行っちゃうんですよね。

 


朴正義株式会社バスキュール代表取締役。1967年、東京生まれ。言語や世代を超え、多くの人に楽しんでもらえるインタラクティブコンテンツを生み出すことを目標に、2000年にバスキュールを設立。トヨタ、コカ・コーラ、ユニリーバなど数多くの企業やブランドのデジタルプロモーションを企画制作し、国内外の広告賞を多数受賞している。ここ数年は、カンヌライオンズ2014でゴールドを受賞した「BLOODY TUBE」をはじめ、マス×インタラクティブの取り組みに注力し、テレビ業界にインタラクティブの風を吹き込んでいる。

 

朴:理系というか、エンジニアは効率のいい美しさが好きなんです。バグがないとか、1行でも減らすとか。でも、そもそもクリエイティブの世界は、効率が悪いじゃないですか、パッケージ商品じゃないんで。やっぱりエンジニアリングの天才はGoogleとかAppleに行った方がいいじゃないですか、たぶんですけどね。

それに、ラーニングっていうのは、個人同士がユーザーグループ作って勝手にやってるんですよ。超切磋琢磨してるし、そのユーザーグループの中で自分が発言権を持ち、ステータスを上げることを大事にしてる。いくら僕が褒めたって「あー、なんか言ってるわ」みたいな感じになっちゃう。だから、彼らに凄いと思ってもらえる、効率を超えたプロジェクトを作らなくちゃ、優秀な才能に振り向いてもらえない。僕ら大人がそこをやっていかないといけないと思っています。

 

中島:なるほど。これはもう教育の問題というよりも、クリエイティブ界が最終的に目指すビジョンですね。若い人を育てようと思ったら、若者が目指したくなるような夢をぶち上げないとダメっていうことですね。PARTYもバスキュールもライゾマもチームラボも、理系男子がアートに触れて(※齋藤氏と猪子氏は理系卒)、アートの人達が理系に行った(※伊藤氏と朴氏は文系卒)一番イケてる人たちだと思っていたけど、意外とみんなドカチンなんだね、ベースは。

 

齋藤:プログラム言語ってどんどん簡略化されてくるし、GUIも変わる。なんですが、学生の時にオブジェクト指向とか、そういう、猪子くんが言ってるような基礎素養を付けていると変化にも対応出来る。時代もそういう方向に来てるような気がする。

 


伊藤直樹1971年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。ADK、GT、ワイデン+ケネディトウキョウ代表を経て、2011年クリエイティブラボ「PARTY」を設立。代表取締役を務め、東京とNYにオフィスを構える。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。これまでにナイキ、グーグル、ソニーなど企業のクリエイティブディレクションを手がける。“経験の記憶”をよりどころにした“身体性”や“体験”を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。カンヌフェスティバル、D&AD、ONESHOW、文化庁メディア芸術祭、ACCなど国内外の受賞歴は200を超える。また、PARTYの展覧会として世界初の3D写真館「OMOTE 3D SHASHIN KAN」や「PARTY そこにいない。展」(銀座グラフィックギャラリー)を開催。最近では、バスキュールとともにデザインとプログラミングスキルを併せ持った次世代クリエイター育成の学校「BAPA」をスタート。

 

伊藤:僕は美大で教えているんですが、8割が女の子です。今の美大はどこも女子大化してきています。そのなかで美大での理系化はトレンドなんですよね。でも、授業にはないんです。ゴリゴリのプログラムを教えたところで、90%の学生はついてこれないし。

 

中島:数学がダメだから絵を描こうってことだからね。

 

伊藤:そのとおりですね。きっと中学の数学の授業中にノートに絵を描いていたような子が多い。だから絵は本当に上手いですよ。手を動かしてものを作ることも大好きです。

それこそライゾマの真鍋くんとかに触発されて、独学でやりだすわけですよ。openFrameWorksとかArduinoとかから入って、そこそこ出来るようになってくるんですよね。そういう裏の独学みたいのが、美大の中で今起こってます。絵を描けるということはアイデアを視覚化出来るわけだから、美大生がプログラミングを覚えたら強いですよ。

