「自分を生きる」ほか道なし

以前、「キャリアをデザインしすぎるな」というコラムで、節目節目のデザインが重要という話をしたのを覚えていらっしゃいますか。その節目に立ったとき十分なデザインを行うために、日頃からもっておくべき意識とは? 最終回はこの辺りについて考えてみましょう。

答えはいつも2つ以上

まず大切なのは、「答えは一つじゃない」という前提に立つこと。自分の進路を考えるとき、「今の状況で自分はどうすべきか」について唯一の答えが用 意されているケースはほとんどありません。目上の人に相談してアドバイスをもらうのも有効ですし、有識者の本から気づきを得られることもあるでしょうが、 人の答えにはそれぞれ色違いがあります。

「一般的」「王道」

「一般的」「王道」と言われる答えが、必ずしもあなたにとっての正解とは言えません。「一般的」に非現実的な選択をして、だからこそ大成した人だってごまんといるでしょうし、自分のケースがその「王道」と適合しているのかも確証を得られるものではありません。

「理論的に正しい」

「理論的に正しい」といっても、その答えは一つに限りません。日本を代表する心理学者として知られる故河 合隼雄さんは著書の中で「どんな場合でも、自分のしたことを正当づける理論は、必ずみつけることができる」と記していて、確かに!と思いました。つまり、 あらゆる分野に数多くの「○○理論」が存在する昨今では、自分が“選んだ答え”に限らず“選ばなかった答え”にも大方、その選択を正当化する理論は用意で きるというわけです。

理論というのは人が作るものなので、相反するものも存在するし、時代とともに変化もする、まだ提唱されていない新しい理論が出てくる可能性もありま す。そういう絶対的でない、固定的でないものとしてうまくつきあっていかないと、寄せ集めた理論からなる“つぎはぎの人生”になりかねません。

不安定な状況では、外部の何かしらに頼って早く答えを出したい衝動に駆られやすいものですが、まずは自分が選ぶ答えにはさまざまな選択肢があることを念頭において、答えを模索できる想像力と心の余裕をもちたいものです。

自分の答えは自分で決める、意識せずとも決めている

しかしながら、節目に立てば自分の答えを一つに絞り込まなければならないのも確か。どちらに進むのか、そのためにはどの時期にどういうやり方でどう動くべきか、そのすべてを最終決定する権利と責任が自分にある、という覚悟もまた必要です。

たとえ「選択する」決断をやり過ごしたとしても、それは自動的に「選択しないことを選択した」ことになるだけです。本人が自覚していようがいまいが、私たちは毎日何かの選択をしたり、選択しないことを選択したりしながら、その決断に自己責任を負って生きているわけです。

どんなに愚痴をこぼそうと、自分がその会社に籍をおいている以上、あなたはその会社を選び、そこで与えられた任務をまっとうする責任を負っている し、そういう選択を自分でしていることになります。ときには愚痴をこぼしてガス抜きも必要ですが、一番根っこのところでは自分が「自分でそこに身をおくこ とを選んでいる」という自覚が必要です。

そうでないと、毎日の繰り返しの中で「自分が自分のキャリアを舵取りしているのだ」という意識が抜けてしまって、自分の腑に落ちないことを誰かに責 任転嫁したり、ここぞという節目で一歩踏み出すことができなくなったり、自分のキャリアがどんどん自分のものでないように見えてきてしまいます。

ならば、とことん「自分を生きる」こと

しかし、どんなに責任転嫁しても、どんなに舵取りすることを放棄しても、自分の人生が自分から切り離れることはありませんよね。きつかわゆきおさんが108篇の一言メッセージをまとめた『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』(タイトルだけでも十分強烈ですが)の中から一つメッセージを取り上げるなら。

ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。
ここの他には何処もない。
あなたの他には誰もいない。
あなたはあなたという現場から離れることは出来ない。

きつかわゆきお『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』より

至極当然の話ですが、自分の心と体は一生「一心同体」。ならば、とことん「自分を生きる」ほか道なしと思うのです。これという正解もなく、また変化 も激しく自由が認められた社会では、たくさんの選択肢の中で自分らしい答えを考え抜いて、一つに決めて、決めたらそれをしっかりまっとうする強さが必要。 これがないとなかなか生きづらい社会ですが、あればあったでとっても実りのあるキャリアを築けるのではないでしょうか。

不確かなものを愛せよ。確かすぎるものに愛されるな。

これが、先の本の中で私が一番好きなメッセージ。この言葉を贈って、このコラムはお開きにしたいと思います。連載を通じて、私のつたない文章を読ん で何かを感じ取ってくださった方、本当にありがとうございます。皆さんが今後も自分にとって望ましいキャリアを歩んでいかれるよう、心から応援していま す。

(デジタルスケープ キャリアカウンセラー 林真理子)

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