WHILL 人生の一部になるパーソナルモビリティ、アイデアはユーザーの視点に立つことから 3回目

WHILL 人生の一部になるパーソナルモビリティ、アイデアはユーザーの視点に立つことから

WHILL株式会社 CEO 杉江理氏

ユーザーの視点に立った商品開発

ユーザーの声の中には印象的なものが多くある。「“行ける”ところではなく“行きたい”ところに外出できる」「乗っていると、まわりの人に羨ましがられて、鼻高々です」「WHILLはもう私の人生の一部になっています」など、これまでの電動車いすの印象とは違い、まるで“相棒”のような乗り物だ。

(杉江)ほかにも、マンションに住んでいる方で、「10年ぶりに1階の新聞を取りに行けるようになった」という方がいましたね。マンションの中にもあちこちに段差があり、普通の車いすではその段差が乗り越えられなかったそうです。でもWHILLだったら乗り越えられるから、新聞を取りにいけるようになったと喜んでいただけました。首都圏で使われている方が多いですが、田舎だと1日5キロも、10キロもいろんなところへ行かれて、家族が「どこまで行っちゃったんだろう」と思うくらいたくさん使っていただいてますね。

また、オプションやアクセサリーが豊富なこともWHILLの特徴のひとつだ。後部に杖を取り付けられる杖ホルダーや、飲み物が置けるカップホルダー、荷物を入れるためのカゴなど、ユーザーが自分で選んでカスタマイズすることができる。

(杉江)ユーザーから多くのフィードバックをいただいています。なかなかすぐには実現できないことも多いですが、開発を進める上でのヒントになりますね。足が寒くなるから足元にヒーターが欲しいとか、鍵を付けてほしい、という声もあります。

iPhoneのソフトウェアと連動するリモートコントロール機能についても、ユーザーやその家族の視点に立った機能だと言える。

(杉江)動かすだけでなく、スピードもiPhoneから設定でき、高齢の方が乗るときなどにスピードを下げることが可能です。iPhoneとの連動は、ユーザーのみならず、まわりの方にも使っていただける機能なんです。今後はGPSを搭載して、ユーザーがどこに移動しているのかがわかる、そういった見守り機能も付いていきます。

車いすは乗る本人だけでなく、家族もユーザーなんです。例えば、子供が車いすに乗ることになったときに、実際に買うのお母さんや両親ですよね。購入する際に、安全性だったり、なにか良い点とがあったらいいなと思うのはたぶんお金を出す人で、それが誰かというと、ユーザー自身ではないときもあるんです。そう考えると、こういう移動体というものはまわりへの影響力が大きいんですよね。まわりに対してメリットがある機能というのは、これからもアップデートしていきたいと思います。

試乗写真

アメリカではFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)の認可を取得し、4月からマーケティングが開始されることになった。実際のユーザーからの声はこれからさらに得られるようになってくるが、海外からの評価も好評だという。

(杉江)現在も販売はしていますが、メディカルデバイス、つまり医療機器としての販売が可能になるのが6月末~7月ということになります。医療機器に認定されると、例えば患者さんに電動車いすが必要になったときに、お医者様の処方のリストの中にWHILLが入ることになり、医師が医療機器として処方することが可能になります。また、保険償還など、受けられる助成が変わってきます。そして、「車いす」と銘打ってマーケティングをしたり、関連する雑誌に報告したりすることができるようになります。今まではあくまで「パーソナルモビリティ」と呼んでいて、「車いす」とは一切言えなかったので、そういう意味で、弊社にとっては非常に大きなニュースになっています。

商品開発のアイデアの源泉

最後に、開発やデザインのことについて少し話を伺った。多くのプロジェクトを進めるにあたって重要な、アイデアの種をどうやって見逃さないようにしているかは、「情報をシェアするシステムをつくること」だという。

杉江理氏

杉江理氏

(杉江)会社内でもそうですが、自分もシェアしますし、シェアする仕組み自体を作るようにしています。そして、シェアしたことに対して意見をもらえるような場を設けるんです。これにどんなツールを使ってもいいんです。例えばWebサービスのSlack(エンジニアに特化した海外のチャットサービス)やFacebookなど、何でもいいのですが、そこで情報をシェアし、シェアされるような仕組みをつくるということが大切です。

開発を進める上で大切にしていることは「ユーザー」だと即答した杉江氏。楽しさや苦労についても語ってくれた。

(杉江)開発を進める中で楽しいことはやはり、ユーザーに乗ってもらうことですかね。ユーザーが嬉しいと言ってくれると自分も嬉しくなるし、楽しいです。苦しさは、ヒト・モノ・カネじゃないですかね、やっぱり(笑)。この3つは潤沢には用意できないので、常にバランスを見ながらやっていくのが大変だと実感します。あと、時間管理が大変ですね。起業してから最初の2年間が開発期間だったのですが、その間にやらなければならないことが山ほど出てくるので、実際に開発に使える時間が減りました。時間は誰にでも1日24時間で同じだけ与えられているので、それでもやっていくためにはオーバーワークするか、限られた中でどのように時間を使うかを考えていくしかないことになります。

最後に「デザインのチカラ」で何を変えられるかを伺った。

(杉江)大げさではなく、世界を変えられるんじゃないですかね。WHILLが普及していくと、少しずつでも社会が変わっていく可能性があります。インフラが変わらないと難しい部分もあるかもしれませんが、インフラも変えていけばいいんじゃないかと思います。

車いすへの注目が集まれば、そこから社会が変わる可能性は大いにある。まったく新しいかたちのパーソナルモビリティを実際に見て試乗し、少し先の未来が見えてきた。

WHILL
http://whill.jp


取材協力:WHILL株式会社


インタビュー:生田信一 撮影:永友啓美

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