イノベーティブな企業風土が新しいものづくりを成功へと導く-株式会社リコー インタビュー3回目

ユーザーの遊び方によって広がるRICOH THETAの可能性

初号機は、実は日本ではなく海外で発売された。ところが、発売後まもなくすると日本からも「売ってほしい」との要請があり、1か月遅れの2013年11月に日本での展開も始まった。

高田:仮説が外れましたね。RICOH THETAはよくも悪くもすべてを写してしまいます。日本人はSNSで自分が写った写真をあまりのせたがらないのではないかと予測していましたから、当初は海外を中心に展開しようと考えていたんです。ところが、売り始めてみたら日本のユーザーがとても多くて。今では、進化するにつれて海外のユーザーもかなり増えてきました。

高田将人(たかだ・まさと)

開発者の手を離れたいま、彼らも予想しなかったRICOH THETAの楽しみ方が世界中で広がっている。ユーザー自身が遊び方の新たな可能性を見つけ出しているのだ。

高田:インスタグラムでは特に、ユーザーからのおもしろい画像や動画を見ることができます。少し前に流行っていたのが、みんなで円陣を組んだ真ん中に本体を置いて、後ろに一斉にジャンプしながら撮影した画像。おもしろい数々の作品が投稿されていましたね。それから、アーティストの方が撮影した目黒川の桜も美しかった。花見客でごった返しているはずなのに人が消えたように撮影されていて、桜と目黒川しか映っていない趣のある作品になっていました。RICOH THETAの使い方を工夫すると、テクニックを要するような画像もかんたんに撮影できます。ユーザー一人ひとりがクリエイターになれるカメラなんです。

アーティストの浅倉大介さんによる、桜の時期の目黒川を「THETA 360」で撮影した作品(@daisukeasakura)

アーティストの浅倉大介さんによる、桜の時期の目黒川を「THETA 360」で撮影した作品(@daisukeasakura)
https://theta360.com/s/lcAMLdFDdV8UybVRzFyOPuuIu

佐々木:作品コンテストも積極的に開催していますが、出展される作品を見るといつも驚きの連続です。我々が新しい発見をさせてもらっている状態です(笑)。

最近では、法人向けのソリューションやRICOH THETAアプリの開発キットを提供するなど、サービス内容も充実してきている。

高田:「THETA 360.biz」というクラウドサービスの提供を開始したところ、不動産仲介業者様などに導入いただいています。360°の画像による空間の内覧が可能になるため、現地に行かずともその場にいるかのように物件を選ぶことができるんです。ほかにも、ホテルや飲食店、建築の施工実績の紹介など、さまざまなシーンやサービスに活用いただけると思っています。

おもしろいのは、研究用途で活用されている例。ウミガメの生態調査のためにウミガメにRICOH THETAを装着して、定期的に撮影を行うのに使われています。GPSもつけて、ウミガメがどこで何を食べているのか、仲間と一緒にどんな行動をしているのかなどを調査しているようです。

360°の画像による空間の内覧(ラ・トゥール新宿ガーデン)

360°の画像による空間の内覧(ラ・トゥール新宿ガーデン)

佐々木:先日のリオオリンピックでも、プロのカメラマンがRICOH THETAで撮影した動画が配信されていました。アプリも100種類以上も開発されていて、さまざまな可能性が広がっています。

リコー社員の想いがたっぷりと込められた、RICOH THETA

RICOH THETAは、リコー社員の総力を結集してつくられたといっても過言ではない。デザインコンペの例にあるようにさまざまな重要な場面でリコー社員が関与し、開発力のあるリコーのDNAが発揮されている。

佐々木:過去にもコンペの例はありましたが、先行的なデザイン提案のようなものだったため、商品化にいたったものはありません。今回のような本格的な社内コンペは、リコーはじまって以来のことでした。

ディスプレイのないコンパクトカメラが、市場に本当に受け入れられるかどうかという不安もありました。そういった不安要素は、プロトタイプの段階で社内調査を何度も繰り返すことで、一つずつクリアにする作業を丁寧に行いました。アプリも社内でユーザビリティ調査を実施したうえで、しっかりと検証して世に送り出しました。

佐々木智彦(ささき・ともひこ)

高田:リコーは元来、イノベーティブな風土のある企業です。デジタルカメラを最初に世に出したのも弊社ですし、光ディスクも同じく弊社です。新しいジャンルの製品を生み出す底力のようなものが受け継がれているのもリコーの特長ですから、そういう意味ではRICOH THETAもリコーならではの商品開発につながったと感じます。

今後は一人1台、RICOH THETAを持つような時代にしていきたい。高画質化や長時間撮影などカメラとしての性能を高めていく一方で、今盛り上がりを見せているVR(バーチャルリアリティ)の分野などに向けた新たな活用の方向性も追求していきたいと考えています。

佐々木:Facebookなどのように、RICOH THETAでできる体験が一般の人の目に触れるようなインフラが整っていくのは、私たちとしてもとても喜ばしいことです。変化する市場環境を踏まえたうえで、私たちも新しい進化をめざしていかなければいけない。市場と一緒になって盛り上げていきたいと思います。

RICOH THETA

取材・文:瀬戸川彩(Playce) 撮影:小川拓洋

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