 

齋藤:プログラマは独学が一番強いと思います。例えば、楽器買う金ないから手元にあるPCでプログラミングして(楽器を)作ろうとか、そういう志持ってる子の方が断トツ伸びます。

 


中島信也:東北新社取締役 / CMディレクター。1959年福岡県生まれ大阪育ちの江戸っ子。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。1983年「ナショナル換気扇」で演出デビュー。その後デジタル技術を駆使した娯楽性の高いCMで数々の賞を受賞。主な作品にカップヌードル「hungry?」(1993年カンヌ広告祭グランプリ)、サントリー「燃焼系アミノ式」(ACCグランプリ)、サントリー「伊右衛門」(ADCグランプリ)、資生堂「新しい私になって」(ADC会員賞)、NTTドコモ「渡辺謙シリーズ」、日本生命「125周年」など。2010年劇場用映画「矢島美容室the movie」を監督。武蔵野美術大学客員教授(情報デザイン学)、金沢工業大学客員教授(メディア情報学)。

 

中島:僕は息子がいるんですけど、息子は高専出て、武蔵野美術大学に編入してるんですよ。だから、そこら辺にトレンド感をひしひし感じています。「BAPA」に来る人は、自分のどこを伸ばそうと思ってきているの?

 

伊藤:独学って言いましたが、つまり大学教育では理系、文系で完全に分断していて、美大には教授陣にプログラマがいない。今、社会は本当の意味での“アート”、技術と芸術を両方学んだ学生を求めているのに。本当は学びたいのに、行き場がないからこういうところにくる。

 

猪子:あと、アイデアや絵を描ける子は、どうやったらああいうことが出来るようになるのか、プログラム出来る子はどうやったらクリエイティブなものを作れるようになるのかっていうのがあるよね。そこは別世界に見えちゃうんですよね。僕は、基礎素養派ですけど(笑)。

 

中島:最近は、クリエイティブに理系がどんどん入ってきてますよね。それまでは、映像制作にしても文系の論理で作られていた。スキルは現場で覚えて、自分の人間力を高めるしかなくて。デジタルのエンジニアと仕事することはあっても、クリエイティブの根幹の部分にテクノロジーが入るって余地はなかったんだよね。それが、テクノロジーが入り始めて、インタラクティブアートの審査員をした時「これ、もう技術無しには前に進めないや、もう俺は終わった」と思ったね。

 

朴:昔と違うのは、映像はTVのCMとして30秒とか15秒とかパッケージが決まっていて、その土俵の上で文系の人が頑張ってたと思うのですが、今は、そもそもどこで触れてもらうかという表現の場から作れる時代なので、やっぱり技術がないと出来ないんですね。「次のプラットフォームは何かな」みたいなところをみんなで探してる。

ソーシャルゲームもその過程で生まれたものだったりする。大手のソーシャルゲームの会社には、頭の良い優秀な子がたくさんいると思うのだけれど、きっと給料もたくさんもらってるので、なかなか「BAPA」には来ないんじゃないかなって思う。だから、そういう従来の枠組みのを全部突き抜ける何かを作らなきゃいけないんですよね。

 

 

中島:でもさ、美大はそういう危機感を全然持ってないよね。

 

伊藤:今、日本のどこの大学も教育改革が必要ですよね。学生は文系、理系の区別なく本当の意味での教養(リベラル・アーツ)を学ぶべきだし、工学と芸術を両方学べたほうがいい。そして課題制作で作品をバリバリ作った方がいいし。

 

齋藤:独学で言うと、理系の子たちは、最近マーケティングスキルやデザインスキルを自分たちで学んでる。文系が理系化してる逆パターン。一人完結のスタートアップの流れが出てきた。今までは主語に文系の人がいて、理系の人達がその下にいる構図だったのが変わってきてますね。

 

猪子:それは、もう全否定ですよね、我が社では(笑)。我が社では「コードが書けない奴は人に非ず」ですからね。

 

中島:今、僕はチームラボの面接落ちました(笑)。理系の子が、クリエイティブやマーケティングっていう文系ワードを学ぶ・・・プログラム書ける奴が。怖いなー。

 

猪子:そもそも、世の中、美大と理系しかいらないんですよ!

