シャープが発信する新メディア「GALAPAGOS」 シャープ株式会社 社員インタビュー 1回目

シャープが発信する新メディア「GALAPAGOS」

シャープ株式会社 オンリーワン商品・デザイン本部

総合デザインセンター グローバルデザイン開発室 主席デザイナー 飯田勝博氏
UIデザインセンター 太田慎一郎氏

シャープが発信する新メディア「GALAPAGOS」


「GALAPAGOS」

 

「新世代のモバイル端末として新しい読書体験を創出する」という目的に向けて開発されたのは、10.8インチの液晶パネルを搭載した「ホームタイプ」と、5.5インチ液晶の「モバイルタイプ」の2種類。未知の領域を目指すプロジェクトなだけに、いかにメンバー全員がこの目的について同じイメージを共有し、ゴールに進んでいけるかが鍵だった。

ID(インダストリアル・デザイン、プロダクトデザイン)の指揮をとった飯田氏は、社内に2009年7月から発足したグローバルデザイン開発室に所属し、デザインの先行開発専任部隊を率いている。過去には、初代液晶ビューカム、初代ザウルス、プラズマクラスター空気清浄機、アクオス以前の初代液晶テレビなどのデザインを担当してきた。事業本部のデザイン部門とは一線を画し、重要度の高い新規プロジェクトの先行開発に携わった経験が豊富だ。

また、電子書籍を開発するためにつくられた緊急プロジェクトチーム“A1263”の一員である太田氏は、UI(ユーザーインターフェイス)を担当。全社横断の組織として初代カラー液晶搭載の携帯電話やアクオス携帯電話など、ハイエンド機器での画面デザインを手がけたほか、初代カラー電子辞書開発にも参画してきた。

「GALAPAGOS」は経営トップの命で始まった重要度と緊急性の高いプロジェクトだった。その状況下で、誰もまだ触れたことのない経験を作り上げなければならないデザイン開発。視覚化しなければ目標すら共有しにくい。そのためにIDとUIは同時期に着手された。 2010年1月のことである。

 

 


1st.スケッチの6案、左)飯田氏、右)太田氏

 

飯田氏 「まず5.5インチ端末の提案から始まりました。『単なる電子書籍であってはならない!新しいビジネスモデルと連動して進化展開できる端末を目指せ』という幹部の言葉が今でも記憶に強く残っています。まずその思いをデザインの立場で具現化するために、まずコンセプトからまとめていきました。コンテンツやサービスは、共通でユーザーに提供することができ、電子ブックからスマートグリッドやデジタルサイネージなど新たなカテゴリー展開を含めデザインを考える必要がありました。このコンセプトフェイズでは、デザインの展開性に加え、IDとUIの整合により実現する新たな体験としてのエクスプリエンスデザインのキーワードを両チーム間で共有を図ったフェイズでした」

太田氏 「企画に近いポジションでの開発が求められていると感じました。リーダーから最初に言われて印象的だったのが『僕らは新しい読書体験をつくる』という言葉です。単なるUIを飛び越えなければならないと感じた瞬間でもあります。電子書籍の未来について語り合い、プロジェクトメンバー全員がひとつの方向性を定め、そこに向かってインターフェイスデザインを組み立てていきました」

── そして、社内幹部からは「ユーザーがワクワクする商品」という命題も与えられていた。ともすると平凡に聞こえがちな表現だが、ユーザーが商品を購入するときのその気持ちは、プロジェクトメンバーが共感しなければ実現できない感性価値。IDとUI、コンテンツ、サービスのすべてが渾然一体とならなければ創出できない世界観が求められた。

飯田氏 「携帯電話やタブレット端末は、画面サイズが大型化(狭額化)することにより進化をしています。それとは対照的に、外観はデザインができる領域が減少し、差別化がとても難しくなっています。その中でいかに『ワクワクする』ポイントや他社との違いをデザインに”つかみ”として盛り込むかを熟考した6案をまず1st.スケッチとして提示しました」


左)2nd.スケッチ、『インフィニティ』、中)『クリスタル』、右)『製法革新』

 

── クリスタルカットをイメージしたクリスタル素材でフレームを作ろうというアイデア。アシンメトリな形状を個性にした案。インフィニティフレームという切り口で、メビウスの輪のようにねじれているフレーム。製法から革新していこうと、金属の押し出し成型の中に構造をいれこんでいったデザイン。裏側まで色がシームレスに回っていくシームレスグラデーション。そして、ツー・サーフェイスデザイン。他社にはない魅力が必ず一つはあることにこだわってアプローチした第一ステップだ。

飯田氏 「第一ステップでは、スケッチの初期段階から三次元を活用したイメージの展開を行いました。私たちは”つかみ”のあるデザインという言葉を良く使います。デザインの中に”つかみ”があることはとても重要で、それを見つけるための重要なプロセスがイメージ展開プロセスということになります。本当に”つかみ”のあるデザインは、シンプルな中に他に無い魅力が際立って見えるデザインで最終プロセスまで必ず残る。商品デザインとして採用される確率がとても高いデザインになります。今回のプロジェクトでも”つかみ”がある『インフィニティ』『クリスタル』『製法革新』の3案が、次の2nd.スケッチのプロセスに進みました」

── デザインモデル化に向けUIに関する議論も白熱した。特にトラックボールに関して、先進性を感じるインターフェイスの採用を求める声も上がったが、片手操作が可能という仕様要求に応えるために、ビジネスシーンを想定する5.5型には搭載が決まった。


左)飯田氏、右)太田氏

 

飯田氏 「デザインモデルは2nd.スケッチでセレクトした3案をモデル化しました。『インフィニティ』案は三次元的に抑揚のあるフレームの美しさが際立つデザインに、『クリスタル』案はクリスタルカットによる光のコントラストが美しいデザインに、『製法革新』案は金属のハイグロス質感と染色カラーの組み合わせでマテリアルカラーが際立つデザインへと、それぞれに美しさのポイントがあるデザインに仕上がりました。完成したモデルは、どれが採用されてもデザイン部門として問題ないレベルでしたが、最終的にはブランディングデザインとしての展開性、独自性、機構設計との整合性などの総合的な評価により『インフィニティ』案が商品デザインとして承認されました」
「デザインの設計移管プロセスでは、様々な困難に直面しました。最も調整に苦労したのが、承認されたデザインのジメージを崩さず、機構設計との整合を図り商品デザインへ落とし込むことでした。何十回とデザインと機構部品の干渉確認モデルを作成し、画面と反対側の底キャビネット形状を0.1mm単位で調整することを何度も繰り返し、揺さぶる感覚で機構部品を収めるための調整を行いました」

── 最終的に商品デザインとして承認された、抑揚のあるフレーム美がテーマの「インフィニティフレームデザイン」5.5型を幹部に報告した時点で、10.8型に関してはスケッチで確認を進めていたという。基本的には同じデザインで進めていこうということになり、すぐにモデル化が始まった。 また、色の考え方に関しては、フルカラー液晶であることと、特に雑誌系コンテンツの豊富さに注目し、上質であることも大切である一方、楽しさを感じられるカラー展開に重点をおいた。3色をデザインから提案し、流通や在庫の問題も考慮しながら、5.5型は2色、10.8型は1色の展開が決定していった。

モックアップ、左)『インフィニティ』、中)『クリスタル』、右)『製法革新』

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