世界に目を向けて新定番を作る 株式会社良品計画 矢野直子インタビュー 3回目

世界に目を向けて新定番をつくる (3)

ものを輝かせる“編集力”

暮らしの中から探し、見つけ出したものを、現代の生活に合うように調整し新たな定番を目指して無印良品の店舗で販売するのがFound MUJI本来のミッションだ。人が暮らす場所なら、世界中どこでもが“ファウンド”のターゲットになる。

Found MUJI 青山

Found MUJI 青山

矢野:どの地域へ何を見に行くのか、3年先まで決めてあります。もちろん計画なので変更はありますが、ある程度は予測しておかないと追いきれません。商品の販売計画もあるので、プロモーションまで計画し、誰がどの時期までに、どこで、どう動くのかを把握しておきます。私自身の感覚としては、全く新しいものはもうそんなに簡単に生まれないんじゃないかと思っています。けれども、そのもの自体をどう光らせるか、隣に何をコーディネートするか、どう組み合わせるか‥‥‥。そうした編集力によって商品の魅力は左右されるはずです。

昨年、中国で開催した「Found MUJI CHINA」のエキシビションでは、25メートルほどの低いテーブルに、現地の人が見ると「これ、こんなところに置いてあるけど展示するようなものなの!?」と驚かれそうなくらい、平凡で、どこにでもある日用品を並べた。

矢野:実家で古くから使っていそうな風呂桶とか、キャラクターがついているプラスチックのコップとか。でもそういうものに目を向けて、思わずハッとさせるのがFound MUJIです。2万人という来場者には若い人も多く、本当に熱心にメモしながら見てくれたのが印象的でした。会期終了後には、深澤直人さんのデザインによって、中国の伝統的な椅子が無印良品からリファインされて発売できたのは、大きな成果です。

矢野直子氏

矢野直子氏

2003年にFound MUJIを開始するにあたって、元祖“ファウンド”担当を務めた矢野氏。無印良品の立ち上げメンバーで現在はアドバイザリーボードを務める小池一子氏と共に、イギリス・ウェールズ地方やインド、スペイン・バスク地方などに布を訪ねて回ったこともある。

矢野:いまは『いってらっしゃい!』と送り出す立場ですね。Found MUJIは、嬉しいくらいにいろいろな方が助けてくださいます。話題にしやすいからかもしれませんが、『こんなものがある』とか『今度、これを見に行く』という話がよく伝わってきて、そこから実際にエキシビションへ発展したこともあります。もちろん、私たちが抱えているテーマにリンクさせて地域を選ぶ場合もありますし、インドや日本の布文化は継続して追っていくことにしています。それに、地域だけでなく、例えば『業務用』という切り口を設定してみると、国で分ける必要がなくなるのもおもしろいですね。『整理するための業務用』を世界中から“ファウンド”してみると、国ごとの暮らしや食文化などが浮かび上がります。

国や地域で縛らず用途や素材までテーマにできるのが、“ファウンド”の魅力であり、特徴だ。さらに、“ファウンド”するのは企画デザイン室のデザイナーだけに限定しなくても構わないようだ。

矢野直子氏

矢野:これまで国内では2度、無印良品の店舗のスタッフが“ファウンド”したものを展示する『My Found MUJI』も行なってきました。『Found MUJI SHINSHU』を松本パルコで開いたように、今後はいろいろな地域での土着化も目指したいですね。中国のスタッフが積極的に“ファウンド”する日も近いのではないでしょうか。Found MUJIは一過性のイベントではなく、ひとつの活動であり、見つけ出す行動を経て次の日用品を作ることを目標に継続してきました。これからも、ひとつでも多く定番を増やしたいですし、何より、各地域からの発信がさらに広がっていくことを考えていくつもりです。

遠い場所での暮らしに想像力をはたらかせながら、同じ生活様式を少し取り入れてみる。そんな豊かな生活の交流をFound MUJIは現実のものとしてくれているようだ。


取材協力:
株式会社良品計画
http://www.muji.com/


インタビュー:高橋美礼 撮影:永友啓美

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