 

(一同爆笑)

今、教育の場に必要なことって?

 

中島:世の中、狭い範囲で言うと我が国なんだけどさ、素敵な世の中になっていくためにヤングたちに育っていって欲しいわけでしょ。その為に、猪子さんだと、美術と工学だけでいいってことなんだね。

猪子:世の中の教育はハードコアなところしかいらなくて。教育はドリルですよ。美大と工学部と理学部以外は全廃止ですね(笑)!現実的に言うと、大学後半の2年間は工学か美大しかいらないと思ってる。

かわいそうなんです。基礎素養が身に付いていれば、面接の練習とかしなくてもどこにでも入れるはずなのに、面接の練習とか大人と仲良くなる方法とかばっかり学んでて。

 

中島:今の世の中ってもっとハイブリッドになってるというかさ、両方やれる人も必要なんじゃないの?

 

猪子:これはみんなと違うかもしれないけど、僕らは“両方出来る必要なんかない派”で、深けりゃ深いほどいいと思ってるんです。

 

中島:でも、なんでそうやってクリエイティブな感じの活動が出来るんでしょうか。

 

猪子:僕らは、個人で完結することを全面的に否定しているので。

 

伊藤:“チームラボ”だもんね。

 

猪子:専門性がある人達が集まることで何かをアウトプットする。欠落とか大歓迎だし、専門以外のことはあんまり分かってなくてもよくて、深い方がいい、という思想ですよね。ライゾマさんはもうちょっとスター型みたいな感じするけど。

 

中島:なるほど。はっきりしてるね。

 

猪子:はい。カルトなんで(笑)。

 

――BAPAを通してPARTYさんバスキュールさんはどういう思想をお持ちですか?

 

伊藤:美大で教えていると、行き詰っている子たちがいるんですね。でも、ある子がopenFrameWorksを覚えた瞬間に、花開いて。何か一個覚えると、いきなり開花したりするんですよ。学生は道が全部開けて見えているわけじゃない。自分も学生の頃は道で迷子になってた。「どっちに進めばいいの?」って立ち尽くしてた。だから、そういう化学変化を与えていきたい。BAPAもPARTYも共通して、一つ何か違うことを覚えるだけで全然変わるよっていうね。

 

朴:とにかく何を作るのが一番カッコいいのか、常にそれを探しているというか。やったことないことをするっていうのは、コミットしないといけない。

例えば、インタラクティブな映像を作る際、映像監督と僕らのどっちがディレクションするのかとなったら、「俺がやります」ってコミット出来るかどうかが重要。結局、みんなコミットしないんですよ。凄い絵が描けても、プログラムが出来ても怖いからコミットしない。せっかくこんな時代にいるのにそこにトライしないっていうのがもったいない。各スペシャリストがそういうコミットする人間になったら、物凄いものが出来るかもしれないし、単純に見てみたいですよね。そういうトライがあるようなものにしたいんです。

でも、そういう機会って仕事をしていく上では少ない。だから、「BAPA」ではそれを作るっていうか。さっきの「CODE VS」にしても「BAPA」にしても、今の教育の一番大事なのは、そういう機会を作ることじゃないかと思うんです。

 

中島:盛り上がれる場が必要だと。

 

朴:化学反応は起こせないんですよ、一人では。

 

中島:理系離れという話もでましたが、齋藤さんはどうみてますか?

