フィルム時代から変わらずに進化を続けるカメラ 株式会社リコー 社員インタビュー 2回目

 

GR DIGITALに受け継いだデザイン

リコーの銘機、GRシリーズがフィルムからデジタルへ移行する過程で、最も象徴的に受け継がれているデザインのひとつがフォルムだ。

奥田:全体的に薄く、確実に握れるグリップを備えながらも、携帯性に優れた筐体は、GR DIGITALのアイデンティティーとなる部分です。さらに、その筐体がマグネシウム合金製であることも特徴で、堅牢感があり、持ったときの信頼感を高めています。

マグネシウムのダイキャスト製法なので、表面は塗装しなければなりません。マグネシウムの表面はひんやりする金属的な手触りではないので、塗装する とプラスチックに見えてしまうことが多いんです。それを避けるために、ガラスビーズを混ぜ込んだ塗料を使用し、わざとザラザラした表面に仕上げてありま す。たとえるなら南部鉄瓶のように、質感が高く、道具感を主張するイメージを大切にしました。こうしたクールさやハードな手触りを残すデザインは、フィル ムのGRから引き継いでいるものです。

一方、ディテールに関してはデジタル一眼レフのサブという狙いを明確にデザインでまとめあげている。

 

 

奥田:プロカメラマンの方にとってはやはり主役は一眼レフです。GRは携帯性の良 いサブカメラ。一緒に使われる一眼レフの多くは、中級モデル以上の機種で、曲面があり少し柔らかい印象のデザインが多く、フィルム時代のGRのように稜線 をバキっと立てて四角い形状を主張するスタイルは多くありませんでした。その整合性も狙い、GR DIGITALでは適度な曲面を使っています。

デジタル化のメリットを的確に取り入れる

継承するデザインを守りながら、積極的に革新性を取り入れた部分もある。

奥田:操作性に関する部分は意識的に変えてきています。特に、液晶モニタ画面の表示を活用することです。
フィルムカメラ時代は、カメラマンにとって重要なポイントである露出補正のボタンを、手の届きやすい位置に配置し、すぐに変更できるように工夫してありま した。デジタルカメラに同様のアナログ式ダイヤルの露出補正を付けるのは、最適な選択とは思えないんですね‥‥‥GR DIGITALでは、親指で上下する±のボタンですぐに設定できるようになっています。両手を使わなければできないような操作は避けて、モニタ画面を見な がら調整できるように。

さらに、ADJ.(アジャスト)というレバーとグリップ上のダイヤルにより、モニタ画面を見ながら片手でほとんどの設定ができる操作性をもたせています。つまり、操作性でいえば完全に新しい技術とデザインを活かしていることになりますね。

GR DIGITALは、フィルムカメラで確立した個性を尊重しつつ、デジタルのメリットを最大限に引き出すデザインによって成立している。

奥田:片手でさっと取り出して、片手で撮影できる。そして、さまざまな機能設定も片手で。そういったデジタルカメラならではの手軽さや操作性の恩恵は十分にデザインで具現化できていると思います。

GUIデザインの位置づけ

市場全体の技術革新やユーザーの選択肢の広がりを見極めながら重ねてきた改良には、GUI(=グラフィカルユーザーインターフェイス)に関するデザインも大きく関わっている。

奥田:モニタ画面の中での設定表示など、リコーでは全商品について「CUD(=カラーユニバーサルデザイン)」に基づ き、色弱者への配慮を心がけています。同時に、ハイエンドなカメラマンに向けては、一覧性、つまり何の設定がどこにあるのか、全部を一覧して確認できる点 を重視してきました。

最近のコンパクトデジタルカメラの多くは、設定の切り替え表示にエフェクトがかかっているために数秒、遅く なってしまいます。そういった情緒的なデザインはデザイナーとしては作り込んでみたいところでもありますが、あえてGR DIGITALでは切り替えるスピード性を重視。色数も極力減らして、見やすさを心がけています。

もし今後、市場全体に影響を及ぼすほどのドラスティックな技術革新が起きたり、新しいアイデアを取り入れる企画が持ち上がったりした場合には当然、 GR DIGITALも大きく変化する可能性があるでしょう。そうでなければ、「撮影する道具」としての基本形はこのままに機能や操作性向上のための必然性のあ る改良に注力すると思います。これは保守的な姿勢ともいえますが、GR DIGITALらしさを表現する、デザイナーとしての責任だとも考えています。

 

 

 

様々なコンセプトのコンパクトデジタルカメラがある中で、特別なブランドイメージをキープし続けているGRシリーズ。それは、時代の進化と共に歩みながら、開発者たちが細部に宿らせた、こだわりの集大成によるものなのだ。

(次回は、2012年9月26日更新予定です)

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