「業界」と「職業」の未成熟さを愉しむ

そろそろ年始モードも消えて、すっかり日常生活に戻っている頃でしょうか。と言いつつ、当コラムは年明け初!ということで、今回はちょっと改まったテーマを取り上げてみたいと思います。

2007年は「偽」の年に

年末、2007年の世相を表す「今年の漢字」がニュースに取り上げられていましたが、憶えていますか?日本漢字能力検定協会が公募した結果、「偽」という漢字に決定したのだとか。産地偽装や原材料偽造、賞味期限の改ざんなど、さまざまな「偽」が社会問題になった一年でしたね。

年明けてなお、再生紙の偽装問題が出てきたりして、さまざまな業界で「一般消費者には知られていないけど、業界ではまかり通ってきた偽り」がないか、見直してみる契機にもなっているように思います。

『ビジネスマンは道徳心を失いやすい』

なぜこういうことが起こってしまうのか、さまざまな業界事情も見聞きしますが、根源的な問題が別にあるような…と思いをめぐらせていたときに、興味深い論考に出会いました。ちょっと難しそうな面構えですが、「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」2008年1月号にある、ハワード・ガードナー氏の『ビジネスマンは道徳心を失いやすい』(同誌編集長の紹介記事はこちら)。


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 01月号 [雑誌]
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2008年1月号

認知心理学の権威、ガードナー氏の指摘を、同誌はこう要約しています。

ビジネスマンは厳密には「プロフェッショナル」ではなく、したがって、職業道徳を教え込む仕組みもなければ、免許も必要でもなく、単なる職業上の選択肢の一つであるため、倫理観の高い人でも、道を踏み外しやすいと言う。

プロフェッショナルと呼ばれる職業

こうバサッと言い切られると、ビジネスマン的には反発心を抱きたくなるものですが、これと対比して、医師や法律家、建築家といった「プロフェッショナルと呼ばれる職業」を、彼はこう特徴づけています。

  • 長い歴史のなかで、その職業に従事する人々を律し、規範を破った者を罰する仕組みをつくり上げてきた
  • 長期間の訓練を経て免許をもらう
  • その職業について一般に認められた道徳的基準に従って行動しないと、その職業団体から追放される
  • たいていメンタリングの仕組みも整っており、師の下で訓練を受け、そのなかで職業倫理についても指導を受ける

「新しい業界」に身をおく職業人の宿命

こう列挙してみると、良し悪しの問題ではなく、確かに私たちはこれと対照的な「新しい=歴史の浅い業界」に身をおいていると言えるのではないでしょうか。つまり、法律を守る以外に厳格な規範や罰則もなく、大前提となる免許があるわけでもない、内外で共通化されたこれという職業倫理も道徳的規範もない業界であり、職業であると。

プロフェッショナルかどうかとか、道徳心の話に終始せず、ここではもう少し広く捉えてみましょう。歴史が浅く、いろいろな物事が確立されていない、不確定で未成熟な業界には、スキルの磨き方も、一人前としての立ち方も、20年・30年先のキャリアモデルもありません。必然的に、今ここに立っている私たち自身が、いろんなテーマについて自分なりの答えを問い続け、自分の答えを出していくことになります。

  • あなたはどこに専門性をもって、磨いて、一人前として生きていきますか
  • 自分の専門分野を、どういうやり方と手順で熟練・熟達化していきますか
  • 20年先、30年先を見据えて、自分のキャリアをどう築いていきますか
  • 窮地に立たされても守り通す、どんな職業倫理をもって仕事をしていますか
  • 誰に、どんな幸せを届ける仕事に執着していますか
  • これからどうやって若手を育てていきますか

この先一人ひとりが紡ぎだしていくその答えが集積され、活きる仕組みが築かれていくのだと思います。それを後から振り返れば、「長い歴史のなかで~」と語られる業界・職業になっていくのかもしれません。

が、一定の仕組みは作られても、常に不確定要素の多い未成熟な業界として生き続けるのかな、という気もしないでもありません。常に新しいことが求められている場とも思いますし、そういうのが好きな人がこの界隈には多く集っているような気もします。

自分にとっての「まっとうな仕事」

ガードナー氏は、「まっとうな仕事とは、質が高く、社会に資するものであり、また他者の生活を向上させ、しかも倫理を踏まえたもの」だと言います。あなたの仕事で考えたとき、目指すべきまっとうな仕事って具体的にどんなものでしょうか。

まぁそう大仰に考えなくても、今年一年どんなふうに仕事していきたいかとか、節目節目で少し目先の仕事と距離をおいて考えてみる、イメージしてみる時間をもってみるのは良いことですよ。本年もどうぞよろしくお願いします!

(デジタルスケープ キャリアカウンセラー 林真理子)

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