 

齋藤:今、産学連携とかあるけど、全然連携していない。理想は、産官学でちゃんと連携していくことだと思ってます。国は5年くらい前の古ぅ~いことやってるし。そうじゃなくて、例えば教育に対して前のめりになってる僕ら企業やインスティテューションに対して、ファンドの制度を整えるとか、場所を提供するとか、何でもいいんですけど、そういうことを考えてもらいたいですよね。

矢をバーッて浴びる大学教育も大事ですけど、僕らがやってる、矢を放つ教育も、今の時代必要だと思うんですね。

枠組を壊して世の中を変える!

 

伊藤:デザイン業界っていうのがあって、僕ら(PARTY)はその枠組の外にいます。デザインのある種の殿堂である銀座グラフィックギャラリーで展覧会はやらせてもらったけど、まだまだです。僕らはデザインの定義時代を押し広げないといけないし、デジタルで出来るデザインの可能性を示さないといけない。デザイン業界を乗っ取るぐらいの気持ちでやらないと、変わってかないじゃないですか。猪子くんとかは、それをやってるんでしょ、アートでさ。デジタルで、いつかはアート乗っ取るみたいなさ(笑)。

 

猪子:乗っ取りますよ。ほんと、油絵の具は混ぜると黒くなるからね(笑)。

 

中島:そうよ、最後はグレーというか黒くなるからね。

 

猪子:それがダサいと。ウチらは混ぜると白くなるんです(笑)。光源だから。「混ぜると黒くなるからダサい」って言おうと思ってて(笑)。

 

中島:結局、今にない新しい世界を作るんだっていう、世の中の変革の動きとアートとの関係が見えてないと、そういう話にならないしね。

 

猪子:アートも教育とセットだから。「こういうことを学んだ方がかっけー」みたいになるといいし、その方が面接の練習より生産的だし、その作ったもので企業から「うちに来て」って言われた方が、本当はかっけーんだけど。

 

中島:美大で「英語喋りなさい」とか言ってるんじゃなくて、徹底的に専門を掘ることだったり、専門外のちょっとした別の刺激を与えることで、そこから見えてくるものがあるよってことですよね。

 

猪子:今、知識層では、英語は学ばない方がいいんじゃないかって言われてます。何故なら、恐らく10年以内に言葉の問題は解決するから。10年後には、スマホやコンピュータのスペックは半端ないことになるんで。言語は技術で解決出来ます。

 

伊藤:非言語文化にも向かってますよね。InstagramもLINEもそうだし。ひとつの流れとしてありますよね。日本人の英語力が問われなくなったら、日本人はホント強いですよ。はっきり言って、そこだけだから弱いの。コトバ関係なければこっちも強く出れるし。イノベーション起こしまくりですよ(笑)。

 

中島:10年後くらいには治る病気ってことだね。個人的にスーパースターとして名声を得る世界はあるんだけど、そういうことではなくて、どんなにオタクでもいいからそこんとこを突き詰めた上で、色んな専門分野の人がギューッといたら、それがインテグレートされて世界を動かせるところに立てる、大企業に入るよりも大きなムーブメントになり得るってことを、ヤングたちに思っていて欲しいと思います。

そして、学歴とか、面接が上手になった果てに見えるものよりも、世界を動かせるところに行くには、全てにおいてハードコアじゃないとダメだと(笑)。

 

猪子:企業が学校をやるっていうのは、本当は結構強いメッセージだから、もうちょっと学校や国はそういうメッセージに反応した方がいいんだけどね。あんまり反応しないよね(笑)。

 

中島:僕は、美大関係者にこれをちゃんと伝えます。「全然ダメだよ。英語は10年後くらいにはもう喋れるから。やっぱ絵描かないとダメだよ。その代わりね、絵の具は混ぜると黒くなるよ」って(笑)。今日は、教育を出発点として、何か現代の問題が浮き彫りになりましたね。

 

取材・文:white-screen.jp

写真:森口鉄郎

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