世界に目を向けて新定番を作る 株式会社良品計画 矢野直子インタビュー 2回目

世界に目を向けて新定番をつくる(2)

俯瞰と発信の両立

矢野直子氏

矢野直子氏

無印良品が設立された1980年といえば、日本は各種ブランドにあふれ、大量消費が美徳とさえされた時代。無印良品の理念は、そういった状況に対する鋭いアンチテーゼも含んでいた。世界の暮らしに生きる道具を見続けている矢野氏は、今の中国で似たような時代の移り変わりを感じるという。それは、2014年に中国で開催した企画展での実体験によるものだ。中国の成都で開催したエキシビション「FOUND MUJI CHINA」では、10日間で2万人の来客数を記録。非常に手応えのある企画展だったと振り返る。

矢野:私たちが想像するよりもっと、無印良品そのものを身近に感じてくださるお客様がいる事実を肌で感じました。緊張感もあり、背筋がピンとする思いです。昨年12月の段階で、中国の無印良品は130店舗になりました。旗艦店にはFound MUJIも併設しています。各国や各地域のローカリズムを尊重すべきだと考えていますので、ローカリズムの視点から探し出した暮らしのリアルを広く紹介していく意義もFound MUJIにはあると感じています。人々を俯瞰して捉えることと、世界中の小さなエリアから外へ発信していくということ。それが今後さらに大切になってくるんじゃないかと思いますね。

世界で“ファウンド”する

Found MUJIとして、生活のあらゆるシーンから日用品を見つけ出す行動を、“ファウンド”と呼んでいる。

矢野:“ファウンド”には、実際にその場へ足を運ぶわけですが、どこで何を見るかあらかじめ目星をつけていきます。数人のチームが現地に1週間以上滞在するのですが、印刷物用の撮影までするので、ある程度の計画性が必要になりますね。現地の知識人にも協力してもらうこともありますし、パリのセレクトショップ『メルシー』と一緒に進めるようなケースもありました。

Found MUJI 青山

Found MUJI 青山

Found MUJIで見つけ出すのは、アートや飾るものではなく、必ず日用品でなければならない。“ファウンド”するためには、国境も文化も超えるのは当然。肌の色は違っても人の暮らしにはさまざまな共通点と、興味深い差異があるのだと言う。

矢野:たとえば、中国の街角でひとりのおじさんが木のベンチに長い時間座っていたとすると、その木のベンチはおそらくきっととても心地よいものに違いありません。それを“ファウンド”して、新しくベンチを作ってみること。
たとえば、インドのスパイスが効いた料理は匂いが容器に移りやすいため、ステンレス素材を使っていますよね。最近では良く知られるようになりましたが、インドの丸いステンレスの密閉容器は実際にすくいやすくて、清潔にできます。それを原点に、新しい容器を考えてみること。
こうした取り組みこそFound MUJIの本質。日本の生活に固執せず、世界の様々な人が暮らす生活の日用品から多くを学べると思っています。無印良品は小売りだけでもなくメーカーだけでもない製造小売業です。作って、それを売り切ることを常にやっていかなければなりませんが、それは良い環境でもありますよね。自分で“おとしまえ”をつけられるというか(笑)‥‥‥

そして、どんなに良い商品が完成しても、価格が見合っていなければ顧客には届かない。商品化の際の価格管理はもとより、世界中どこでもできるだけ同価格帯で提供できる製造管理、部材選びにまで、商品部のMDとともに徹底していく緻密さも、企画デザイン室には求められている。

※次回は、2月18日に更新予定です。


取材協力:
株式会社良品計画
http://www.muji.com/


インタビュー:高橋美礼 撮影:永友啓美

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