リコーのDNAが宿った、すべてのユーザーをクリエイターにする「RICOH THETA」-株式会社リコー インタビュー 1回目

「RICOH GRシリーズ」といえば、コンパクトデジタルカメラ市場を牽引し、多くのカメラ愛好者が求めた一台。2013年、そのGRを生んだリコーが、誰でも簡単にワンショットだけで“360°すべての空間を収めた”写真を撮影することができる「RICOH THETA(リコー シータ)」を発売した。ドイツのデザイン賞「iFデザイン賞2016」受賞、欧州の「TIPA AWARDS2016」受賞、北米のデザイン賞「IDEA2016」ファイナリストにも選定されるなど、現在も世界中から注目を集めており、多くのユーザーがエキサイティングな写真や動画を楽しんでいる。RICOH THETAの商品企画を担当する高田将人さんと、総合デザインを担当する佐々木智彦さんに、ユーザー視点をとことんつき詰めた商品開発についてお話をうかがった。

「自分が感じたことを、そのまますぐ人に伝えること」を目指した、ワーキンググループ

2つの超広角魚眼レンズを使って撮影し、リアルタイムの画像処理で360°イメージを生成する「RICOH THETA」。これまでになかったおもしろい体験を生み出す、画期的な全天球カメラだ。商品開発のきっかけは、伸び悩むコンパクトカメラ市場の再燃を目的として集められた、社内のワーキンググループから発案されたアイデアだった。

高田将人(以下、高田)低迷するカメラ事業の売り上げを伸ばすために、2010年頃にふたつのワーキンググループが発足しました。ひとつは、既存のカメラの伸張を検討するグループ、もうひとつはまったく異なる発想で新しいカメラをつくろうとするグループでした。カメラにあまり馴染みのない人や、女性、若手の社員が中心に集まって、一般の人たちは「どういう写真を撮っているのか」「その写真を何に使っているのか」など、メンバーの一人ひとりがユーザーの立場に立ちながら、どんなカメラが求められているのかを考えていきました。

かつてのカメラといえば、一家に一台もしくは一人が一台持っていたものですが、開発をはじめた頃になるとスマホが普及していたので、カメラとスマホ、つまり一人が複数台を持つスタイルへとカメラの持ち方が変わってきていました。しかも、TwitterやFacebookなどのSNSの利用が定着しつつある頃。日常の何気ないシーンを撮影してすぐに人と共有するスタイルが確立されてきており、今後もその流れは続くだろうと予想しました。

高田将人(たかだ・まさと):新規事業開発本部 SV事業開発センター VR事業室 プランニンググループ/シニアスペシャリスト

高田将人(たかだ・まさと):新規事業開発本部 SV事業開発センター VR事業室 プランニンググループ/シニアスペシャリスト。1998年株式会社リコー入社。メカトロニクス技術者としてコピー/プリンター用のレンズ生産技術、超精密計測技術およびユーザインタフェース技術に関する研究開発に従事し、2010年からは全天球カメラTHETAのプロジェクトに参画。THETAのカメラ、アプリおよびWebの企画を担当している。

では、ユーザーはこれからのカメラに何を求めるのか―ワーキンググループのメンバーがたどり着いた答えは「自分が感じたことを、そのまますぐに人に伝える」ことだった。

高田:写真を撮影する場には、対象となるモノがあり、人がいて、何かを見ている表情が時には驚いていたり、大きなリアクションをしていたり。そういったリアルな雰囲気をありのままに撮影し、その感動を人とすぐに共有したいと思うのではと考えました。そして、それを可能にする最適なカメラをつき詰めたところ、「全部撮っちゃえばいいんじゃないか?」となったわけです。つまり左右上下360°を撮影できる全天球カメラであり、さらに、撮った画像をすぐにSNSで共有できる機能のあるカメラということだったのです。

「撮る」の常識をくつがえす、新しいコンパクトカメラの登場

THETA S(右)と、2016年10月にリリースされた最新モデルTHETA SC

THETA S(右)と、2016年10月にリリースされた最新モデルTHETA SC

発案からおよそ3年後の2013年10月。初号機となる白いボディカラーのRICOH THETAが発売され、その後もブルー、イエロー、ピンクのカラーバリエーションを続々と展開。さらに、従来モデルの最大5分の動画撮影を大幅に超える、最大25分間のムービーを高画質で記録するハイスペックタイプ、「RICOH THETA S」も登場した。

高田:RICOH THETAには、ふたつの超広角魚眼レンズが搭載されており、これによって360°の撮影を可能にしています。従来のカメラでは、撮りたいものを見つけてフレーミングして、ズームしたりぼけさせたりと、ユーザーには技術的なことが求められていましたが、RICOH THETAは1回シャッターボタンを押すだけで、誰でも簡単におもしろい画像や動画を撮影できます。

特徴的なのは、発売当時のカメラ市場にはなかった「スマホと連動する機能」。スマホにインストールしたアプリを使って、撮った画像を自由自在に動かして楽しんだり、スマホやPCを介したSNSでのスムーズなコミュニケーションを実現させた。

佐々木智彦(以下、佐々木):アプリは、初号機を出したときからアップデートを何度も繰り返しながら進化させていきました。リモート撮影や、マニュアル撮影ができるのはもちろんですが、RICOH THETA Sの発売時には、画像や動画を編集できるアプリも、2種類(静止画用の「THETA+」と動画用の「THETA+ Video」)を発表しました。作例を見ていただくと編集するのが難しそうに見えるかもしれませんが、アプリを使うことでかんたんに、ふつうの写真ではつくれないような画像に仕上げることができますよ。

佐々木智彦(ささき・ともひこ):知的財産本部 総合デザインセンター 新規事業デザイン室 インテグレーションデザイン2グループ/シニアスペシャリスト

佐々木智彦(ささき・ともひこ):知的財産本部 総合デザインセンター 新規事業デザイン室 インテグレーションデザイン2グループ/シニアスペシャリスト。2000年の入社以降、プリンターの外装デザインや先行デザイン、機器操作部やPCアプリのGUIデザインを担当。2016年より新規事業 デザイン部署に所属。THETAのデザイン開発では、ユーザーエクスペリエンスをトータルに捉える目的で、従来のデザイン機能分野ごとに開発していた体制から、総合的にデザイン開発をおこなう体制を組み、2013年よりデザインディレクターを担う。

画像編集アプリ「THETA+」を使えば、自分が小さな惑星にいるかのように撮れる「リトルプラネット」形式にもできる

画像編集アプリ「THETA+」を使えば、自分が小さな惑星にいるかのように撮れる「リトルプラネット」形式にもできる

佐々木:プロダクトデザインも、モデルを更新するたびに洗練化されているのが特徴です。基本形状は、どのモデルも同じアイコンを踏襲させることで象徴性を高めることを意識していますが、細かいパーツの部分では徐々にシンプルさを追求するように変化させてきました。たとえば、シャッターボタンの上にある電源ランプはLED内蔵にし、電源が入っていないときは何も見えない状態になります。初号機にはなかったつくりで、新しいモデルをつくるたびにどんどん洗練されるように引き算のデザインを心がけています。

インタビューは全3回連載です。次回の更新は、2016年11月14日を予定しております。

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